(二)-12

 侍の着物に切れ目が入った。それを見て、着物を斬られた侍は、血が出たわけでもないのに、叫び声を上げた。

 その叫び声に混じって「覚悟!」という声を聞いた。二見はどこから聞こえたかわからなかった。

 大島中佐も同様で、首を左右に振って次の敵がどこから来るかを確認しようとした。

 すると二見の脇をサッと通り抜ける人影があった。次の瞬間、その人影は大島中佐の背中から刀を突き刺していた。

 「貴様ぁ!」と大声を上げて中佐は自分を刺した相手を見た。刀は胸を貫いていた。


(続く)

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