第2話 北方騎士団 視点副騎士団長

「やってられるか!お前、俺の代りに伝令を2〜3人連れて本陣へ行け!」

陣に戻ってきた騎士団長閣下が喚き散らしている。

武人だが、普段は比較的冷静な方なのに何があったのだろう。


「聞こえなかったか?副団長、本陣へ行け!」

再度の御命令に従者に馬を引いてくる様に命じてから団長閣下に話しかける。


「閣下、本陣で何があったんです?」

騎士団長閣下をここまで激怒させるのだから、余程の事だろう。

閣下は名誉ある北方騎士団長として常日頃、温厚に振る舞っているのだから。



今、我々北方騎士団はランドルト平原で魔王討伐軍の一軍として最右翼に布陣している。


本陣は軍の中央後方の聖神騎士団に開設されているから馬なら、すぐ着く距離ではあるのだが、戦場でも、会議でも、情報なしに乗り込む無能は副団長にはなれない。


「明日の魔王軍との決戦を前に会議を開くと聞いて本陣に行ってきたが、本陣の奴ら何を話してたと思う?」

怒りが、おさまらないのか団長閣下は歩きまわっているが、自分の問いかけには答えてくれた。


「魔王を討った後の凱旋式の席次について真剣に話しているんだ。相手を舐めるにしても程がある!」

なるほど、これは武人である閣下の嫌う所だ。


魔王軍は兵力は半分以下ではあるが、魔王が布陣した丘を中心にゴブリンを工兵として使い防御陣地を築いて待ち構えている。


また魔王の天候操作によるものか、ここ数日雨が続いており平原は所々が泥濘んでいて、兵を連携して動かすには事前準備が必要だ。


それを何の話もせずに無駄話をしていたのでは武人の閣下が怒るのは当然だろう。


「それで閣下、どこの席をご希望ですか?」

ここは冗談にしてしまい本陣の様子を早めに見てくる方が良さそうだ。


「どこでもいい!もし凱旋式とやらの席が用意出来るのならな。」

閣下は不機嫌そうに答えた。


私は従者が馬を引いてきたのを確認すると天幕を出た。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る