第43話 一枚上手


 パトラの部屋へ俺は静かに中へ入るとリビングの明かりは消えており窓が開いているのかヒラヒラとカーテンが揺れ、ソファに座った男女の影が目に入った━━━

 








 クチュ...クチュッ...









 部屋に響く柔らかいモノ同士が互いを舐め合ういやらしい音━━━













「やあジュノくん...だっけ? お邪魔してるよ」



 男の声と同時に舐め合う音が一旦止み、揺れるカーテンの隙間から照らす月明かりが映したのは...






















「勇者様...やめないで...パトラの方を見てください...」


 勇者と唇を重ねあっていたパトラの姿だった━━━



*      *      *



「これで君の愛する奥さんは僕のものだ...ねぇパトラ」


「...はい...勇者様...パトラはあなたの妻です...」


 虚な目をしたパトラは勇者の胸を強く抱きしめ、まるで愛する人にやっと出会えたような表情で微笑んだ


「可愛い子だ...早く心も身体も僕の虜にさせてあげたいよ。世界の英雄である僕の妻としていやらしく従順なメスになるように...」


「早くパトラをメスにして下さい...勇者様...」


「オマ...エ...!」


「おいおい、世界の英雄である勇者に向かってお前は失礼だろ。それにしても君は確か僕の妻によって従順な奴隷になったはずだが...まだ心の底で抵抗しているのか? まあその方がお仕置きになって丁度いい...正気をギリギリ保っている君の前で愛するパトラを犯して最大級の屈辱を与えてやるよ。夫の前で違う男に気持ちよくしてもらえるなんて嬉しいだろパトラ?」


「はい勇者様...パトラはとっても嬉しいです...」


 その言葉に勇者はパトラの髪を撫でて頬に触れ、

 パトラは嬉しそうに目を細める


「そうかそうか可愛いなパトラは...では早速始めようか」


 勇者は頬を赤くして顔を近づけるパトラに興奮したのかパトラの服を早速脱がし始めた


「綺麗な身体だ...程よくついた筋肉に手で覆いきれない大きな胸、そして透き通るような白い肌。君には勿体無いくらいだよジュノくん...ではそこで見ててくれ」


 奴は自分の服を脱いで準備に入った━━━















「確かにお前には勿体無いくらい可愛いよパトラは。けど残念...今から使うその短剣をケチャップ付属のソーセージにしてやるから使えなくなるよクソ勇者」


「何だと...!?」


「何度も何度も聞くな、そのまんまの意味だよ」




 ズシャァッ...!




「ン゛ク゛ア゛ァ゛ァ゛ッ!!」


 俺は勇者の股についた剣を掴んで引きちぎる━━━

 汚ねぇ...


 その場に汚物を投げ捨て、力が緩んだ勇者の首根っこを掴み壁に何度も何度も叩きつけて顔面の骨を砕く


「ごぇっ...! ぐふぇっ...! やめ...!」


 手に骨の感触が伝わり勇者を痛めつけている実感が湧いてさらに力が入る


「ン゛コ゛ァ゛ッ..! へ゛フ゛ッ...! ウ゛ェ゛ッ!」


「ちゃんと喋ろうよ勇者サマ、テメェのやった事はこんなんじゃ済まないだろ?」


 創...狐火━━━


 指に纏った小さい火を勇者の目に押し当てる


「シ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!」


「うるせぇな...全身焼かれないだけマシだと思えよ」


 勇者の右目は蒸発し瞼は爛れて片目だけ開いている状態になった。

 もっと痛めつけたかったがこれ以上は簡単に殺してしまうので叩きつけるのを止め、パンパンに腫れ上がった顔面を眺める。勇者の身体は加護の影響か痛めつけた所が少しずつ回復している


「あーあ、せっかくのイケメンが可哀想に。しかしすげぇ回復速度だ...剥ぎ取った所もみるみる回復してるぞ。まるでトカゲの尻尾だな」


「お前...何故...リーゼが魅了...したはず...」


 突然痛めつけられた勇者は自分の置かれている状況に理解出来ていない顔をしていた。

 腫れた顔面と相まってアホ面になってるな...


「あのなぁ...俺の隣にリーゼが居ない時点で察しろよ。まあそんな事に気が付かないくらい勇者サマはパトラに夢中だったのかな? それと何故か俺には魅了の耐性があるみたいで効かなかったよ」


「そんな...リーゼは...僕のリーゼはどこにやった!」


 人から奪ったものを僕の・・とかよく言えるなこいつ━━━


「パトラの魅了を解いたら教えてやるよ。それとも皮を一枚一枚剥いで強制的に聞き出してやろうか?」


「やってみろ...僕はリーゼの姿を見るまで決して喋らないぞ!」


「はぁ...そうかい」


 パチンッ!


 俺は指を鳴らして亜空間から泡に閉じ込めたリーゼを勇者に見せる。

 堕落者の蠱惑魅了スキルを解除し自由に動けるようになったリーゼは全裸で膜を叩きながら勇者に懇願する


「勇者様! ここから出して!」


「リーゼ! このクソ男め...よくも僕の妻をこんな姿に! 今すぐコイツを倒してそこから出してやるからな!」


「いやそれはダメだ、先にパトラの魅了を解け。さもないと...」


 リーゼを閉じ込めている泡が徐々に小さくなっていく。

 先程まで膝立ちだったリーゼは体勢を保てなくなり体育座りの状態になる


「こうして徐々に空間を縮めていくぞ...お前の愛する人がミートボールになりたくなかったら早くするんだな」


 リーゼはその間も膜を手で押したり叩くが伸びるだけでビクともせずどんどん小さくなっていく。

 その恐怖感からリーゼは泣きながら勇者に助けを求めた


「やだ...やめて...死にたくない! このっ...何で割れないの! うぐぅっ...助けてお願い...勇者様!」


「き...貴様ぁ...!」


 目の前の妻に対して何も出来ない勇者は顔に悔しさを滲ませる


「さぁどっちを取る? 俺は気が短いんだ...あと5秒以内に決断しないと殺す。5...4...3...」


「分かった...! 解除するから...やめてくれ...」


「やめて下さい・・・だろ? 勇者サマは敬語を親から教わらなかったか?」


「やめて...下さい...やります...」


「よく言えました。じゃあ早くやれ」


 勇者は身体を引きずってパトラに近づきテーブルに置いてあったナイフで自分の手首を切りパトラに血を飲ませる


「《魅了チャーム》解除...」


 パトラの瞳は虚な状態から光を取り戻し正気に返った


「あれ...パトラは...勇者に抱きついて...いやぁぁぁっ!」


「パトラ! 大丈夫だもう安心しろ...辛い思いさせたな」


 俺はパトラに駆け寄り強く抱きしめた


「こっちは守ったぞ...リーゼを解放してくれ...」


「お前と違って俺は律儀だからな、約束は守るよ」


 俺は指を鳴らしてリーゼを解放した。

 勇者はすぐさまリーゼの元に駆け寄る


「リーゼ! 酷い怪我だ...綺麗な顔もこんなになって...アイツがやったんだな...!」


「うん...でも何とか大丈夫。勇者様も酷い怪我を...後でエレナに治してもらおう。この鬼畜男め...絶対に許さないから!」


「鬼畜はアンタの旦那だろうが、お前は見てないかもしれないけどパトラに魅了かけて犯そうとしてたからね」


「別にそんな事構わないけど。それともう一つ...その減らず口もここまでよ。私たちの勝ちだから」


 リーゼと勇者が悪い笑みを浮かべる━━━





「《魅了チャーム》」


「うっ......あ...」


 パトラは再びスキルによって魅了され勇者の元へ向かう。

 その目は再び虚になっていたが勇者に抱かれていやらしい笑みを浮かべていた


「騙されてくれて助かったよ...ジュノ君は残酷なフリをしているが成りきれないのが弱点だな。そうそう、彼女に血を飲ませたのは解除の条件じゃない...次から唾液を解さずに発動できる呪文なんだよ。本当の解除条件は僕が自殺・・するかさっきやった通り僕の意思・・で解除させるしかないのさ」


「パトラ! テメェ嘘をついたのか...絶対に殺す...!」


「いいのかな? 僕を殺すと愛しのパトラも死ぬよ? ま...今日のところは勘弁してやるよ、君にリーゼの魅了が効かないことは分かったし。僕とリーゼを傷つけた罰に殺してやりたいが...この子を人質にして君にはモロンと一緒に四天王討伐を手伝ってもらわないといけないからね」


「...俺から何もかも奪いやがって...!」


「そりゃ君と違って僕は勇者だからね、事を成し遂げるには多少のわがままをさせてくれよ。それに僕は人のモノを奪うのが大好きなんだ...リーゼやこの可愛いパトラのような女性を雑魚の男からね」


「肩書きだけのクズのくせに...。村の人を使って実験を繰り返し戦力にしようとしていた分際で何を...」


「ああアレか? あそこは魅了を解除して記憶が残った女を都合よく処分出来るようエレナとリーゼに作らせたんだ。特にリーゼは魅了の影響か僕と思考回路が似てウキウキしてたよ。実験が成功すれば戦力にもなるし死ねば僕の罪も自然と消えて一石二鳥さ」


「そうか...お前が主導であの村を悲惨な事にしたのは間違い無いんだな!?」


「何度も聞くな、そう言ってるだろ。だがそれを事知ったところで君みたいに女に頼った雑魚はその女を僕に取られて指を咥える事しか出来ないんだよ。ではまた王宮で会おう、それと...モロンの身体は飽きたからお下がりさせてやる」


「畜生が...! 飽きたら捨てる...それはそこにいるリーゼもか?」


「彼女は簡単に捨てないさ。なにせ7年も前から目をつけていたからね。当時はまだ12歳くらいだったかな? あの頃から綺麗で可愛かったよ彼女は...熟成を待ってるうちにプロポーズされるって言うんで魅了を掛けてその男を彼女に殺させたんだ。そしてその男の魂を吸収して俺は少し強くなれたってわけ。しかし魅了を掛ける前の彼女は僕に襲われて愕然としてたな...しきりに男の名前を叫んでたが僕のスキルですぐに従順な女になったよ」


「このゴミクズロリコンが...お前は結局スキルがなければ惚れさせる事ができない臆病者だ...」


「はははっ...君みたいな負け犬が何を言っても悲しいモノだね、そもそも魅了に掛かる方が悪いんだよ。行こうか2人共、エレナに回復させて貰ってから長い夜を楽しもう...じゃあね無価値なジュノ君」


 勇者は勝ち誇った顔で俺を見下すと傷を負ったリーゼと魅了に掛けたパトラを連れて部屋を出た━━━


















「ふっ...」

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