二章 エルフ族のティカ、異世界より参上

第16話

 高坂が瀕死になってから数週間が過ぎた。俺はいつも通りにダンジョンに潜る。高坂はいない。

 あの後高坂は目を覚まして父親から大目玉を食らったらしく、暫くダンジョンに潜るのは禁止にされたらしい。落ち込みながら「一緒に行けなくなっちゃった」と俺に報告してきてのを見て、こいつ反省してないな? となった。

 元気なのはいい事だけど、反省はしっかりしてほしい。

 俺を置いてダンジョンに潜ったのは、強くなりたかった、足手纏いになりたくなかった、リスナーにいい所を見せたかったから。だった。一人で行く程追い詰めたつもりはなかったんだけど。あの時はノリノリで一緒に行こって言ってたのに一人で行くなんて、思ってもみなかった。

 

「ふあぁ……」


 高坂のレベル上げをしようと思ったんだけどそれもなくなった。楽しみが減った。

 いつものように最下層に行って適当にモンスターを狩る。ついでに依頼もやる。いつも通りの日常。


「ん……?」


 あれ、こんな道あったっけ?

 いつものルートを通ってきたはずなのに、今日は別の道が出来ていた。

 ダンジョン変化するタイプなのか? 首を傾げて悩む。今までこんな事なかったんだけど……ダンジョンに変化が起きる程の何かがあった?

 気になる……行ってみよう。

 数分ぐらい歩く。モンスターが出る気配もないし、空間に出る訳でもない。何の道???

 

「うわっ……? 何……?」


 暫く歩いていたらいきなり正面奥から光が発生した。眩しい。何かあるのか? 

 手で目を覆って走る。少し走ったら空間が現れた。そしてその中央から光の塊が出来ていた。


「何これ……」


 光は段々眩しさを増していく。眩しいんだけど???

 一層眩しく光ってあまりの眩しさに目を瞑ったら、段々光が弱くなった。

 そしてそこに人が立ってた。


「……到着、したのでしょうか」

「――! その、声」


 聞き覚えのある声が聞こえた。腕をどけて人を見る。見覚えしかない姿。

 緑の髪に薄い青目。尖った耳はあいつの特徴ともいえる。向こうでさんざん世話になった人――エルフ。


「ティカ!!」

「リツ? ――リツ!!」


 俺達は一目散に近づき抱きしめ合う。変わらない姿。エルフ族のティカ・リンベルだ。俺の、相棒。


「なんで、なんでティカがこの世界に?」

「神様に頼んで、転移してもらいました」

「なんで、ここにはエルフはいないんだよ……? 来ても、意味がない」

「リツと会いたかったのです」


 会えてよかった。とティカは俺を抱きしめる力を込める。

 暖かい、声も、姿も変わらない……。


「リツ、キミの世界を案内してくれますか?」

「する……でも、その前にこの時間を堪能させて……」

「いいですよ。ワタシも、堪能したい……」


 俺達は暫くその場で抱き合った。

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