第26話 ここって死者の国じゃ無かったっけ?

北川尋と錦野諭は共に家族が増えてますます多忙を極めた


死者の国で初めて産まれた命に皆興味津々で話題に持ちきりになっていた


「まさか異世界から来た彼等の影響でこんな事になるなんて…」


流石の神様も困惑気味である


尋の息子は昴(すばる)と名付けられた


そして諭の娘は聖(ひじり)と名付けられたのだった


昴と聖は兄妹のようにすくすくと育っていった



その様子をニルヴァーナは笑顔で見守っていた

その傍にはリンスロットが寄り添っている


「この世界で間近で子供を見られるとは…死者の国で育まれた命か…」



「前例のない事だけに皆戸惑いを隠せないようだな…あり得ない事が起こっただけに対応に困るようだ」



リンスロットは冷静に分析して神様に助言をするのだった


「儂らは見守るだけの方が良いな…尋と諭もそれを望んでるようだし…あまりでしゃばった真似は出来ぬ」



神様はハッとして頭を掻きながら照れ笑いした


「流石リンスロット殿ですね…彼らが困ってる時に手助けしても良いのですか?」



リンスロットは不敵な笑みを浮かべて

「当たり前じゃろ」

と一蹴するのだった



昴と聖は自然と恋仲になっていった



昴には妹が産まれてユキと名付けられた



ユキもまた別の意味で異彩を放っていた


人の心が見えるらしく自分を嫌ってる人物には近づこうとしなかった



聖にもリョウという弟が産まれた


リョウは手を使わずに物を動かせるサイコキネスの力を生まれながらに持っていた



それぞれの力を使ってユキは占い師のような事をし、リョウは普通では動かすのが困難な場所の物を動かして運んだりするようになっていった



昴は母の仕事の手伝いをしたりしていた


聖は極楽亭の看板娘になっていた



そしていつしかこの死者の国でも彼等を特別扱いする者は居なくなった


ユキの占いというか人の心を読んでアドバイスをする行為は人々の心を掴んで連日大盛況であった


リョウの力を借りて点在する死者のそれぞれの国の道を整備したり、壊された瓦礫を退かしたり他の種族の神様も力を借りに来るようになっていた



「死者の国も変わったね〜現実と区別がつかなくなって死んだ事を忘れてしまいそうだね」


誰かがそう言った


そう…ここはあくまで死者の国なのだ


悪人は地獄のような場所で罰を受けたり、良い行いをした者や志半ばで死んだ者は生まれ変わりを待つ場所


その間は何かしらの仕事を与えられて生まれ変わる日を待つのだ


その礎は変わる事なく命は巡っていく


今はどの場所なのか…


どちらの世界にいるのか判別出来るのは、死者の国ではほぼ姿が変わらず過ごすという点だけである


例外が昴と聖、ユキとリョウなのだ



彼等が今後どうなっていくのか…



それは神さえも知らぬ事になっていく


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