地獄の沙汰に金欠が挑む。


 目を開けると、そこは地獄の入り口にある船着き場だった。
 年齢詐称の奪衣婆(ロリ)に六文銭(現金以外も可)を求められるが、こんなときだけ金欠でまったく払えない。
 こうして、消滅へのタイムリミットまでに六文銭をかき集める、文字通り魂をかけた金策に走ることになった……



 あの世という暗そうな舞台に反して、軽快なテンポ、弾む会話、人情味あふれるキャラクター達。
 面白くも、終盤になるにつれて惜しいなと思う、あの感覚が短編で出てきます。

 この物語に満ちているユーモアと温かみは、敢えて言葉に表すのなら、
「大切にしたい」感覚であったり、「捨てたものじゃないな」と前を向ける感覚。
 用いられている言葉は現代のものであっても、伝わるものはきっと昔から脈々と受け継がれてきた「粋」なのだろうな、と。

 まったくの偶然でしたが、出会いに感謝したい作品でした。