第3話 手ぬぐいの小鳥(3、文鳥)


ぴぴぴ。

佐和商店での仕事中。

すみれさかきは、店内で鳥の鳴き声を聞いた。顔を見合わせ店内を探すが、それらしき鳥はいない。

「鳥の声だよな?」

「ええ。そうだと思いますが」

二人で首を傾げていると、白く小さな何かが急に菫の肩に止まった。

「えっ!?」

固まる菫の肩へ目をやった榊は、驚いた表情になる。

「文鳥か?」

改めて見れば、白く愛らしい姿の文鳥だった。半透明の。我関せず、という顔でリラックスしているようにも見える。

「……鳥の幽霊って珍しいですね」

「何?ここ鳥もいんの?」

二人で呆然としていると、明るい声が降って来た。

「あっ、小雪ちゃんいた!」

ふわりと、すずが降りて来た。店に居着く少女の怪異。

「小雪ちゃん?」

すずの登場にはさして驚かず、菫と榊は彼女を見る。

「うん!私の手ぬぐいのこ!」

すずは得意げに、手に持つ手ぬぐいを広げた。古いが小綺麗な手ぬぐいの中には、笹の葉と一つの鳥籠が描かれている。

「窮屈なんだって。だからたまに遊びに行っちゃうの」

菫と榊は複雑な顔で、手ぬぐいと文鳥を見比べる。小雪は、すずの手に舞い戻った。ぴぴ、と小さく鳴く。

「お花のお姉ちゃんの肩、気持ち良かったって!良かったね」

「……ありがとう」

すずと小雪に目線を合わせて言う菫の肩を、榊はそっと叩いた。

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