4:日曜日それは平日に戻る時間

 朝も早く東京であればまだ、太陽が低い時間帯。北海道は北部のためか、多少太陽が高い位置にある。

 今回の目的でもある抜海バッカイに行くために、早朝に起きて出発する。

 宿屋のおかみさんが優しく、特別な早朝送迎に加えておにぎりまで用意してくれた。

 豊富駅の始発下り列車は7時18発の稚内行きに乗るため、7時少し前に出て7キロの道を送迎してもらう。都内とは違い、駅直前まで信号もなく北海道らしい直線道路を進んでいく。

 何事もなく、駅に到着して列車に乗り込み、車内でおにぎりをほおばる。具は梅干しと利尻昆布の2つだった。

 車窓の森や壮大な牧草地帯、兜沼を眺めつつおにぎりを楽しむ。これも列車旅の醍醐味であり、このゆったりとした雰囲気がいいのである。

 30分程度列車に揺られて抜海駅に列車が到着をして下車をする。

 日本最北端の無人駅の抜海駅に到着した。これも作成中の本に掲載をしたい情報の一つである。


 7時30分に自然と目を覚ます。

 昨日はバーベキューを4人で食べて今日は帰るだけだからとしこたま飲んだのを思い出した。

 長野県白馬村から東京都東部へ日中に帰るので、8時に出発まで決めていた。

 目覚まし時計が鳴る前で、どれだけ早起きしたのか気になり時計を見ると7時30分を指していた。

 目覚まし時計代わりのスマートフォンはアラームを鳴らすという仕事をしたが応答がなかった旨の通知が画面にポップアップ表示されていた。

 青ざめながらも慌ててスーツケースから寝間着と今日のための私服を入れ替えて準備をする。

 昨日まで使用していたコスプレ衣装たちは軽くケアをして、昨日の晩に仕舞っていたので心配不要であった。

 持ってきていた常備用固形食品を口の中に入れて、別荘の玄関に向かい、何事もなく車に乗り込んで発車する。

 ぎりぎりの到着である。明日も全員が休みであればもっとゆっくりできたと思いつつ、同行の表参道系女子の別荘を後にする。


 目覚めた。

 この世の中で来るまでは欲しいがいざ来てみると一番悲しい気分になる日曜日である。

 朝起きて、歯を磨きつつしっかりと鏡で自分の顔を確認する。

 昨日までのファンデーションやマスカラが残っていないかを入念にチェックをするのである。特にアイラインはしっかりと洗顔したつもりでも目頭に残っていることも多い。

 特段、残っている様子もないので安心して歯磨きを終えて、簡単に洗顔をする。

 そのまま、パソコンを広げて最新の洋服と化粧品をチェックする。気になるものがあればマークして検討に入る。

 SNSを見ていると実店舗にちゃんと身なりを整えていく人もいるらしいが、女性声を出すことができないため、話しかけられると終わってしまうのでネット通販でかつ置き配で済ませることが大半である。


 抜海駅周辺には広大な草原と海が広がっている。海からは遠くに利尻島と礼文島が見える秘境だ。

 大学生活の喧騒を忘れてのんびりと草原越しに海を眺めつつ写真を撮影し、次回の出版に向けて準備をする。趣味を小遣い稼ぎにしているので特に苦ではない。

 アマチュアならではの特権である。

 到着をしてから4時間後の普通列車で稚内に向かうのであるが、その間に反対方向に向かう普通列車があるので、抜海駅の雰囲気を取り入れつつ撮影をする。

 ことあるごとに廃止の噂が絶えない駅であることは間違いなく、そういった記録のためにも鉄道写真好きの好まないアングルであっても撮影をしておきたいと思っている。

 何事もなく、列車を撮影して見送り、あたりは再び風が草原の草花をなでる音だけが響くようになった。


 かわいらしいワンピースを見つけて一人でキュンキュンしていたがサイズが合わないことにショックを受けた昼前。

 メンズの服であればほとんどにおいてどんな体形でも問題ないケースが多いが、レディースであるとブランドによってターゲットとしている身長や体形があるらしく合わないことがほとんどである。

 考えても仕方ないので昼食のために米を炊飯器にセットをする。

 そして、昼食後にすぐに洗濯物を干せるように洗濯機に木曜日と金曜日に来ていたワイシャツと金曜日夜と昨日来ていた服を入れる。

 昼食は簡単に、レトルトのサバの味噌煮で簡単に済ませる。

 洗濯も終わり、いつも通り外に干そうかと思い洗濯物を取り出し、今回はレディースものがあるのを思い出して部屋干しに切り替える。

 過去に、外に干した結果、レディースものを隠して干していたがきれいに下着だけ持っていかれたことがあり、ただの恐怖感にやられたため、部屋干しを原則としている。


 長野県白馬から車を走らせて途中で渋滞に嵌ったが、昼前には東部湯の丸サービスエリアに到着をし、昼食とする。

 ここまで来れば東京もすぐそこで、当初の予定通り夕方には帰れるであろう。

 せっかくなので道中の長野や群馬で高速道路を途中で降りて観光をしたいところではあるが、早く帰ってコスプレ衣装を洗濯したいという3人の意見が一致したため、基本的には速く帰宅をして洗濯にいそしむのが通例である。

 衣類というものは不思議なもので、洗濯をしてもその服についた臭いは消えないケースも多くある。だからこそ、早く洗ってに臭いが残ってしまうのを阻止しなければならない。

 ただ、ときどき一人でコスプレをするだけならその時に我慢すればいいのかもしれないが、イベントなどでも着るためにそういった配慮も必要だ。

 何なら、キャラクターによってはそのキャラクターがしていそうなコロンもつけたりすることもある。なおのこと、衣類に臭いが残るのは阻止しなければならないのである。


 抜海駅を11時48分に出発する普通列車に乗り込み稚内へ。

 再びの稚内で今度は海鮮料理のお店へ向かう。

 初夏とはいえ北海道の海の恵みはおいしいのは変わらないため、おいしくいただく。キラキラと脂ののったおいしい刺身に舌鼓を打ち昼食を楽しむ。

 そうこうしているうちに稚内空港行きのリムジンバスの時刻となる。

 今回は、作成中の本で特集する路線の豊富温泉と抜海駅に行けたので満足である。これにて3年前からコツコツと旭川から北上した沿線の様子をまとめることができそうである。

 5月に取材が終わり、来月には原稿を仕上げて7月に脱稿ということで、印刷特急料金を印刷屋に支払うことなく夏のイベントを迎えられそうなことに僕は安心をして、稚内空港から直行の羽田空港行きに15時頃に乗り込みお昼寝を楽しむことにした。


 夕方に帰着をして洗濯物を行う。

 長野から全力で車を走らせてもらい、帰宅をしてからすぐにコスプレ衣装を入れて洗濯機を回して、ウィッグをたらいに入れてからシャンプーとリンスで洗い乾燥させる。

 ウィッグで注意したいのが乾燥方法だ。

 ついうっかりドライヤーを使ってしまいたくなるだろうが、実はお勧めできない。

 種類にもよるが大半が急激な温風で水分が奪われウィッグがチリチリになってしまうケースが散見される。

 ウィッグの手入れをしていると洗濯機が止まったので干すことにするが、時間も時間であるため、部屋干しで我慢をする。

 夜に外干しをすると一階であるため、虫たちが卵を産み付けてしまうことがあるとスマートフォンのコラム欄で見たことがあるためだ。


 ひと眠りを終えて羽田空港から自宅に帰宅をする。

 玄関を前にしてカギを探していると左右の換気扇からちょっとずつスパイシーさの違うカレーの香りがしてきた。

 僕も今日はレトルトのカレーとレンジで簡単にできるご飯でカレーライスにしようと思う。


〇△◇

 コーポ・キュー・トランの入居者がいる3部屋はそれぞれの明日に備えて電気が消えた。

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