第11話 駆逐

門を開けて入ると、次々と荒くれ者が襲いかかる。


奴らの狙いはフーコとユキノだ。


「フーコ! 俺の足元から離れるなよ!」


「コンッ!」


「っておい!? ……そういや、強いんだっけ」


素早い動きで爪を使って相手に傷を負わせていく。

まだ成犬くらいの大きさだが、流石は最強の魔獣の一角か。

こいつら程度なら、そこまで心配はいらなそうだ。


「ユキノ! フォローしてやってくれ!」


「わかってますよー!」


ユキノが鉤爪をもってして、縦横無尽に駆け回る。

敵は姿を追うことも出来ずに、その場に倒れていく。


「へへっ! 隙ありだぜ!」


「そんなものはない」


「ぐはっ!!!!」


俺は間合いに入ってきた敵を反射的に切り捨てる。

同時に魔力を溜め、タイミングを見計らう。

ここはいずれ使うので、建物を燃やすわけにはいかない。

大勢が近づいてくる瞬間を……今っ!


「……二人とも! 下がれ!」


「コンッ!」


「はいっ!」


二人が下がったのを確認し、魔法を発動させる。


「紅蓮の炎よ、全てを飲み込め——フレイムウェーブ熱波


「ギャァァア!!!!」


「アツィイイィ!?」


炎の波に飲まれ、山賊達が倒れていく。

そのまま、骨すら残ることなく消えた。


「ふぅ、これで大分片付いたか」


「コンッ!」


「ですねー。よかったですね、役立たずにならなくて。どうやら、火魔法の威力は相変わらずみたいですし」


「役立たずとかいうな。しかし心なしか、威力が高くなった気もするが……フーコも、良く戦ったな」


「コーン!」


頭を撫でてやると、こちらの心まで落ち着いてくる。

やはり、もふもふは癒しだな。

その後も山賊を駆逐しながら進んでいく。

その道中には牢屋に繋がれている者達もいたが、ひとまず放置しておいた。

まずは、元凶である者を倒すために。


「おっ、あれが最後っぽいな」


「ですねー。どう見ても領主の館って感じです。といっても、今は山賊の根城ですけど」


「コンッ!」


すると、屋敷から山賊を引き連れたおっさんが現れる。

丸々と太った体は贅肉で、濁った目をしていた。

俺が散々始末してきた腐れ貴族そのものだ。


「な、何者だっ! ここは俺の国だぞ!」


「国? ここに国などない。確かに無法地帯ではあるが……」


「う、うるさいっ! お前達! ささっと殺せ! 女は生かしておけ!」


「へ、へいっ!」


「こいつは魔法を使うらしい! こっちも囲んでいけ!」


その言葉を受けて、俺達を数十人の男達が囲む。

命令した本人は、後ろに下がる。

……俺の一番嫌いなタイプだ。


「きゃー、怖いですぅ」


「棒読みで腕を組むな。ったく、緊張感がないやつだ」


「えへへー、だってご主人様の眉間にシワが寄ってるから。こいつらこどきを殺したところで、心を傷ませることはないんですよ?」


「……ああ、わかってるさ」


ユキナの気持ちは嬉しい。

確かに、人を殺すたびに俺の精神は病む。

俺は自分が生き残るためにやってきたし、それを正当化するつもりもない。

俺にできることは、その罪を背負うくらいだ。


「何をしてるっ! はやくやれ!」


「お、お前が行けよ」


「先にお前が……」


「ええい! 一斉に魔法をはなたんか! なんのために、貴様らを優遇してると思う!」


すると、その声に反応して奴らが構えを取る。


「ファイアーボール!」


「アクアショット!」


「ウインド!」


「ロックブラスト!」


「その程度の魔法で我を倒せるとは笑止千万なり! 全てを阻め——フレイムウォール」


周りに炎の壁を作って、全ての魔法を防ぐ。

属性など関係なく、その圧倒的魔力で。


「なっ!? つ、次々撃て!」


「魔力とて無限ではないはず!」


「弓も行け!」


「もう遅い……炎の槍よ降り注げ——フレイムランサー」


同時に展開していた魔法を発動させると、上空から炎の槍が降り注ぐ。

それらは山賊達を貫き、一瞬で蒸発させた。


「へっ? あ、ぁ? 何が起きた?」


「これで、残りはお前だけだ。一体、この地で何をしていた? 大方、好き勝手にやっていたんだろうが」


「こ、ここは無法地帯だったから俺の国にした! 好き勝手にやって何が悪い! 貴様だって追放された犯罪者だろう!」


「ああ、違いない。だから、これは正義ではなく俺のエゴだ。貴様が気に食わない……というわけでこの世から消えろ」


「や、やめ——ァァァァァァァ!?」


炎の火柱によって、人がいた黒い形跡だけが残る。


……あんまり気分のいい者ではないな。


まあ、いい……さあ、ここからがスローライフの始まりだ。






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