選択の章

『三日月の天秤』


間近に迫った成人の日までに選ばねばならない。

月に移住するか、地上に残るか。

一足先にそれぞれの選択をした同級生たちを、移住の権利を持たない老いた父母を想う。

どちらを選んでも、後悔するだろう。

それでも――


見上げた夜空で、細い三日月が、心の天秤のようにゆっくりと傾いてゆく。




『選択の翼』


「今日で君も成人だ。自分の住む世界を自分で決められるのだよ」

三日月の夜、翼ある人が妖しく目を細め、窓辺で囁く。

「連れて行って。貴方の森へ」

「後悔しないね?」

美しい指が背筋をなぞれば、そこから花開く二枚の翼。

答えの代わりに真新しい翼を広げて、私は窓から飛び立った。



(お題:成人、三日月、後悔)

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