第17話 長編と短編の格差に、やりきれない思いを抱えて……。



 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは、ほぼほぼ関係ありませんので、まあ、あんまり深くは気にしないで下さい。


 特に、どことなく聞いたことがあるような作品名が出てきたとしても、スルーして下さいね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 自分が感じた疑問、それに従って、自然と動いたおれの指。


 1時間もかからずに約7000字の短編作品『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』は書き上がっていた。


 そして、それを3月14日のホワイトデーの昼に、ヒューマンドラマジャンルで投稿した。

 別に、ホワイトデーだからといって、誰かへのお返しだとか、考えていた訳では、断じて、ない。

 なぜなら、2月14日に誰からも何も受け取ってはいないのだから。


 この短編が、翌日の3月15日の昼にはジャンル別日間4位になった。ランキングまとめページ入りである。さらには、3月16日の朝に、日間1位へとランクインする。


 このレスポンスの速さ。短編と長編の格差を感じてしまう。


 どう考えても、長編連載の『リアダン』の方が、はるかに時間をかけているというのに、『小説家になったろう』読者の反応は短編が一気に釣り上げていくのだ。


 時間をかけて書き続けた長編連載作品がなかなか読んでもらえず苦しむのに対して、思いつきや閃きで書き殴った短編が一気に『小説家になったろう』世界を駆けあがっていく。


 どちらも同じ、おれが書いた作品だというのに、その自分自身が格差と理不尽を感じていた。


 短編『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』はそのまま日間だけでなく、週間1位にもなり、さらには月間も上位へ食い込んで、『小説家になったろう』の表紙入りも果たした。


 だが、ここで、思わぬ効果におれは気づいた。


 この短編がランキングを駆けあがっていく間に、『リアダン』はもちろん、過去作の『ランクル夫人』や『ボインの伝説』もPVを伸ばしていたのだ。相乗効果で『リアダン』も読んでもらえるのはありがたかった。


「……とにかく、何か、公開し続ける……もちろん、ある程度以上の質は確保しなければダメなんだろうけど、それが『小説家になったろう』のやり方、か」


 長編連載を続ける傍らで、月に1度か2度、短編を公開していくというスタンスは、『小説家になったろう』では有効なのかもしれない。


 ネット小説は読んでもらえないと始まらない。そもそも『小説家になったろう』では100万以上の作品が公開されていて、ランキングページに名前が出るのは、そのごく一部なのだ。だからこそ、ランキングに入ると、色々と伸びる。


 だからといって、毎月、短編をさらっと書けるかというと、これまでの自分を振り返ったおれは、無理だと判断した。


 ……書きたいものしか、うまく書けないおれは、やっぱり、小説家には、なれないんじゃ、ないんだろうか?






 友人と会って、おれは愚痴をこぼしていた。


「まーだ、そんなことに悩んでんのか? 贅沢な……」

「贅沢?」

「はっ……そもそも、ランキングに入れないヤツがどれだけいると思ってんだ?」

「いや、ランキングに入ってなくてもいい作品はあるだろ。おれだってNTRスコップは毎日欠かさずやってるぞ?」


「NTR以外も読めよ!?」


「婚約破棄ものも、冤罪ものも、読むは読むけどな……」

「いや、『小説家になったろう』漬けだな、おい……メインで読むものがNTRとか、かなり病んでるけど……」


「ざまあものなら、NTRが一番、リアリティが出る可能性があるからな。『毒々しい死人』とか、読んだらおまえにもわかるって。ただ、あんまりリアリティのある作品がないジャンルなのも事実だけど……」


「あれ読んだら脳が破壊されるわ」

「お、読んだことあったか」


 書けなくなったおれは、休日に友人とコメダ珈琲でモーニングのトーストを食べていた。誰かに話せば悩みはスッキリするかもしれない、そんな思いもあった。


 気晴らしにはなったが、悩みは消えず、『リアダン』の続きは書けないまま、『リアルダンジョンとタイムアタック ~RDTA、トレーニングSIM~』の前編が3月21日に終了した。

 そのまま、後編が予約投稿はされているが、この時点で、5118ポイント、1130ブックマーク、618415PVで、ジャンル別ランキングは日間5位、週間3位の、月間4位だった。


 友人に言わせれば、上出来の部類だ。

 おれも、そう思う。

 四半期でもジャンル別なら10位なのだ。これは本当にすごいことなのだ。


 それでも、ポイントは短編『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』に、とっくに追い越されていた。


 まるで短編と長編連載は、童話のうさぎとカメのようだった。











――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 あとがき失礼いたします。


 作中にある、


『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』


 につきましては、検索しても見つからないと思います。


 ただし、これとよく似た名前の、


『第二王子も苦労人 ~婚約者の義妹が「お姉さまに虐げられている」と訴えてきた~』


 につきましては、

https://kakuyomu.jp/works/16817330660708732008

 へとアクセスすれば、読むことが可能です。


 作品名はとてもよく似ていますが、この物語はフィクションですのでご注意下さい。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る