第15話 赤髪の女
赤髪の女は少し驚いた表情で俺をまじまじと見つめる
「俺がその銀髪だけど...」
「まさか...虫も殺せなさそうな外見の君があのガイルを素手でバラバラにするなんて」
「この世の中...まさかってヤツがとんでもない本性隠してるもんなんだよパトラさん━━━」
「━━━ほう。聞きたいんだが我々勇兵団に手を出したのは人間ではお前が初めてなんだ。何故団員であるガイルに危害を加えた?」
「生憎俺はこの国に来たばかりでね、首からプラカードでもぶら下げてもらわないとソイツが何処のアイドル事務所に所属してるかなんて分からないよ」
「き...貴様バカにしているのか!? 勇兵団の名を侮辱するものは誰であろうと許されない...処刑を開始する」
「こっちも知り合いをアンタの連れに殺されて気が立ってるんだ。手短に終わらせてアンタに話してもらいたい事がある」
「聞ける耳が残ってれば良いがな。私の焔刀からは誰も逃れられない...一瞬で終わらせる━━━」
パトラが刀の柄を握り居合の構えをすると赤いオーラが浮かび上がる。
その光景はまるで体に炎を帯びているようだ。
恐らく火属性魔法の類いだろう━━━
「はぁぁぁっ!」
鍔と鞘の隙間から一瞬火花が散り、目にも止まらぬ抜刀で斬り掛かる━━━
「っ!」
「速いなぁ...そんなに急がなくても言ってくれたら背中のファスナー閉めてあげたのに」
「ふふ...初めてだ。斬ったと思った相手が私の後ろでニヤニヤしているのはっ! てぇぁぁぁっ!」
パトラは素早く体を回転させ、その勢いと火魔法を活かした威力で自身を更に加速させて俺に再度斬り掛かるが━━━
パシッ....
「悪いけどこんなところで遊んでる訳にはいかないんだ...」
「なっ...」
俺はパトラの刀を指で受け止めた
「そんなバカな...私の一撃を指で...」
つまんでいる指は魔法によって帯びた熱の影響で肉が焼ける音と蒸気を少し出していた
「さっきも言ったろ? まさかってヤツがとんでもない本性を隠してるって...!」
「くっ...このっ....!」
パトラは力を込めて俺の指を刀から剥がそうとするがピクリとも動かず額からは汗が滲んでいる。
俺は指にもう少し力を込める...
パキンッ━━━!
刀は真っ二つに折れて刃が地面に落下する。
その様子を間近で見ていたパトラは青ざめた顔で膝をついた
「嘘だ...私が...あの人以外に負けるなんて...嘘だ!」
「心も折れたところ悪いんだけど質問に答えてほしい。アンタの連れは何故旦那を刺したんだ?」
「それはわからない...私にもわからないんだ。あの子が何者であって何故刺したのかも....」
「それはどう言う事だ」
「彼女は内部の者に私の同行者として一緒に来ただけだ。そもそも今日が初対面で勇兵団内部でも見た事なくて...何故あの男を刺したのか全くわからないんだ」
「そうなのか? それともう一つ。女が纏っていた黒い靄はなんだ?」
「━━━黒い靄ってなんの事だ...?」
「見えてなかったのか? 刺す直前にどす黒い靄が彼女を纏っていたのを」
「そんなもの見えなかった。私は彼女の行動を注意深く見ていたんだ、間違いない」
だとしたらアレは一体なんなんだ━━━?
「質問は終わりか?......では殺せ。勇兵団に負けは許されない。負けを報告して内部の者に処断されるより君のような強者に殺された方が私も少しは浮かばれる━━━」
「分かった。じゃあさよならだ...」
俺は彼女の首目掛けて手刀を放つ━━━
「ママ...ごめんね...仇討てなかったよ...」
パトラは涙を流しながら目を閉じた━━━
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