ヤンデレASMRシチュボ風ショートショート

@redbluegreen

001 秘かに恋をする同級生は、彼が他の子と付き合い始めると彼を呼び出して…


「(タン、タン、タン、タン…)

ん、しょ………

今日も部活疲れたねー…

なんか今日のコーチ、やけに張り切ってた感じだけど、なんかあったのかな?

………へぇ、大学のスカウトの人が来てたんだ。

え、何で君が知ってるの?

挨拶したから?

…ああ、そっか。君を見に来てたってことか。

そりゃそうだよね。

この間の短距離の大会、ぶっちぎりのトップで優勝してたし。

スカウトの人も見に来るってものだよ。

それに比べたら私なんか…

………

ん、そう…。

私は私のいいところがある、か。

………そんなのあるのかな?

見た目も平凡だし、勉強もあんまりよくないし、部活だって、下から数えた方が速い成績だし。

………

………

………

ご、ごめん。それ以上は言わないで。

私のいいところ言ってくれるのはありがたいけど、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるから。

………ふー、はー。

うん。ありがと、何か元気出た。

やっぱり、持つべきものは幼なじみだよね。

…じゃあ私、こっちだから。

また明日。

バイバイ。

(タン、タン、タン、タン…)

………

…えへへ。

私のこと、あんなふうに思ってくれてたんだ。

良かった。

………よーし、頑張るぞ!

おー!」




「ねえねえ、ここの問題、教えてくれない?

文法が全然わからなくって。

………ふむふむ。なるほどなるほど。

ああ、そっか。そうやって訳していけばいいんだ。

ありがと。

………

…ふぅ。ちょっと疲れてきちゃった。少し休憩しない?

………うん。うん。あ、飲み物持ってきてくれるの?

ありがと。

(………ガチャッ。トントントン………)

…この部屋も久しぶり、だな。

今の学年になってから………いや、今の学校に入ってから全然誘ってくれなかったし。

いや、言い出さなかった私も悪いかな………

でも、今日は、テスト勉強を口実に来れた。

変に思われてないかな?

すぅ、はぁ………

ああ、緊張する。

まだ何も言ってないのに、心臓がバクバク言ってる。

…でも、決めたんだからちゃんとやらなくっちゃ。

今日、告白するんだって。

(パンパンパンパン!)

…痛い。ちょっと頬を強くたたきすぎた。

うん、でも、気合は入った。

今日こそ、ちゃんと私はやるんだ。

絶対絶対、逃げない。

(………ガチャッ)

ひゃぁっっ!!

ちょ、ちょっと、戻ってくるなら戻ってくるって言ってよ!

びっくりしちゃったじゃん!

………あー、えっとその、聞いてない、よね?

あっ、ううん。聞いてないなら聞いてないでいいのホントに!

何でもない!ホントに何でもないから!

………あー、よかった、聞かれてなくて…

あ、ジュースありがと。

(ゴクゴクゴクゴク)

………ふー、よし。

あ、あのっ!それでねっ!

………え、君も話があるの?

あ、うん。いいよ、君からで。

それで、何?

…………………………え?

えっと、ごめん。今なんて言ったの?

告白、された………?

美術部の、あの人、に………。

………へ、へぇ、そうなんだー。

あの、すっごくきれいな人、か。

えーと…それで、君はどうするの?その告白。

………

…そ、そう。付き合うことに、するんだ………

良かったじゃん。

あんな、学校で一番キレイな人に告白されるなんて。

断るなんてもったいないよね、うんうん。

あー、でも、学校中の男子を敵に回しても知らないぞー。

ファンクラブとかもあるって噂だし、精々夜道には気を付けることだね。

………え、私の方の話?

あー、いや、うん。

………ごめん、何話すか忘れちゃった。

思い出したらまた今度話すよ。

…うん、うん………

………

…ごめん。今日はもう帰るね。

もう、遅い時間だし。

………うん、うん。またね。

(ガチャッ)

………

…ぐすっ、ぐすっ。

だめ、まだ泣いちゃ。せめて、家から出るまでは我慢しないと。

………ぐすっ、ぐすっ。

ぐすっ、ぐすっ………」




「………あ、ねえ。一緒にかえ………

あの人と一緒………だ。

二人とも、仲良さげに話してる。

学校一の公認カップルって、言われてるほどだもんね。

最近は学校でも、ずっと二人で一緒にいる。

登校も、昼休みも、下校時も。

………あ、手、つないでる。

みんな見てるのに、周りの目なんか気にしないで、仲睦まじそう………

………

もう、私が入る隙間なんて、どこにもないよね………」




「(ガチャリ…)

ごめんね、急にこんなところに呼び出しちゃって。

…ん、ここの鍵?

前に天体観測のイベントで借りたことがあったから場所知ってて、勝手に鍵借りてきちゃった。

…ここって気持ちいいよね。

学校で一番高いところで、街並みが見渡せて、青空が見えて………って、青空じゃなくて、曇り空か。

『どうしてこんなところに呼び出したんだ?』って。

………その前に、ちょっとお話、しよ。

私と君は幼いころからずっと一緒で、遊ぶ時も、どこに行くのも一緒だった。

カブトムシを追いかけたり、雪だるま作ったり、何やっても、一緒にやってて楽しかった。

…でも、中学に上がった頃かな。

部活に入って、勉強も忙しくなって。

だんだんと、君と一緒の時間は減っていった。

一緒の部活でも、君と私じゃレベルが違いすぎて、君は遠い存在になっていった。

始めのころは小さな距離でも、だんだんとちょっとずつ、離れていってしまった。

今の私にとってはね、もう君は、いくら手を伸ばしても届かない存在なんだよ。

…もう、私には届かない存在の君。

どんなに欲しくても、絶対に手の届かない君。

…そう思ったらね。なんか、色々どうでもよくなってきちゃったんだ。

勉強も、部活も、これから先の人生も。

でも、一つだけ、心残りがあるの。

君にとって、『私』という存在は、どういうものなんだろうって。

真ん中にいるのか、端っこにいるのか、それとも、もういないのか。

それだけは、曖昧にしておくのは、なんか嫌なんだ。

………どうやったら、君の心に残れるのか、色々考えたんだけどね。

私には、これくらいしか思いつかなかったんだ。

(ガシャン)

それじゃあ、ね。

私のこと、いつまでも、想っててね。

バイバイ。

(トンッ………グシャッ)」

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