第2話 人魚姫 前編

 ここは、人魚姫が敬愛する王子の寝室。

 人魚姫は手にナイフを携え、大粒の涙をポロポロと流しながら、ベッドの上で幸せそうな寝息を立てる王子を見つめている。


「姫っ!

 ちょっと待って下さいっ!」

 声の方に振り返る人魚姫、彼女の眼前には少年が一人片膝をついている。

「あなたは?」

doüdyドウヂと申します。

 その暗殺は今すぐお止め下さい。」

「しかし、私が人魚に戻るためには…。

 それに、私の命も今夜限り…。」

「私に考えがあります。」

 不敵な笑みを浮かべ、人魚姫に顔を向ける少年。


「ですが…。」

 戸惑う人魚姫を前に、少年は立ち上がるとともに、人魚姫に施術を施した魔女を召喚する。

「!!!」

「!!!」

 夕食中に召喚されて驚いている魔女。

 魔女の出現にビビる人魚姫。


 暫しの沈黙が流れたところで、doüdyドウヂが魔女の方から指示を始める。

「魔女よ。

 王子というのは、いろいろスキル持ちが多いようなので、実験体クランケに持って来いだと思うのだが?

 そして、人魚姫を今しばらく人間として泳がせて置いたほうが、後々貴女の立場を盤石にすると思われるのだが?」

 そして、人魚姫の方に向き直り

「人魚姫よ。

 美男子イケメンは、他にも居ります。

 それよりも、王子の許嫁フィアンセなどは、なかなかの美貌の持ち主。

 あれを掌中に収め、手籠めにしてみても良いのでは有りませんか?」


 口に咥えたオカズを飲み込み、悪い笑顔になる魔女。

「それで、ソコに転がっている王子を今すぐ拉致するのかえ?」

「いえいえ、人魚姫が彼の許嫁フィアンセを奪い去った後にするのです。」

「では、姫を今しばらく延命させるという事じゃな?」

「もとより、呪いなど無く、悲恋の演出道具おもちゃが欲しかっただけでしょ?」

 悪い顔でクククッと笑い合うdoüdyドウヂと魔女。


 さて、doüdyドウヂの言葉に放心状態だった人魚姫も自己の生命が維持されそうだというところで、話に加わってくる。

「私、生き残れるの?」

「「ええ。」」

 満面の悪い笑顔で答えるdoüdyドウヂと魔女。


「では、魔女は手はず通りに。」

「御意っ!」

 言うが早いか、doüdyドウヂに答え、人魚姫の呪いを解除する魔女。

「私は帰るよ。

 まだ、食事中だったからね。」

「ええ、ご苦労様でした。」

 再び、悪い顔でクククッと笑い合うdoüdyドウヂと魔女。


「では、お姫様。

 せいぜい、引っ掻き回して私を楽しませておくれよ。」

 そう言って魔女は姿を消した。


「それでは、姫。

 『復讐』を始めましょう!」

 doüdyドウヂの言葉に従って、王子の寝室から人魚姫は姿を消し、doüdyドウヂも後に続いた。


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