貴族学園を追放された落ちこぼれは覚醒し、革命を起こす―因果律無効の魔眼でダメージを無効化―

ねいん

反撃の狼煙編

第一話 退学処分を食らう

 僕の名はファル、今の姓はアルスターだ。


 年齢は一八歳。瞳の色は茶色、髪色はアッシュブラウンで前髪を眉毛の位置まで下ろしている。身長は同世代の標準ぐらいだと思う。


 そんな僕はトレイシア魔法王国の王都にあるトレイシア貴族学園に通っている。


 昼休み――学園長の部屋に呼ばれた僕は、現学園長から冷たい言葉を投げかけられる。


「お前は本校に相応ふさわしくない、退学処分だ」


「なっ……!」


 絶句。


 目の前が暗くなって三角帽子を被っているラクエル・ランブル学園長が揺れ動いているように見えた。


「……その判断は僕に魔力が無いせいでしょうか」


 魔法史上主義のこの国では魔力が無い人間は人間と見なされない。きっと、王国の息がかかった周辺諸国も同じ価値観に違いない。


 建国してから一〇〇〇年余り建つこの国では基本的に魔力が無い人間は生まれないが、一〇〇年ぶりに魔力量ゼロの人間が生まれた。それが僕だ。


「よく分かっているじゃないか、魔力がないお前は元よりいらない存在。前校長はお前には甘かったが私は無能に教育を受けさせようとは思わん」


「っ!」


 息が詰まりそうになる。この国の人間はいつもそうだ。魔力が無い僕を見下す。


 こんな僕でもこの貴族学園にいられたのは王家の傍系であるアルスター家の養子だからだ。身寄りが無い僕をアルスター家が引き取ったのは僕が没落した名家の人間だったからだ。もっとも、一〇歳のときに魔力量を鑑定してもらった結果、魔力が無いことが判明し、アルスター家の人間は僕に冷ややかな目を向けて、使われてない物置小屋に押し込んできた。


 今まで生きてこれたのは僕に親身に接してくれる僅かな人達のおかげだ。


「アルスター家の人間を退学させたら王家が黙っていないのでは?」


 情けないことに僕は家の力を借りて、反論した。これしか言えることがない。この学園には僕に接してくれる僅かな人達がいるんだ。退学なんて嫌だ。それに前校長には目をかけてもらってこの学園にいさせてもらったんだ。こんなところで退学するわけにはいかない。


「この退学は国王と教皇が賛成している。いやむしろ国王と教皇が言い出したことだ。ファル・アルスターは国の汚物でもあり、学園で受け入れることができないとな。お前が知らないだけで前校長も言われてたのだろうな、くっくっく」


 不気味な笑みを浮かべるラクエル学園長


「そんな……」


 何も言えなくなる。


 トレイシア魔法王国の王――レーヴォック・トレイシア。


 そして、この国の一大宗教であり国教でもある魔道教の教皇――バラクエル・レストナーク。


 この二人が僕を退学したがってるだって!?


 それじゃあ……もうどうしようもないじゃないか。


「明日の朝には寮にある荷物をまとめて出て行け! 分かったな!」


 僕は肩を落として視線を宙に漂わせながら学園長の部屋を出た。


 廊下を歩いていると、生徒達のひそひそ話が聞こえる。


「あいつに近寄るなよ無能が移るぞ」


「なんでまだこの学校にいるのかしら」


「早く死なねぇかな」


 聞き慣れた罵詈雑言。


 他人にどう言われようが自分が進みたい道を歩み続けろと前校長に言われたことがある。


 だから気にしない。正確には気にしないようにしているんだけど。


 貴族学園の校舎は昔の王城でもあるので、入り組んだ構造をしている。その構造のおかげで人目を気にせず、お昼ご飯を食べることができる場所があった。


 校舎の隙間を縫うように中庭がいくつもある。その中庭の中でも、わざわざ地下二階に行ってから到達できる場所がある。そこが僕の隠れ場所だ。


 校舎内にある購買部で揚げパンが入っている袋を買った僕は隠れ場所へと移動する。


「待ってましたわ。ファル様」


 中庭に着くと、おしとやかな雰囲気を纏わせる少女がいた。この隠れ場所は僕以外にも二人の少女が知っている。その中の一人が中庭のベンチで座っていた。

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