第5話 高架下
私の母が高校生だった時の話。
夜中、家に帰ろうと高架下を歩いていると、すいませんと声をかけられた。
薄暗いなかあたりを見渡すと、高架下の壁際に、紫の留袖を着た上品そうな初老の女性が立っている。
何でしょうかと母が返事をすると
これ、もらってくださらない?と一輪の桃の花を手渡された。
季節外れだが、甘い香りのする、やわらかな花びらが八重に開いてとても美しい桃の切り枝だった。
ありがとうございますと改めてお礼を言おうとすると、そこには誰もいなかった。
ただ、手の中にはらはらと花びらの散ってゆく、桃の花だけが残っていた。
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