第7話 探し物は大体すぐ近く

進化が始まり、私は抗えない眠気に誘われ意識を失った。

私が目を覚ますと、知らない場所にいた―


なんてことはなく、意識を失う前と周囲の状況は特に変わってなかった。

殲滅した魔物は当然ながら一体もおらず、静かなものだ。

さて、進化は果たしたわけだが、ステータスはどうなったのだろうか?


名前:なし

種族:スケルトン・ナイト

Lv:25


HP:320/320

MP:0/0


STR:250

VIT:250

INT:0

MIN:1

AGL:200

LUK:100


ユニークスキル:【傲慢】

スキル:【アイテムボックス】【鑑定】【言語理解】【成長加速】【思考加速】【剣術】【看破】【体術】【威圧】

称号:【元異世界人】【知恵を持つ魔物】【幸運者】【同族殺し】【見破りし者】


…なるほど、大分強くなったな。

INTとMINの低さは相変わらずだが。

それと、何やら新しいスキルも生えているな。

名前的に弱い相手をビビらせるようなものだろうか?

一応確認しておこう。


スキル【威圧】

効果:常時発動。自分よりレベルの低い相手を近寄らせない。


おお、大体合っていたか。

雑魚を倒しても特にメリットがないし、手間が減るのはありがたいな。

とりあえずこの階で試すとしよう。

とはいえ、どうせこの階には格下しかいないのだ。

そろそろ次の階に行くための階段も見つけたいところではある。


というわけで部屋の外に出る。

この部屋に来るまでの喧騒が嘘だったかのように静かだ。

そのまましばらく歩き、この階に来て最初に入った大広間に到着。

未だにスケルトンたちが居るが、【威圧】のお陰か、敵対してくることもなければ、そもそも近づいてすら来ない。

その結果に満足して探索を始める。

この階では見落とした宝箱でもない限り得られるものは無さそうだし、早めに次の階へ行きたいところだな。

そう考えながら次の階へ続く階段を探すが、1日経ってもなぜか階段は見つからない。

探し漏れがあったかとさらに数日探したが、この階のマップが完全に頭に入っている状態である今も、階段は見つかっていない。

もしかして魔物を倒した回数が関係あるのかもしれないと思いスケルトンやスケルトン・ウォリアーをとにかく殲滅するが、階段は見つからない。

更に数日経ち、すっかり拠点になった「元モンスターハウス」で一人頭を抱える。

まずいな…もう数日経った。

このまま見つからなければ、私はこのままここで死に絶えることになるぞ。

今でこそ頭は冷静だが、それでも無意識に足元の石ころを壁に投げつけていることがある。

ここまである程度順調に来ていたせいか、数日階段が見つからず大分ストレスが溜まっているようだ。

ふと立ち上がり、壁に沿って部屋を歩き回る。

歩けば何か思いつくかと思ったのだ。

そうして部屋の入口に立ち、なんとなく部屋全体を見渡す。

すると、に目が留まる。

その辺りに何やら違和感がある気がした。

そのまま近づき、壁を凝視する。

その中央部に何やら怪しい四角形の凹凸。

…そう思いつつその部分を押してみる。

どうやらその「まさか」だったようだ。

そのまま壁が左右に開いていくではないか。

そして、その先には階段が見える。

まさに灯台下暗しというやつだったらしいな。

ようやく先に進めそうで一安心だ。

間抜けな自分に苛立ちを覚えないでおないが、今はもはやどうでもいい。

新たな敵すらおらず非常に退屈していたのだ。

急いで階段を上り、新しい階を視界に収めようとする。


カタカタカタ…階段に自らの足音が響く。


普段なら気にも止めない音だが、新しい場所へ行ける興奮からかやけに大きく聞こえた。

その興奮も冷めやらぬまま、階段を上りきる。

そしてそこにいたのは、やはり大量の骨。

それも「スケルトン・ナイト」である。

相も変わらずただの骨ではあるが、【威圧】のせいで戦う相手がおらず気を紛らわせることすらできなかった私にとっては、もはや極上のステーキと大差ない。

フォークで刺してそのままむしゃぶりつくように、近くにいた1体にとびかかる。

探索に邪魔で仕舞っていた「鉄の剣」を【アイテムボックス】から瞬時に取り出し、切りかかる。

ナイトともなると武器を持っているようで、相手も剣を取り出して応戦する構えを取る。

そのまま打ち合い、鉄と鉄のぶつかる音が鳴り響く。

流石にまずいと思い、視界の端で周りを一瞬見る。

しかし、他のナイトたちは音が聞こえていないのかタイマンが好みなのか、こちらを見つめるだけで戦闘に入ってこようとはしていない。

それがわかったのですぐさま視線を正面に戻し、目の前の個体との戦闘に集中する。

先ほど受け止められてしまった剣を引き戻し、そのまま数度打ち合う。

とはいえステータスは【傲慢】の効果でこちらが上回っている。

それにより相手の剣を上へ弾くことに成功。

その隙に手の甲を返して真っ向から振り下ろす。

抵抗もなく二つに切れたそれを見て、久しぶりの勝利の余韻に浸る。

気分もよくなり、レベルアップの声も無視してそのまま近くの2体目へと突撃。

今度は少し姿勢を低く保ち、足元へ一文字に切り付けてみる。

しかし初撃は防がれ、後ろに引く。

しかし無理に引いたせいでバランスが崩れてしまった。

それに対して相手が追撃。

上から切り付けてくるのでどうにか剣をぶつけて回避。

前世で剣術でも習っていれば多少は楽だったのだろうかと思わなくもないが、それは今考えても仕方がないこと。

それよりも今は、この状況を楽しむとしよう。

少なくとも、現状ステータス的には勝っているはずだし、問題はない。

というか、AGLも私が2倍近く高いはずなのに追いついてくるのは、技術の違いを見せつけられている感じがして少しむかつくな。

せっかくだ。こいつらと戦って少しでもその動きを盗んでみせよう。

そう考え、相手の動きをしっかりと見てみる。

先ほど弾いたことで相手も引いてはいるが、私とは違いほとんどバランスを崩していないらしい。

そのまま左足を軸に、体重を乗せた一撃を放ってくる。

それを必死に回避しつつ、相手がどう打っているのかを確認。

どうやら打ち込む瞬間に膝を落として体重を乗せているようだ。

相手が一瞬止まったので、この間にひとまず見よう見まねで真似をしてみる。

左足に体重を乗せ、右足で踏み込む。


—それと同時に膝を落とし、剣を振り下ろす。

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