/// 5.冒険者稼業始めます!

宿からギルドへの道を歩く。

まだ納得していないサフィさんを宥(なだ)めながら足を進めていた。


「お金を稼ぐ必要があるなら鱗を売ればいい!俺はタケルとの冒険が楽しそうだから、早くそっちに集中したい!」

「だからその冒険をしながらお金を稼ぐというのがいいと思うんだ」

「どうせランクが低いから薬草採取とかそんなのからチマチマやってかないとダメなんだろ!俺はそんな面倒ごとはごめんだ!」

「それが醍醐味なんだけどな・・・というかなんでそんな事知ってるんですか・・・」


サフィさんの言葉に頭を抱える僕。


「実力にあった依頼であればランクは関係ありませんよ?」

「へーそうなんですね」「そうなのか!」


不意にかけられた言葉に二人してその声の主を見る。

視線を送ると丁寧にお辞儀をしてからこちらを見ているギルド長のカルドニーさんである。


「当ギルドでは、ランクにかかわらず、好きな依頼を受けても良いことになってます。私が今そう決めましたので・・・」

「あ、あーそうなんですね・・・」

「おー!やったな!これで強敵ぶっコロな依頼受けられるぞ!」


どうやらこのギルド長は鱗を持ってきた僕たちを圧倒的な強者であると勘違いしているようだ。いや勘違いではないのだけどね。

そしてサフィさんはどうしてこんな血気盛んなんだろうか・・・あー竜でしたね。


「あんた話しわかる奴だな!ここらで一番の強敵なんだ?俺たちがヤッてきてやるよ!」

「ハハハハ・・・」


カルドニーさんの肩を組んで情報を引き出そうとするサフィさん。

彼女の顔が引きつっているのでやめてあげてほしい。


「じゃ、じゃあ早速中に入って依頼を見せてもらいましょうか!行きましょうカルドニーさんも!」

「は、はい・・・」


そう言って助け舟のつもりでカルドニーさんの手を引いてギルドに入っていった。

なぜかカルドニーさんは顔を赤らめておりこちらを見つめながら歩いている。今日は体調が悪いのかもしれない。

さっさと依頼を確認して出発しなくては負担になってしまう。

そう思ってカウンターまで到着すると、カルドニーさんはカウンター奥へ入ると、一枚の依頼書をカウンターに置いた。


依頼書を見ていると、サフィさんが後ろからのしかかるように覗きこんできた。ちょっと頬を膨らませて不機嫌そうだった。


「サフィさん、こっちからの方がよく見えますよ」


そういって依頼書が良く見えるように譲るように横にずれると、後ろにへばりついたままのサフィさんは「ふん!」と言ってそっぽを向いてしまった。

なんなんだ・・・サフィさんがよく分からない行動するので困ってしまうが、依頼を確認して魔物の前へ連れ出せば機嫌も直ってくれるだろう。

そう思って依頼書を確認した。


【オーガ討伐】

南の森林地帯で複数のオーガを発見

偵察数量報告 10,000エルザ

討伐1体 50,000エルザ

確認部位 頭

ランク C


なるほど・・・オーガなら何度か『遥かな頂き』が狩ってるのを見たな。頭が討伐部位だったんだ・・・

ライディアンさんは【ライトニング】で黒焦げにして放置してたもんな・・・

そんな事でも懐かしく思う。


「あの、倒して首だけ持ってきたらいいようですが、その他の素材ってどうなります?」

「ああ、もちろん他の部位でも別に買取もするよ。全体で10万エルザぐらいにはなるだろうが、討伐するのに無傷ってわけにはいかないしね。剣豪クラスなら首だけ一撃スッパリなんて猛者もいるだろうけど・・・まさかどちらか剣豪とかレアジョブ持ち?」

「いやいやそんなことないですよ。ごく普通のジョブです」


まさか聖神官や竜とは言えない・・・


「収納持ちのようだし全部回収してきたらこっちで解体から査定までさせていただくよ!」

「はい。というか収納持ちなのはどうしてわかったんですか?カルドニーさん鑑定スキルないですよね・・・」

「あ、逆にタケルさんは鑑定持ちなんだね。いや武器とか持ってないから・・・」

「はーそうでしたね」


二人とも素手ですとは言えない・・・まあ収納持ちなのは正解だからいいか。


「よし!オーガぶっ殺せばいいんだな!」


そう言って右腕をブンブン回しているサフィさんを子供みたいだなと思ってしまう。


「いやいや。なるべく綺麗に倒したら貰える報酬も多くなりますから・・・」

「バーンってやった方が気持ちいいだろ?」

「あー、じゃあゲームみたいなもんですよ。いかに綺麗に仕留めるか・・・みたいな?」

「そうか?まあそれはそれで楽しそうだ!」


二人がこんな会話を繰り広げているのをカルドニーさんは呆れながら眺めていた。



◆◇◆◇◆



「お、いたいた。10匹ぐらいいやがる!早速ぶんなぐって木っ端微塵にしようぜ!」

「サフィさん、綺麗に狩る競争ではなかったんですか?」

「そうだった!大丈夫覚えてる!」


そう言うと、サフィさんが一体のオーガにものすごい速度で飛んでいくと「まずは1匹!」とそのオーガの胸にこぶしを叩き込むと、左胸がバーンってなっていた・・・

もう左肩かあたりまでごっそり弾け飛んでいた。何あれ怖い。

サフィさんが小声で「なかなか加減がむずいな・・・」と言っていたのを、近くまで来た僕は聞こえていた。

あれで加減していたのか・・・

そして僕も怯えて近づいてこなくなったオーガの一体に【肉体倍化】で脚力を高め近づくと、サフィさんと同じように右胸に手を当て【人体操作】でオーガの心臓の動きを停止させた。

それをみたサフィさんはとても悔しそうに地団駄を踏んでいた。


「次こそはー!お前だー!」


そう言いながら次のターゲットを決めたサフィさんは、手のひらをそのオーガの胸にたたきつける。

今度はバーンってならなかったな。と見ていると、オーガはそのまま後ろにひっくり返って動かなくなった。

掌底打ちのようなものなのだろうか。というか仮死状態で死んでないんじゃ・・・

試しにと近づいて【次元収納】へ入れようとするが入らなかった。


「サフィさん、それ死んでないです。収納できないので・・・」


それを聞いたサフィさんはハッとした顔をしたと思ったら、おもむろに人差し指をオーガの胸に突き刺した。

その瞬間、オーガの体はビクンとはね、そのまま動かなくなってしまった。

確かに収納されたけど・・・グロい・・・


それに満足したのか、サフィさんは次のターゲットを決めてオーガの右胸を指で破壊していく。

なんとも楽しそうな笑顔である。やってることは鬼畜だが・・・

とはいえオーガを殺すという点では変わらないか・・・

そんなことを考えながら、あることをひらめいた。

どうせ頭は討伐部位として持ってかれるんだ。と考え、今後はオーガの頭をつかみ【人体操作】でオーガの脳の動きを停止させた。

倒れ込むオーガが収納されるのを見て、これなら体は無傷、心臓も完璧な状態で査定してもらえる!とちょっと得意げになってしまった。


それを見て悔しがるサフィさんは、頭を上半分を砕くという選択肢を取って対抗していた。

1時間も立たないうちに、12体のオーガが収納に納まった。

サフィさんもスッキリしたような笑顔で額の汗を腕でぬぐっていた。


「じゃあ帰りますか」

「おー!」

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