アナザーワールド・オンライン

第1話

『特異点の検索……完了。』

『世界樹中央管理機構（ユグドラシル）からの指令を受諾。特異点の観測を開始。』

『お目にかかるのを楽しみにしておりますね、我が主（マイ・マスター）。』

　Another World Online 《アナザー・ワールド・オンライン》通称【AWO】

　《ヴァルハラ》と言う無名の会社から発売されたVRMMORPG は、仮想通貨（バーチャルマネー）を現金（リアルマネー）に換金できるとして瞬く間に世界中に拡がり総プレイ人口は1億人に到達した。

　「あの、慎悟（しんご）先輩。今日こそ一緒に【AWO】やりましょう！」

「はぁ～、わかったよ。ってか、和也（かずや）は彼女がいるんだから彼女とすればいいじゃん。」

「あいつには『男のロマン』ってのが、わかんねぇンすよ。」

「まぁ、【AWO】は巨大ロボに乗って戦うゲームだから、なかなか女性には受け入れられないだろうな。」

　和也が誘ってくれるのは嬉しいが、俺はゲーム自体した事ないんだがな…

　まぁ、会社の中でも不思議と馬が合う後輩だから何かにつけて和也とはよく一緒にいる事が多い。

「じゃあ、慎悟先輩。19時に【AWO】のロビーに集合ッス！」

「わかった。その時間までにキャラクリ（キャラクタークリエイト）を終わらせておくよ。」

　アパートに戻りコンビニ弁当で夕食を済ませ、シャワーを手早く浴び【AWO】にログインする。

『ようこそ、【AWO】の世界へ。まずは、キャラクターの名前と性別を選んでください。』

　名前か……面倒なので本名の御剣（みつるぎ）　慎悟（しんご）をそのまま《シンゴ=ミツルギ》で登録しておこう。性別も【男】でいいだろう。

『名前と性別の入力を確認しました。続いて主武装（メインアーム）を選択してください。』

　さて、この【AWO】の世界には現実と同じ武器が存在するようだ。

　ハンドガン　アサルトライフル　SMG（サブマシンガン）…等

「主武装を選べか…どれもしっくりこないな……」

　項目を色々見てみると、【近接武器】という項目があった。

　俺は実家の道場で子供の頃から【御剣真陰流古武術（みつるぎしんかげりゅうこぶじゅつ）】という古流武術を習っていた。

「おっ!?日本刀がある!!俺には銃より日本刀の方がしっくりくるな。

　しかし、和也は『ガン◯ムみたいなロボットに乗って戦うゲーム』って言ってのに、自分の武器を何故選ばなければならないのだろうか？」

　まぁ、これだけ銃を推しているにも関わらず日本刀を選んでいる俺が言う事でもないか…

『主武装（メインアーム）　日本刀が選択されました。続いて副武装（サイドアーム）を選択してください。』

　フム、副武装か…ここは投擲武器（とうてきぶき）にしておくか。さて、項目にあるだろうか……おっ、あった【棒手裏剣】。これで完璧だな。

……ジ…ジジ………ジ…ジジジ…

　ん？なんだ？ノイズが聞こえたが大丈夫なのか？

『我が主（マイ・マスター）のパーソナルデータを記録しました。』

　はぁ!?俺のパーソナルデータってなんだ？それにキャラクリのアナウンスの声と少し違っている気がする。

『全ての項目の選択が終わりました。それでは【AWO】の世界をお楽しみください。』

　目の前が白く染まり【AWO】の待機ロビーに移動する。

『我が主（マイ・マスター）、御武運を。』