第7話 R子

私の昔のクラスメイトだった、ある女の子の話。

仮にその子をR子としよう。

R子は頭が良くて活発で、正義感が強く、物怖じしない子だった。R子と私は小学校6年生に上がるまで、ずっと同じ地区に住んでいて、彼女は私ともよく遊んでくれた。

しかし、R子はある一時から殆ど学校に来なくなった。というよりも、来ることができなくなった。


彼女は5年生の冬におかしくなった。


ここからは、R子と一番仲が良かった当時のクラスメイト3人から聞いた話をまとめたものになる。


当時、私達の通う小学校では高学年を中心にオカルトブームがあり、クラス内でも活発な子やそういうものに興味がある子たち、流行りに乗っかりたがる子たちが中心となって、コックリさんなどのいわゆる降霊術の遊びをしていた。

R子ももちろんやっていて、オカルトをあまり信じない彼女は面白半分、幽霊なんていないと証明しようという意気込み半分でその手の遊びをやっていたらしい。

私達の学校で行われていたのはコックリさんの派生でミカチャンというやつだった。紙にYESとNO、五十音を描いて手のひらに収まる大きさの石を置き、コックリさんと同じ手順でミカチャンを呼び出す。この時に必要なのが、ひとつかみの米と塩、そして水。ミカチャンをやるときは、水の入ったコップやアルミの小皿など、とにかくなんでも良いから水の入った小さい容器を紙の四隅に置き、終わったら、米を参加した人数より一人分多く分け、一人ひとり塩と一緒に米を水で口に含んで捨てる。使った紙に残った1人分の米と塩をつつんで、川にながす。

そして、ミカチャンをやる時には絶対に、呼び出したものには帰ってもらわなくてはいけない、椅子から立ち上がってはいけない、終わったあとの紙を破いてはいけないというルールが存在した。

ある冬の放課後、R子は同じクラスメイトのM子に呼び出され、R子達のグループ四人とM子達のグループ3人の合計7人で、ミカチャンをやることになったという。

M子とR子はあまり仲良くなく、M子がR子を一方的に敵視しているような状況だったらしい。M子はオカルト好きであり、幽霊やおばけについて、R子と「実際にいる、いない」という論争で喧嘩にもなっていた。

放課後集まった7人は、ミカチャンをやり始めた。最初は順調にすすんでいたらしい。しかし最後になってミカチャンに「おかえりください」と言った時

ミカチャンは帰ってくれなくなった。

何度おかえりくださいと伝えても、YESに石が行かずぐるぐると変な方向に動き続けるだけになったというのだ。

当然、彼女達はパニックになった。しかしR子だけは、怒ったような表情でM子を睨みつけていた。

突然R子が立ち上がった。

なによ!こんな遊び!ウソのくせに!!

R子はそう言って、呪いの紙をめちゃくちゃに破り、テーブルの上の米や水、塩を床の上にぶちまけた。

ほらね、何もないじゃない

R子はそう言って笑った。

しかし急に彼女の体がガクガクと揺れはじめ、泡を吹いて後ろに倒れた。

それからM子、R子たちを含めて7人全身が過呼吸のような症状を訴えて次々と倒れ、放課後、まだ数人のこっていたクラスメイトや先生達は騒然となった。

R子は獣のような声を上げながら痙攣を起こし、救急車で運ばれていった。しかし、救急車の隊員がR子を連れて行く時に、R子は随分と暴れたらしい。

この事は学校では緘口令が敷かれ、話すことはタブーになった。そして、降霊術の類の遊びも禁止になった。

R子はそれから殆ど学校に来なくなった。 風の噂によると彼女はうわ言を繰り返したり、しきりに手足をばたつかせ部屋中を飛び跳ね転げ回るといった奇妙な行動が続くようになり、学校に来ることができなくなったということだった。

それから聞いた話であるが、どうやら、オカルト好きなM子たちがR子に渡して使った石は、学校の裏手にあるお寺の墓地の石を勝手に持ち出したものだったらしい。

その影響で、本当に良くないものがミカチャンとして引き寄せられてきたのではないだろうか。

そして、R子はこの遊びをきちんと終わらせなかった。

だから帰らなった何かが、R子に取り憑き、このような忌まわしい出来事を引き起こしたのか。

R子は現在も精神病院にいるそうだ。M子とその家族はこの事件のあと、地元に居づらくなったのかすぐに引っ越してしまってもういない。

真相は今も、わからないままだ。

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