第43話

 ──新宿ダンジョン変異神域前


 あたりはモンスターの咆哮や魔力の余波が飛び交う普段からは程遠く。不気味なほど静まり返っていた。


 振り返るとステンノもエリーも覚悟はできているといった風に頷いた。


 この戦いでステンノの願いは叶う。いや何としてでも叶える。

 この世界に戻ってきて最初の大型クエストをクリアしに行こうか。


「行こう。神話を終わらせよう」


 そして俺たちは神域に足を踏み入れた。


 ☆


「待ってたよ。手掛かり、もとい封印の贄は持ってきたのかい?」

「当たり前だろ。こっちも封印を解放させるために来たんだから」


 封印の贄か。やはり今まで集めていた手掛かりはステンノの妹の封印を解くカギだったんだな。


「俺たちが二つ、あんたが二つ。どうする? 奪い合うか?」


 あちらには蛇の彫像と鎖鎌、こちらには神妹の遺骨とあいつが言うにはもう一つ手掛かりを持っている。


 ネメシスが持っている二つの手掛かりは地面に描かれた魔方陣の中心に無造作に置かれていた。


「奪い合う必要はないさ。ここにそろっていればいい」

「そうか。それとそろそろ最後の手掛かりについて教えてもらおうか」


 そう言った途端、ネメシスは目を丸くした後、こらえきれなくなったかのように噴き出した。


「アハハハハ!! 気づいてなかったのかい!? 異世界帰りの勇者も神もいるのに!? いい。実に愚かしい。その愚かさに免じて教えてあげようか」


 ネメシスが右手を上げると魔方陣が紫色に輝き始める。

 それに伴って4つの手掛かりも紫色の魔力を帯び魔方陣の中心に浮かび上がる。


「ちょっと!? 助けて!!!」

「エリー!?」


 浮かび上がった手掛かりは蛇の彫刻、鎖鎌、がしゃどくろの頭蓋骨、そしてエリー。


「最後の手掛かりは彼女だよ。そうだろエリー、いやエウリュアレ?」


『エウリュアレ』


 その名を聞いた途端、エリーが頭を抱えて呻き始めた。


「エウリュアレって私のもう一人の妹よ!? 外見も魔力も全部違う!」

「もちろんきっちり100%本人ではないよ。この娘、創造られたんだから」


 そう笑いながら剣先のように尖らせた指先をエリーもといエウリュアレの胸に突き刺した。


「エリー!!」


 背中まで貫通したネメシスの手に握られていたのは血だらけの肉塊。

 その肉塊はがっちりと鷲掴みにするネメシスの手を押しのけるように鼓動していた。


 心臓である。


 身体の中枢を引き抜かれ人形のようになったエリーを無造作に捨て、心臓を魔方陣へと投げ込んだ。


「お前!!」


 後ろを向いた瞬間、俺はデュランダルを構え肉薄したが、ネメシスはひらりと振り向きながら後退する。


「返せ!!」

「これこそお前たちに言っていた最後の手掛かりだぞ? 妹を解放させたくないのか?」

「だとしてもエリーが殺されるのを見過ごす理由にはならないだろ!!」


 俺の斬撃を片手で受け止め、ネメシスは冷たく笑う。


「安心しろ。機能が停止しているだけだ。そもそもエウリュアレの心臓ではないしな」

「何……?」


 ネメシスに弾かれ、ステンノの真横まで後退し、再び剣を構える。


「この心臓はな奴の妹のモノさ。そしてエウリュアレはこの呪われた臓器を隠すために作り出された神造神なのだよ。いわば『保存容器』ってところかな」


 今やもう動くことはなく舞台裏のマネキンのようにエリーはぐったりとうなだれてしまっている。


「だとしても……他にやりようはあっただろ!」

「私は手っ取り早く妹を解放させてさしあげたいんだがお前は違うのかい? お前は何に対して怒っている? 妹は解放されエウリュアレも死んではいない。」


 ネメシスは深紅の鎧を纏うと魔方陣の上空に浮上する。


「では始めようか。復活の儀を!」


 ネメシスが掲げた右手に紫の魔力が宿る。

 魔力にあてられたかのように手掛かりは浮いている彼女のさらに上空へ集まっていった。


「さあ、久しぶりの目覚めだよ。いでよ! 『メデューサ』!!!」


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