第5話 『無能のカイン』からの脱却

「さて・・・逃げるようにギルドから出て来たけど、これからどうするか・・・薬草採取っていっても今までは一日掛けて5束持って行って銀貨1枚だったよな。鑑定が使えるなら薬草を見つけるのも早いとは思うが、移動にも時間はかかる。それにしても俺ってギルド内じゃ有名なんだな・・・まあ良い意味じゃなかったけど。」


カインが逃げるようにギルドから出てきたのは、ギルドに入ると無能、無能と色んな人から声を掛けられたからだ。親しみを持って呼ばれるなら問題はなかったが、声を掛けてくる人はみなカインの事を腫れものように扱い、下に見るような目をしていた。その視線に耐えられなくなったカインは薬草採取の依頼を取ってすぐにギルドを出たのだ。


「あれじゃいつ絡まれてもおかしくないよな。ギルドで絡まれるのは異世界テンプレだから、きっとその内起こるだろうけど、ラノベの主人公なら絡まれてもやり返すだろうけど、今の俺にそんな事はできないからなるべくトラブルは避けないと。とりあえず草原に向かって薬草を探すか。毎日最低でも銀貨1枚は稼がないと食事もできないもんな。」


カインは街を出て、いつも薬草を採取している草原に向かった。草原についたカインは見渡す限りの大自然に絶句した。


「さすが異世界だな。こんな景色、日本じゃなかなか見られないぞ。おっとそれより薬草だ。ここから鑑定したらどこに薬草があるかわかるのか。って鑑定ってどうやって使えばいいんだ?鑑定って言えばいいのかっておお!!!」


鑑定と言った瞬間、カインの目には映るものの詳細が見えるようになった。


「なるほど。こういう感じなのか。でもいらない情報までは行ってくるのは面倒だな。目に力を入れて念じてもいけるのか。」


カインは口に出さずに鑑定が使えるか確認した。


「なるほど。口に出さなくても鑑定は使えそうだな。それに、目に映るモノ全て鑑定しないようにすることもできる。かなり便利な能力だな。よしそれじゃあ薬草にのみ反応するようにしてっと、おっ早速見つけた。」


鑑定を使い、視界に移った薬草の場所に向かって薬草を採取した。


「幸先がいいな。これだったら100束ぐらい集めれそうだな。アイテムボックスがあるから何束でも持って帰れるし、あっでもアイテムボックスを持っている事が他の冒険者にバレたら面倒だな。この前ダンジョンの荷物持ちした時の奴らにバレたら都合よく使われそうだ。しばらくはアイテムボックスを使ってもギルドに行くときはリュックに入れておくか。そうすると50束ぐらいが限界か。は~。たくさん持って行きたいけど、目を付けられたら俺が困る。薬草採取は適当にしてレベルを上げる為に魔物を探すか。草原ならホーンラビットとスライムぐらいだし、視界が良いから万が一逃げる事もできるだろ。」


目に映る薬草を片っ端からアイテムボックスに入れていくカイン。次々に見つかる薬草に、足を止めずにひたすら採取していくと・・・


「そういえば昼飯の事忘れてたな。カインは昔から朝と晩しか食べてなかったみたいだけど、さすがにそれじゃ力が出ないよな。一回街に帰って昼飯にするか。肉串なら銅貨1枚で買えたはずだ。あれ?そういえば飯屋では肉料理って高かったよな?でも屋台の肉串は銅貨1枚でも買えるよな?どういう事だ?肉の種類が違うのか??」


カインの手持ちのお金は銀貨1枚。そのお金を使って屋台に売ってる肉串を5本購入した。2本はすぐに食べて、残り3本はアイテムボックスにしまった。


「アイテムボックス内は時間が経過しないのは異世界の定番だから女神様からもらったこのアイテムボックスもきっと時間経過しないタイプのはずだ。それにしてもあの肉串うまかったな。ホーンラビットの肉って言ってたから俺がホーンラビットを狩れれば家で自分で作って食べる事もできるのか?そうすれば食費を抑える事もできる。とりあえず後銀貨6枚を早く貯めて、次の神の奇跡をもらいたいからその辺も考えないとな。あれ?でもよくよく考えたらさっき集めた薬草50束をギルドに収めれば銀貨10枚。金貨1枚もらえるよな?えっ・・・もしかしてお金を稼ぐのって意外と簡単なのか?」


先ほど集めた薬草を全てギルドに提出すれば金貨1枚になるが、無能で有名なカインがいきなり薬草を50束を持って行くと、もしかしたら他の冒険者に折角稼いだお金を奪われるかもしれないと思い、強くなるまでは小出しに薬草を提出する事にしたカインは、再び草原に向かい、薬草ではなく魔物を探した。


「とりあえず1日3体、できれば5体、出来すぎの10体を目標にして魔物を探すか。スライムとかホーンラビットなら俺でも多分殺せると思うし。まあ鶏とか牛とかさばいた事もないからできるかどうかは不明だけど・・・」


カインは、草原内を歩き回り魔物を探した。もちろん探しながらも鑑定に反応があった薬草は集めて行った。


「見つけた。スライムだ。」


カインの視線の先には、異世界、いやゲームでおなじみのスライムがいた。青い色に30㎝程の体長、ゲームで見たスライムそのままだ。


「リアルスライムだ!!感動だな。ゆっくり近づいてナイフをさせば倒せるのか?そもそもあんなスライムに体当たりされても痛くもかゆくもなさそうなんだけど・・・一応念の為に鑑定しておくか。」


カインは目の前のスライムに鑑定するのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る