第13話 一心同体ってわけだ!



  R2Oからログアウトし、もう一度フレンドルーム改めバーチャル部室に入る。そこには他の配信を確認しているクマちゃん先生と、とんでもない表情をして固まっているキラさんがいた。


 ホタルさんはと言うと変わらない様子だ。まあ普段から配信見てるしな。


「キラ、やはり他のプレイヤーで森からスタートしている人はいないな」


「やはり。トップ組の私ですら聞いたことが無いですからね……」


「トップ組?」


「ゲーム内で一番レベルの高い人たちよ。キラちゃんは今レベル7で魔法剣士としてはプレイヤーランク1位なの」


「へー、凄いな」


 魔法剣士は魔法と剣術両方のスキルを伸ばすキャラ育成で、序盤は中途半端になりがちらしいのだが、キラ先輩はそんなキャラ育成でプレイヤーランクのトップにいる。


 俺はと言うとプレイヤーランクがあるという事を今初めて知った。


「やはり配信をやろう!」


「えっ!?」


 キラさんは身を乗り出して体を近づけてくる。あかね先輩そっくりなキラ先輩のアバターは思春期男子として意識せざるを得ない。


「おい、強制はしないんだろ」


「むー、それはそうですけどー」


 配信と聞いて具体的なイメージが上手く出来ない。ゲームや雑談などを視聴者に届けると言う漠然としたものならあるが、そんな初心者ができるものなのだろうか。


 それに活動するとなればやっぱり多少なりとも視聴者を集めなければいけないと思う。

 キラ先輩までとはいかないけど、それこそお金を稼げるくらいには……。


「一人でそれが出来るとは思えないな」


「一人じゃなく二人でだ!」


 キラ先輩は俺とホタルさんの両方を指差す。ホタルさんを見ると、彼女も俺を見ていた。


「ドーンくん、君は普段なんのゲームをしてたんだ?」


「え、RPGとか、オフラインゲームが多かったですね。なのでMMOは初めてです」


「ホタルちゃんは?」


「私はやった事あるのがFPSで、他は配信を見ていて知識としてはありますけど……」


「なるほど、つまり初MMOとして、わからない事だらけのドーンくんと、ゲームの知識はあるがこちらもまた初MMOのホタルちゃん。この二人で配信をするんだ!」


 何がなるほどなのかまったくわからない。ホタルさんを見てみると、こちらもまた困惑している。


「こら、ちゃんと説明してやれ」


「つまりだ、ドーンくんがゲームをプレイして、ホタルちゃんがコメントを読む。ドーンくんとホタルちゃんがゲーム画面と視聴者を繋ぐ二人で一人の配信者になれば良い」


 その説明で一気に具体的なイメージが広がる。俺がゲームをプレイして、それを見た視聴者がコメントをする。そのコメントをホタルさんが読んで俺に会話形式で伝える。

 こうする事で、俺はプレイに集中出来るしホタルさんはコメントに集中出来る。


「イメージできたか? 君たちは一心同体になるってわけだ!」


「「……」」


 上手くいきそうな予感が凄いする。でも、これは俺だけじゃなくてホタルさんも了承してくれないと成立しない。


 俺はめちゃくちゃやってみたい。でもホタルさんは……?


「……どうだ?」


 キラさんの不安そうな一言。俺はホタルさんの表情を確認する。緊張と期待のこもった表情。多分、俺もおんなじ顔をしてる。


「せっかくゲーム同好会に入ったんだ」


「ええ、挑戦しないとよね」


 良かった、俺たちは同じ気持ちだった。


「「配信、やらせてください……!」」


「やったー!」


 嬉しさからか、「やった! やった!」と連呼しながらバーチャル部室を走り回るキラ先輩。何だか年上だとは思えない。


 そんなキラ先輩を追いかける足の短いクマちゃん先生。とてとて走る姿がとても可愛い。


「でもそんなすぐに視聴者は増えないだろうなぁ」


「それは、大丈夫だ……」


 息の切れているクマちゃん先生は、机に手をついて息を整えている。


「ドーンの配信画面はまず間違いなく特異点だからな。珍しさで人が集まる」


 いやいや、特異点って……。

 



















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