【番外編】冥土 有栖のお料理教室

年末年始のこの時期。

皆様はいかがお過ごしでしょうか。

家族や恋人、友人といった大切な人たちと、ゆっくりお過ごしになっている方も多いでしょう。

家でのんびりコタツに入ってみかんを食べていたり、遊園地に出かけたり。

あるいは初詣や親戚の家に顔を出してみたりと、普段とは違う日常を過ごしているのかもしれません。


今日は12月31日。

ご主人様の専属メイドである私はご主人様のご自宅に上がらせていただいております。

ご主人様と年の瀬を共に過ごさせていただく……なんて素敵なことでしょう。


時刻は17時20分。

ご主人様はご自宅の炬燵に入って就寝中でございます。

素敵な寝顔。

永久保存してしまいたい。

そんな欲望を抑えつつ、私はキッチンにて料理を始めます。

ご主人様は出前で良いと仰られていましたが、メイドとしては他所の人間が調理した物など信用ありません。

それに、ご主人様も私を気遣っての言葉でしょう。

心配には及びません。

最高の料理を振る舞わせていただきます。




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【季節の天ぷら】

冬の時期にピッタリの天ぷらです。

材料はじゃがいも、さつまいも、海老などが一般的です。

また、お好みで衣には小麦粉や片栗粉、卵白などを混ぜることができます。

揚げる前にしっかりと冷やしておくと、サクッとした食感が楽しめます。


以上が基本的な天ぷらの材料です。他にもお好みで調味料や具材を加え、アレンジすることもできます。

また、食材の選択や調理方法によっても様々なバリエーションが可能です。


【手順】

1. じゃがいもとさつまいもの下処理をします。皮をむき、食べやすい大きさに切ります。


2. 切ったじゃがいもとさつまいもの水気を切り、適切なサイズにカットします。また、海老は背わたを取り除いておきます。


3. 鍋やフライパンに適量の油を入れ、中火で温めます。


4. 2の食材をお玉などで軽く混ぜ合わせます。


5. 3の食材を揚げる網の上に並べます。


6. 片面にしっかり焼き色がつくまで、2〜3分ずつ揚げていきます。


7. 中火で温めた油から一度取り出し、裏返して同様に2〜3分ずつ揚げます。


8. 衣がきつね色になり、表面がカラリとした天ぷらの状態になったら完成です。


9. お好みで塩や酢などをつけてお召し上がり下さい。




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「まあ、上出来ですね。」


我ながら良いものが出来ました。

天ぷらの他にも様々な料理を調理しないといけないので、さっさと手を動かしましょう。


「あ、大事なことを忘れていました。」


最後の食材の準備をするために鞄に仕舞っていた肉切り包丁を使います。

タオルを口に咥えて……。

それっ——————————




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「ん……良い匂いがしますね……。」


いつの間にか炬燵の中で寝ていた坂田はパッと目を覚ます。


「ご主人様。おはようございます。」

「おはよう……って、これは……。」


坂田はテーブルに広げられた料理を見て目を見開く。


「有栖が作ってくれたのですか?」

「はい。特製料理フルコースでございます。」


有栖の言葉通り、テーブルには天ぷらや肉料理等のメニューが並んでいる


「美味しそうですね。ありがとうございます。」


そう言って坂田は天ぷらを口にする。


「お、海老の天ぷらですね。美味しいです。」

「ふふっ。ありがとうございます。」


坂田が笑顔で料理を食べていく姿を見て有栖も微笑む。


「これは……”肉”の天ぷらですか?」

「はい。珍しいとは思いますが、新鮮な肉を揚げました。」

「へぇ……。」


坂田は肉の天ぷらを口にする。

その瞬間、有栖の顔が狂気に包まれた気がした。


「うん。美味しいです。流石ですね。」

「ありがとうございます。」


ふと、坂田は違和感を感じ、周りを見渡す。


「……なんか血生臭くないですか?」

「そうでしょうか?”新鮮な肉”を調理したからでしょうか?」

「ああ、多分それですかね。まあ、別にそこまで気にならないです。」

「そうですか。それは良かったです。」


坂田の言葉を聞いて有栖は立ち上がる。


「先にキッチンの清掃をしてきます。」

「ん?そうですか。わかりました。」


彼女は坂田に言葉を残し。キッチンへと歩き出した。




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「変に勘付かれる前に洗っておきましょうか。」


有栖はキッチンに置いていた肉切り包丁を洗い始める。

キッチンのシンクは赤い液体で染められていた。

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