ゴブリンの嫁


 ある高名な戦士の妻がゴブリンに攫われた。

 戦士はゴブリンの巣を急襲し、あっという間に最下層に到達する。

 薄暗い篝火の中、何匹ものゴブリンが妻を中心に輪を作っていた。


 妻の顔はとろけ切っていた。


 「アナタ…ごめんなさい。私、ゴブリンのお嫁さんにされちゃった…」


 妻はだらしなく涎を垂れ流している。

 そんな妻の顔を見て、戦士はため息を吐き、


 「もういいの?」

 「あ、うん。もういいよ。満足したから」


 戦士は残ったゴブリンを根切りにした。


 妻は人間とサキュバスのハーフで、時折こうした『プレイ』をしている。


 「次はオークにしようかしら? それとも、久しぶりにスライムいっちゃおうかなぉ」

 「へいへい…」

 プレイのし過ぎで腰が抜けている妻を背負いながら、戦士は呆れ顔で相槌を打った。

 

 彼はその後、戦士として後世に名を残すほどの名声を手に入れたが、


 女の趣味だけは悪かった。


 歴史書には、そう書かれている。

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