第19話 若返り

 俺が育成されている育成カプセルが喋らなくて良い物を喋ったからややこしい事になっている。

 本当なら喋らずに化け桃だとでも思わせて捨てに行かせれば良かったのだ。

 それを何をとち狂ったのか喋ってしまった。

 AIがポンコツなんだな、多分。

 メインやサブチップが悪いって言ってるんじゃ無いぞ。

 生来か育ちが悪かったのかAIがポンコツになってしまったと言っているんだ。

 ハード面では無くソフト面の話ね。

 これ、極限状態で正常な判断を下せるようにって注文付けたのに下せるのかね?

 ……無理な感じがするんだけど?

 そんな俺を置いて話は進む。


「「天から来たですか?」」

「そうだ。重大な使命を帯びてきたのだ」

「重大な使命というのはなんでしょうか?」

「あなた、効くのは失礼に当たるかも知れないわ」

「いや、別に失礼では無いので良いぞ。使命というのは天界の騒乱から逃れてきた現神人様である赤子がおる。儂の持ち主でもある。それを育てるのが使命じゃ」

「「赤子ですか?」」

「そうじゃ! このお方じゃ」


 そう育成カプセルが言うと、育成カプセルが大きくなり人の背丈を超える大きさになった。

 何故大きくなる?

 そうして桃の頭頂部からパカンと割れて赤ちゃん=俺が入ったカプセルが現れる。

 中の赤ちゃん=俺は1歳半ぐらいの年に見えた。

 うろたえる俺。

 何故、姿を見せる必要があるのか皆目分からない!

 そんな俺を置いておいて育成カプセルは話を進める。

 

「この方が現神人じゃ。特別に見せてやろうぞ」

「はぁ~! このお方が現神人様ですか。かわいい赤子にしか見えませんな」

「そうですね、あなた。我々もいつか赤子をと思っていましたが運が無く赤子が授かりませんで……。この様な赤子が欲しかったです」

「そこでじゃ、現神人様をお育てするのに義父役と義母役が要る。それを2人に任せられないかと思ってな」

「「…………」」


 2人は互いの目を見て目で相談し合ったようだった。

「残念ですが、その大役を引き受けるのには私共は少々年を取り過ぎました」

「旦那様の言うとおりです。私共の年が若ければ話は別でしたが……こうも年を取ると大役を果たせそうにありません」

「ふむ。肉体が若かったらこの話を引き受けて貰えたと思っても良いかの?」

「それは、妻が了承すれば私は良いです」

「私も旦那様が良ければ良いです」

「それは了承したと見て良いのかの?」

「「そうですね」」

 それでは、私が若くする為の薬を作って進ぜよう。若ければ子をなす機会もあるじゃろうし。それでどうかな?」

「「わかりました」」

「それでは薬を作るのに各自の検査――色々と体等を調べる事じゃ、を受けてもらう」

「それではわしからお願いします」


 そう言ってお爺さんが前に出てきた。

 俺はあまりの展開に頭が追いついていない。

 結局、どう言う事?

 俺、一応成人してるよ?

 義父や義母なんて要らないって!

 そう育成カプセルに通信で伝える。

 無視する育成カプセル。……ふざけるなよ!

 俺を置いておいて話は進んでいく。


「はい。2人共に検査は終了した。これから各人の合わせて薬を作るので待っておれ。それと、現神人様は赤子の姿をしているが元は成人の大人じゃ。傷を負い赤子からやり直しておる所じゃからそれなりの扱いをせよ。よいな!」

「「ははぁー!」」

 

 育成カプセルから連絡が来た。

 ”成人だって事を言っておいたのでこれで勘弁して下さい”だと。

 ”ふざけるな!メーカーにクレーム入れとくぞ!”と返したら”すみません!それだけはご勘弁下さい。もう勝手な判断は緊急時以外はしませんので!”と帰って来た。

 ”しょうが無い。今回だけだぞ。次は宇宙ネットでソフトを入れ替えて貰うからな!”と通信を送っておいた。

 

 育成カプセルはナノマシンで若返りの薬をそれぞれ作成した。

 そしてお爺さんとお婆さんに薬を飲ます前に言っておいた。


「この青い瓶がお爺さんが若返る薬で赤い瓶がお婆さんが若返る薬じゃ。それぞれ飲めば一晩中高熱を発し寝込んでしまうが、一晩経てばある程度若返っていよう。大いに食って二晩経てば若返るがそこで仕舞いじゃ。

 二晩目に入る前に大いに食っておかんと最悪死に至るでな。くれぐれも注意されたし! この薬を渡す前に言っておくが現神人様に身も心もお仕えする事が出来なければ薬を渡すわけには行かぬ。その点はどうじゃ?」

「……若返っても心はもう年ですがそれで良ければ身も心も捧げまする」

「夫と同様に御座います」

「よし! しからば若返るのに体力を使うでなこれから大いに食べて滋養を付けよ!」

「「ははぁー!」」



 こうしてお爺さんとお婆さんは腹一杯ご飯を食べてから、色が間違っていないか確かめた。

 間違ってなかったので若返りの薬を飲んでみた。

 大桃の言う通り、体が熱くなり眠気が襲って来た。

 寝床の床に横たわると直ぐに眠気が襲って来た。

 眠気に逆らわずに寝ると、直ぐに翌朝になっていた。


 腹がとても空いていた。

 昨日の残りの飯を妻の分を残して食べる。

 これだけでは足らぬが少しはマシになった。

 妻が起きて来て此方を見ると、若返っていると言う。

 そう言う妻も若返っている。

 お互いにそう言うと水瓶に顔を映して確かめたら確かに若返っていた。



―――――――――――――――――――――――――――――

少々若返った事で色々と用意する物が出来たよ!

次回の内容は粒金一粒です。

 

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