第三話 領域魔術展開、魔獣を討て!
魔獣の出現、そして討伐のため派遣された騎士団からの応援要請を受け、ルーカス率いる特務部隊の団員は馬を駆り現場へと急行していた。
王国軍では任務の際、リンクベルで連絡を取り合うのが常であり今回も例外ではなかった。
リンクベルとは、マナで動くマナ機関と呼ばれる、魔術器の一種だ。
それに遠話をするための術式を施したものがリンクベルだった。
遠く離れた場所とタイムラグなく連絡を取れるため軍で重宝されている。
また
ルーカスは王都を出てすぐのところで、座標と状況の確認のため、自分の瞳の色と同じ
だが報告を聞く限り、状況は
攻撃魔術は一定の効果が認められるが、攻撃力と機動力の高さからリソースを防御障壁に回すしかなく、仮に攻撃魔術を撃てたとしても現状の騎士団の損耗状況から勝算は低いとの事だった。
騎士団も万全の状態で挑んだはず。
だと言うのに、魔獣の強さは想定を上回っていた。
(やはり、ここのところの魔獣の多さと強さは異常だ)
ルーカスは左腕に
腕を
腕輪はルーカスが持つ〝ある力〟を制御するための
(何があるかわからない。出来る備えはしておくべきだろう。だが——)
この力は無差別に振るえば
それはルーカスの過去が証明していた。
故に使用には制限が掛けられており、
(いや、迷うな。打てる手は打っておくべきだ)
力の行使には
そのために必要なのは——上層部の許可だ。
「ロベルト、上層部に第一限定解除の申請を」
「は! 念には念をですね」
ルーカスはすぐさまロベルトへ指示を飛ばした。
彼は特務部隊の副団長。
青みがかった緑色、
ルーカスの右腕であり、酷似した髪型をしているのは、ルーカスを
「団長、申請通りました。行使コードは——」
程なくしてリンクベルでの通信を終えたロベルトから許可が降りた事を告げられ、コードを確認して頷いた。
ルーカスは馬に加速の指示を出すと、
「もうすぐ報告のあった地点だ! 全員下馬、
ルーカスの掛け声で、団員達は馬の速度を徐々に落として停止、下馬した。
ルーカスを筆頭に団員達は陣形を整え、アイシャと数名の魔術師が索敵のための探知魔術を発動して、周囲を探りながら森の奥へと進んでいく。
少し進むと開けた場所に、戦闘の
木々が不自然に傷つき薙ぎ倒され、地面は
(——近い)
確信した一行は各々、
「反応、見つけました! 南東約
アイシャが発見の報告を告げる。
ルーカス達は抜剣——そして示された方向へと迷いなく駆けた。
ドゴオオオン!
と、遠くから
続け様に二度と三度と、地を割るような音が鳴り響き、土煙が上がった。
止まぬ音に焦る気持ちが
(まだ遠い——!)
『
焦るルーカスの耳に、ハーシェルの詠唱する声が届いた。
すぐさま術が発動してルーカスの身体は淡い若草色の風に包まれる。
〝
「団長! 先に行ってください!」
「助かる!」
強化術を受けた身体は軽く、まるで羽根の様だった。
踏み込む足に力を込め、思い切り蹴る。
——と、蹴り込んだ力が何倍にもなり、前進する力となって加速した。
黒髪を
早く速くもっと
急げ! あの場所へ!
そうして辿り着いた道の先で、ルーカスは吹き飛ばされた騎士達を見つけ、さらに先に崩れた前線と
近いようで一歩が遠く感じられる。
(くそ、間に合え!)
歯を食いしばり地を蹴って、そう思った瞬間だった。
「なんだ——!?」
あまりの
だが、増していく光の強さには勝てず、足を止めて
光の中から透き通るような、優しい歌声が聞こえる。
『慈愛の天使は舞い降りた
英雄は
七つの加護もつ
傷付きし者に慈愛を
迫る侵略者に盾を
大いなる癒やしと不可侵の守護の軌跡はここに
歌声に合わせマナが
やがて光は盾の形へと変化して
光が収まり始め、ルーカスは恐る恐る
七つに重なった円環が領域を形作り
展開した
だが、
騎士団員達の生存にルーカスは胸を
領域魔術は通常複数名の術者によって詠唱・展開される。
だが、今それを
マナが煌めく風に銀の髪を
たった一人でこれほどの術を長時間維持するのは、実力者でも
(あまり時間は掛けられない。一気に片を付ける——!)
ルーカスは自身の
そうして防壁の手前まで来ると、足の裏に力を込め踏み込んで飛び上がり、
「
『コード確認。第一限定、
解除コードを入力すると、腕輪の
ゆらめく輝きは、腕輪から手を伝って刀身へと宿り、ルーカスは落下のタイミングに合わせ両の手で刀を握り、刃を振り下ろす——。
ヒュンッと風切り音が鳴り、斬撃は
死角からの斬撃に、
しかしそれは
大した事はない——と、そう気付くや
「危ない!」
誰かの叫ぶ声が聞こえたが、ルーカスは
一方、
剛腕が持ち上がって振り下ろされ、
切り裂こうと迫っていた剛腕が、ルーカスが切り結んだ傷を起点に、
「グガアアァァ!!」
一体何が起きたのか理解出来た者はその場にはいないだろう。
ルーカスを除いて。
「確かに
(重力を乗せた一振りで擦り傷程度とは。
報告にあった通り、物理攻撃一辺倒では骨が折れただろうが、ルーカスの持つ力を持ってすれば
これまでの獲物とは違う気配に本能で危険を察したのか
(逃がすつもりはない)
ルーカスは
腕輪が再び赤い輝きを放つ。
「大人しく眠れ」
瞬時に
獣の体を追い抜いて切り抜けた。
抜刀術、居合・
カキン、と金属音を鳴らし刀を鞘に
と、タイミングを合わせた様に、切り結んだ
まるで内部から爆発したかのように、斬撃によるものではなく、
これはエターク王国の
ルーカスが生まれながらに授かった——あらゆる物を〝破壊〟する力だ。
こうしてルーカスの手により、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます