第30話

最前線では防御柵を越えようとするゾンビの群れと防衛側が

死に者狂いで交戦が続いている

すでに防御柵にはいくつも穴が開いていて、そこからゾンビの

群れが押し寄せてきているのだ

防柵の外にも足場の悪い屍骸などが散乱している

『ゾンビの動きが速くなってるぞ!! これからが本番だと思うから気張れぇ!! 』

夜天の下、松明を掲げている指揮官らしき男が檄を飛ばしている

防柵前の地面には数百の死体が倒れ伏していて、腐臭が立ち込めていた 男達の

身体には明らかに疲労感が漂っていた

実際問題として夜通し続くであろう戦闘で、確実に疲弊し始めていた


動きに統一性が感じられずバラけつつ、ゾンビの群れは押し寄せてくる

『生者が。我々を阻止できると思うな』と、嘲笑っているようでさえあった

遠距離からの弓矢による攻撃も効果がないようだ

頭に突き刺さり倒れているゾンビもいることにはいるが、全体からすると

僅かな数でしかない

一部の男達は、至近距離での白兵戦を開始することにしたようだ

『ここから一歩も通さねぇ!! 』

防衛側の1人がそう叫んで手に持った武器を振り回しつつ、最もゾンビが

密集している箇所へ突進していく

雄叫びと共にゾンビの群れに肉薄し、次々と切り倒していった

それに続けと言わんばかりに、幾人かが雄叫びと共に雪崩れ込みゾンビの

群れに肉薄し、次々と切り倒していく

『一掃してやる!!』

と叫びながら剣を持った男がゾンビの群れの中に突っ込んで、次々と

斬り倒していく

それもほとんどが頭部に剣を突立ててだ

ゾンビの頭部には剣が突き刺さったままで、身体は力なく倒れていく

血と腐臭と腐肉の匂いが周囲に充満していく

また、他にも数名ほど叫びを上げながらゾンビの群れに突っ込んでいく

男達がいるようだった

「おお!凄い!」

そんな感想を抱きながらも彼はドローンから送られてくる映像で彼らの戦いぶりを観望する


防柵の外からは、積み重なるようにしてとめどなくゾンビの群れが

流れ込む 防柵内の戦いも熾烈を極め、拠点の男達は次々に傷を負い

疲労が蓄積していく

防衛線を破られてしまえば一気に防衛側が劣勢になってしまいかねない

状況であったが、ゾンビ達の勢いには陰りが見え始めていた

疲弊し始めている防衛側だが、諦めの色を見せ始めるものは誰1人として

いないようだった

彼らの戦いぶりを観望していた彼だが、全てを観ている時間がなかった

「おっと! そろそろ武装警備隊員の『荒寺』に沸くキョンシー捕獲班の出動時間だ」

彼はそう呟くと、急いで準備を整えると急いで武装警備隊員の待機所へ移動した



限界集落と共に深刻な問題となっているのが、地域住民の高齢化で氏子や

檀家も減り担い手不足により維持管理も出来なくなった

廃神社・廃寺だ

廃墟と化してしまっている場所は、彼のいた『世界線』でも問題となっているが、

この『世界線』では『ダンジョン』や『モンスター』という物騒な

代物まで出現しているため、より深刻化している

彼のいた『世界線』よりも物理的にも危険な廃神社・廃寺に赴く時は

一筋縄ではいかない

朽ち果てた神殿や雨や風で荒れた状態の境内には、『耕作放棄地』して

『ダンジョン』化した田畑の内部で出現するモンスターとは一味違う

モンスターが跋扈している

妖怪や『怪異』と呼称されるモンスターだ



武装警備隊員の待機所に入ると、武装警備隊員が整列して班長の

説明を受けていた

だが、彼は思わず武装警備隊員の装備を観てぎょとした

「・・・・」

彼が絶句したのも無理が無かった

整列している屈強な武装警備隊員全員が白装束を纏い下駄を履き、

頭には鉄輪を被り、その上に3本のロウソクを乗せていた

胸元には魔よけの鏡、懐には護り刀を備えている

ここで下駄が一本歯で口に櫛を加えると、完全に丑の

刻参りである

(完全に丑の刻参りじゃね!?)

彼は挨拶をしようとして、思わず声に出しそうになった

屈強な身体の武装警備隊員全員が、丑の刻参り服装光景は

異様だ

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