この不条理がクセになる。

いやなところをくすぐられて不愉快なのに、その気持ち悪さがかえって快感になってしまう。不条理劇にはそんな不思議な面白みがあると思うのですが、本作は存分にこの快感を味わうことができます。日常の中に突然異質なものが現れる不気味さとか、徹底的に噛み合わない会話とか、解決するどころかさらにこじれていく状況とか。
行間をあえて空けずに滔々と綴られているので、畳みかけるような力があり、個性的な語り口調がシュールさを増長しています。理不尽がキャパを超えると人は笑ってしまうのか、読んでいる間じゅう、「なんでそうなる?」とツボに入ってばかりでした。が、最後にはストンと落とされる展開が待っています。これはカタルシスなのか?
読み手によって色んな解釈ができるのも不条理劇の面白さ。ぜひこの世界を体験して想像を膨らませてください。