第2話 アパート

友人が住んでいる古びたアパート。

何でもそこに「出る」らしく、度々勝手に電気が消えたり、友人が居ない時に「走り回る音がする」と苦情が来たりするという。

友人に気にしていないのか聞いたところ、苦情の件に関しては困るが自分には一切何も見えていないので大して気にならないとの事。

そんな友人に2022年に入って、一度電話をかけたことがある。

ちょうど冬の真っ只中で、外はそろそろ雪でも降るのではないかというくらい寒い日だった。

電話をかけた理由なんて、些細なものであまり覚えてはいないが、大方、飲みにでも誘おうと考えたのだろう。とにかく彼の家、彼の持つケータイに電話をかけた。

数回コールしてようやく電話を取ったので「もしもし?私だよ、久しぶり」そう言おうと口を開いたら

なんとも言えない、男とも女ともつかない甲高い声で「ろろろろろろろろろろろろろ…」と言われ電話が切れた。

慌ててかけ直しても、誰も出ることは無くそれ以降

不在を伝える電子音がなるだけだった。

あれ以来、彼の電話には掛けても繋がらない。

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