天使戦線

言乃葉

序の壱

第1話




 僕は疲れている。身も心も、昨日も今日もおそらく明日も。


 今日も今日とて日々の労働を終えて社宅扱いのアパートに帰宅した。長時間の立ち仕事で全身に疲労を感じ、単純労働で心も疲れている。家具備え付けの狭いアパートの一室に私物は少ない。視覚的に寒々しく見える室内も疲労感を倍加させる風景だ。

 重く白いため息を吐きながら、無言で部屋に入る。季節は冬。気候的にも寒いのに心情的にも寒々しく、エアコンを稼働させても暖かくなった気がしない。そういえば「ただいま」などという言葉を最後に言ったのは何時だろう? まあいい、思い出す気も起きない。

 手に持っているのは帰りに寄ったスーパーで買ったパック寿司(半額値引きされた物)と焼き鳥が10本(同じく半額値引き)、そして缶チューハイと発泡酒が詰まったレジ袋。これでも普段よりは豪勢な食事内容だ。

 今日は給料日であり、僕の27歳の記念すべき誕生日だ。自分だけのハレの日に少しばかり奮発した次第である。


 備え付けの折りたたみの机の上に買ってきた物を広げ、ほどほどに暖かくなってきた部屋の中で軽く「ハッピーバースデー、トゥーミー」と呟いて食べ始める。パック寿司をぱくついて発泡酒で喉を潤す。貧乏人で貧乏舌な僕にとって本物のビールや本式の寿司屋のありがたみなんか分かりようもなく、こんな物で満足してしまう。色々な意味でお安い舌を持っている訳だ。

 傍から見れば独り身の男の寂しい食事風景なのだろうが、僕自身にとっては当たり前の風景になり過ぎて何も感慨が湧かない。

 風呂には入っていない。体を洗うのは朝起きてからシャワーでやるのが習慣化しているからだ。そういえば最後に湯船にゆっくりと浸かったのは何年前か、これも思い出せない。

 程なくパック寿司は無くなった。最後に食べたイクラの軍艦巻きのノリがやけに湿気った食感だった以外は印象に残らない味だった。次に焼き鳥を備え付けの電子レンジで温め、これを缶チューハイと一緒に食べれば今日の誕生日会は終了だ。


 食事を始める前に電源をつけていた備え付けの液晶テレビには夜のニュース番組が映されている。それを見ながら僕は焼き鳥の串の中から軟骨を選んで食いついた。コリコリとした食感だけが印象に残り、そこに缶チューハイを流し込む。

 今は夜の八時を少し回ったところ。この時間のチャンネルはNHKと決めている。民放のバライティー番組には一切興味が持てず、笑いどころ不明なお笑い芸人のネタを見ても苛立つだけなので多少は有意義なニュース番組を見ると決めていた。

 中東での紛争、株価、国内で誰かが殺された、政治家の不祥事、もはやテンプレートじみた内容に感じられる。悲劇、惨劇、そして少々の喜劇。きっと百年後のニュース番組でも似たような内容が報じられるのだろう。

 幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う、という言葉を残したのは誰だったか? 僕としては不幸も大概ワンパターンだと思う。所詮幸福も不幸も人の成す事で、パターンなんて人の考えられる範囲を出ないからだ。

 人類滅ぶまで幸福と不幸はテンプレート化して繰り返すのではないか? アメリカのどこぞの町であった銃乱射事件のニュースをBGMに最後に残った鶏皮にかじりついてチューハイをあおり、そんな斜に構えた考えを浮かべた。


 今日が誕生日だからか、色々と余計な考えが浮かんでしまう。アルコールで鈍化したはずの頭は普段考えないことまで考えてしまう。いや、これはアルコールでタガが緩んだのだろう。

 今日は給料日だが、明細書に記された金額は働き始めた時と何ら変わらない。派遣社員の僕には昇給も賞与もなく、数年で職場が変わるから技術も身につかない。職場が変われば住まいも変わるので私物はいつも少ない。一応技能に関わる幾つかの資格を取得したけど、経験を積む場がないため資格の大半は腐っている。今の仕事だって自動車部品工場のライン工で、修めた資格を活かす機会なんてほとんど無い。これでは資格を取るために投じた金と時間が無駄になってしまう。

 正社員としての就職も考えた。が、責任ある立場や正社員としての人のしがらみ、時間の拘束が大嫌いな僕にとって就職する気力がすぐに萎えてしまった。ファッ○ユー、ブラック企業。

 こんな僕に貯金は当然あるはずもなく、銀行口座に十数万とお寒い限りだ。大きな怪我や病気になると一発でアウトである。借金が無いことだけが唯一の救いか。

 こんな風に浮かんでくる考えはほとんどが将来への不安だ。これも良くあるパターン化した不幸のひとつだろう。


 両親や兄弟はいないため、正真正銘天涯孤独、学生時代から友人と呼べる人もいない。客観的に見るとかなり寂しい奴と思える。だけど主観としてはそれなりに楽しくやっていると言えるかもしれない。

 考えてみようか。老いて痴呆になった両親を介護する必要はないし、兄弟姉妹が何か馬鹿をやって尻ぬぐいする必要もないし、友人が友情を盾に何かを強要してくる事もないのだ。非常に身軽な立場、気楽な立場にいるのが今の僕だ。

 上記に加えて、僕は現実リアルの女性には性欲が湧かず、興味もないリアル女性限定の絶食系男子でもある。性欲なんて右手と二次嫁がいれば充分に処理できており、風俗に金をかける必要もなく経済的だ。大昔の哲学者が言っていた様に食欲もこの位経済的に済めばどんなに良かっただろう。

 心配なのはやはり老後、もしくは万が一の事故や病気だ。ある程度金銭が無いととてもではないが暮らしていけないのがこの国の現状である。


「何につけても、金、金、金だな……」


 帰宅後のまともな第一声がこれだ。まあ、実際人の世の真理でもある。人類が貨幣制度を作って以降、金がなければ何も出来ない風になっていったのが人の社会なのだから。

 世の中お金じゃない、などと言う輩がいるが、そういう人に限って金にうるさかったり、がめつかったりする。これはアレか、お金じゃないと言って他人の気を逸らして自分は金に飛びつく作戦だろうか。僕はそう思ってしまう。

 ああ、金と言えば今日は先日買った宝くじの抽選日だった。それを思い出して、数少ない私物のスマートホンを手に取ってブラウザを起動、宝くじの当選番号が掲載されたページを見る。

 結果は……当たり前の様に外れ。一等の6億円はどこかにいる豪運の持ち主の物になった。あやかりたいものだ。

 宝くじで大金を手にすると人生が変わると聞くが、僕としては是非とも変えたい。大金を手しても親兄弟がいないので配慮する必要はなく、親しい友人なんていないので友人を名乗る奴がいても無視すればいい。親戚も以下同文だ。大金で人生を壊す人間関係は無い。安定した生活、悠々自適、時間の全てを自分のためだけに使える薔薇色の生活が送れることだろう。

 ――分かっている、所詮夢想だ。宝くじの当選確率は知っている。天文学的な確率だ。それでも買わないとやっていられない。僕にとってこれはもう一種の精神安定剤になっている。宝くじが当たった時を夢見て日々の単純労働の支えにするのが今の僕だ。

 我ながら非常に薄っぺらい人生を送っている。そしてそれに居心地の良さを感じているのが救いようもない。


「とにかく金さえあれば、って思える辺り本当に薄いな。ま、分厚かろうが薄っぺらだろうがどうでも良いか」


 焼き鳥を食べ尽くし、缶チューハイを飲み終え、これで僕の27歳の誕生会は終了。アルコールが入って頭がフラフラと左右に揺れるのが心地よい。安酒で酔って安い食事で腹を満たし、その内に体を壊して安い病院で最期を迎えて人生終了ジ・エンド。ジャンクにも等しい食事は寿命もエコノミークラスにしてくれる経済的な食べ物です。

 明日は休日なので思う存分惰眠を貪るつもりで万年床になった布団に潜り込む。こうやって眠りに逃避して現実から目を逸らす。そうでもしないとやっていけないから。いつか逃避のための眠りが永眠になる時が来るまで僕はこうしているだろう。

 あ、歯磨きを忘れた。一応の健康維持としてやっている習慣を思い出して布団から起き上がる。このタイミングで枕元に置いていたスマートホンが鳴る。メール着信を知らせる音パターンだ。

 メールをやり取りする友人は居ないし、派遣会社の人間は通話で伝達事項を伝えてくる。ネット通販で買い物もしていないので、やって来るメールはもっぱらアプリの宣伝メールぐらいだ。それでも一応内容を確認しないと落ち着かないので、歯を磨きながらスマートホンの画面をタッチした。


「にしても、こんな時間にメール送ってくるなよクソが」


 時刻は午後11時を回っている。よほど親しくないとメールでも嫌がられる時間帯だ。現に僕は悪態を吐いている。寝る直前だったから良かったものの、寝しなだったら最悪だ。変に目が覚めて寝付くまでが大変になる。

 それで、こんな時間に送信してくるメールはどんな内容なのだ。余りにも下らない内容だったら発信元にウイルス入りのメールを送ってやる。などと、やれもしない事をアルコール入りの頭で思いつつメールを開封した。


 『~Angel War エンジェル・ウォー~その身を天使へと変え、戦え! 全く新しい戦いがここにある! 選ばれた者達よ、武器を手に取るのだ!』


 勇ましい煽り文句が画面の中で踊り出して、見栄えするよう装飾されたタイトルロゴが大きく表示される。どうやらゲームアプリの宣伝みたいだ。この手のゲームによくあるパターンとして基本無料で、課金をすることでより楽しめるという搾取システムが構築されている。ハマったら最後、毎月の請求書に怯える日々がプレゼントされる寸法だ。

 もっとも、ハマる程に面白いゲームはそうあるものではなく、この手のネットゲームは次から次へと新しいものが出ては消えていく。何年も続けられるゲームなど一握りで、後は数年でサービス終了で忘れ去られるのが大抵だ。

 このエンジェル・ウォーなるゲームもそういったものの一つなんだろう。何せこうして目にするまで名前も知らなかったゲームだ。宣伝もロクに出来なかったと考えられる。この宣伝のメールだって煽り文句や装飾されたタイトルロゴ以外はCGもゲーム内容を表示するスチールさえないシンプルさだ。予算が無いと思われても仕方ないだろう。

 僕は世間に対するアンテナはそれほど高くはないと自覚しているが、興味があったり、趣味の方向であったらかなり感度は高いほうだ。こういったゲームも興味の対象なのでよく知られるブラウザゲームやソシャゲについては知っていたし、新作のゲームの宣伝には一度は目を通しておく。ああ、断っておくがゲームのプレイについてはまた別だ。課金しようにも自由に使える金がないので、眺めているだけなのだ。本当に貧乏は嫌なものだ。

 こんな僕が知らないアプリゲームとなれば、新作だと思うし、ロクに宣伝が出来てないなら予算がないのだと考える。内容を良く読むまでもない。このゲームは配信開始から数年もしない内にサービス終了する泡沫ゲームだろう。さっさとメールを削除して寝てしまうのが吉だ。


「……少しやってみようか?」


 ここまで散々否定的な考えが浮かんでいたはずなのに、最終的な結論はなぜか正反対だった。

 論理的な理由は分からない。アルコールで脳がいい感じにふやけていたせいか、今後の暗い将来を考え過ぎて気分転換を欲したのか、こんな時間にメールを出してくるゲームに変な興味が湧いてしまったのか、あるいはこれら全部か。いずれにせよ、僕の指はこの『Angel War』をダウンロードするパネルをタッチしていた。


『ダウンロードを開始します。今後貴方の人生が大きく変わってしまいますが、それでもよろしいでしょうか? キャンセル/OK』


 こんな内容が画面に表示された。ダウンロードを開始するかの可否を問う内容だけど文面がかなり大げさだ。ゲームの雰囲気を盛り上げるためのフレイバーと思うけど、この「大きく変わってしまう」というくだりに僕は心が惹かれた。

 さっきも思ったけど、こんな閉塞感すら感じる人生なら匠の技レベルに劇的ビフォーアフターが起きて欲しいと思っている。それでもよろしいでしょうか? ああ、多いに結構だとも。変えられるものなら変えてみせてくれ、少なくともこんなロクでもない薄っぺらな人生よりはマシだろう。

 酔った頭でそんな考えを浮かべながら『OK』のパネルにタッチした。


 ――変化はそれこそ劇的だった。


「――っ!」


 スマートホンの液晶画面が真っ白に漂白された。真っ白な光が眼を焼く。同時に意識も白く漂白されて、遠のき、考えることもできなく――


 ――――――――――――――――――――。


 ――――――――――――――――――。


 ――――――――――――――――。


「――は! 一体何が!?」


 考える事ができなくなったかと思えば、急速に意識がクリアになって戻った。

 さっきまであったはずの酔いは頭から消え失せて、ふらついていた足はしっかりと床に着いている。左手には歯ブラシ、右手にはスマートホンどちらも落とさずに持っていた。

 スマートホン、と思い出して画面を見る。見るけど、そこにあるのは白い画面ではなくいつもと何ら変わらない自分のスマートホンだった。表示されている時刻を見てもさっきから一分も経っていないと分かる。

 ならさっき僕が見たのは夢か幻覚か、そうだとしたら医者にいかないと駄目だろうか? だとすれば給料日だというのに医療費で頭を悩ませることになる。精神科か脳神経外科か、いずれにせよ面倒な話になりそうだ。

 面倒だからこのまま放置して、病が進行して死んでしまうのもアリかもしれない。エコノミーな寿命の僕はここでおしまいです、といった具合だ。シニカルでニヒルな考えを弄びながら歯磨きを終わらせる。


 何故か酔いが急に醒めてしまったが、寝るのに不足はない。どうせさっきのはスマートホンの不調か、酔っぱらってあらぬ幻覚でも見たせいか、本当に精神か頭の病気だろう。そのどれであっても僕は対処できない。対処するための金が無い貧乏人には放置しか手が無いのだ。

 口を濯いで水を吐く。あれ、そういえばと不思議に思う。歯磨きを再開したときに歯を磨くのがやけに簡単になった気がした。僕の歯並びは悪い方で、八重歯がいくつかあってかみ合わせが悪く、上手く上と下の顎を合せられないくらいだ。当然歯を磨くときはブラシを縦にしたり横にしたりと面倒臭くなる。それが今日はどうしたことかやけに簡単に終わった気がした。

 思わず指で歯をなぞれば、手に返ってくる感触は綺麗に並んだ歯の手応えだ。歯の矯正に行った覚えはないし、そんな金は無い。さらに指は歯以外にも口周りを撫でる。どんなに剃っても残るヒゲの感触が無く、ツルツルでスベスベの肌の感触がした。

 視界に黒いカーテンがかかったので指で摘む。髪だ。しかも自分の頭から生えているのか、引っ張ると頭皮に感触がある。床屋代節約ためにここ十年散髪は自分でやっている。最後に髪を切ったのは三日前で、今もゴミ箱には切った髪が捨ててある。前髪が目にかかるほど伸びているはずがない。

 背筋がざわつく。背中から首筋にかけて悪寒が奔る。何かが決定的に変わってしまった予感がする。


 口を濯いだ流し台の正面には私物の手鏡がかけてある。ヒゲを剃るとき以外に使わず、ロクに磨きもしないせいで水垢だらけの鏡だ。

 そこに映った僕の顔は見知った僕の顔ではなくなっていた。

 ここまで言えばもう分かるだろう。古くから創作物で使い回されてきた『変身』が己の身に起きてしまったのだ。オオカミに変身する、竜に変身する、コウモリに変身する、猫に変身する、巨大な虫に変身したというのもあったな。古今東西、創作物において人は様々なものに変身してきた。そこに込められたメッセージやテーマ、寓意などは色々だけど、今も絶えず取り上げられている話題だ。

 そして僕の場合は幸か不幸か動物や虫ではなく、可憐な幼い少女に変身していた。


「これは一体……」


 口から独り言が漏れる。その声も聞き慣れた僕のものではなくなっていた。

 無意識に手を見ていた。見えるのは労働と幾らかの怪我を経て早くも節くれ始めた男の手ではなく、小ぶりで瑞々しく張りのある肌をした手だ。手から腕に視線を移せば、着ているジャージの袖と裾が余っていると今更ながら気付いた。比較物がなくて分かり難かったがどうやら体も縮んだらしい。

 頭は意外なことだが冷静でいられた。混乱していたオツムが一巡して冷静になったとも言える。水垢にまみれた鏡の中では女の子が、幼い見た目に反して怜悧な目つきでこちらを見詰め返していた。

 もう一度僕は自分の頭がおかしくなったかと疑い、それでは話が進まないのを悟るとこうなった原因に考えが及んだ。

 まだ手に持っていたスマートホン。これしか原因と思える物はない。節電モードに入って光の消えた液晶画面。その滑らかな面が鏡になってそこにも可憐な少女の顔がアップで映る。


 急に手に持っているスマートホンが得体の知れない異界の物品のように思えてきた。画面から急に手が出てきて僕の顔面を掴んできそうな妄想が頭をよぎる。

 今すぐにこれを手放して金欠覚悟で新しい物に買い換えるプランも頭から出てきた。でも原因はこのスマートホンにある。購入して二年目、先月で分割支払いしていた本体代金を払い終えたばかりのコレに原因があるなら手放すプランは無しだ。愛着だってそれなりに湧いている。

 電源スイッチを押して、画面に光が灯れば見慣れたロック画面。壁紙にしている二次元嫁が僕に微笑みを向けている見慣れた画面だ。

 パターンを入力してメイン画面に移る。僕が好きなキャラクターの壁紙の上にアイコンが浮かぶ何時もの画面。さっきの出来事はやっぱり夢幻だったと言わんばかりに不審な部分は無い。


 ――いや、訂正。あったよ不審な箇所が。


「『Angel War』……夢じゃなかったのか」


 いつものスマートホンの画面上に紛れるようにそのアイコンはあった。天使の羽根をイメージしたのか、白い羽根がデフォルメされてアイコンになっており、その下に『Angel War』の文字が表記されている。当然こんなアイコンは見たことは無い。


 今こうなっている原因を知るにはコレしかない。僕はすっかり様変わりした細い指を伸ばしてそのアイコンをタッチした。


 ところで、この時の僕の気持ちはというと、混乱と戸惑いと喜びが胸の内側から湧き上がっていた。喜びだ。何しろ本当にとてつもない変化が起こっているのだ。これが酔った自分が見ている夢や幻ではありませんようにと信仰していない神にさえ祈ってしまうほどだ。息苦しい日常が終わり、何か途方もない何かが始まる。そんな予感をうっすらと感じて恐れと一緒に期待が込み上げてきている。

 正直に言おう。この時の僕は混乱し戸惑っていると同時にワクワクしていた。スマートホンにタッチする直前、何気なく視線を上げてみると鏡に映った美しい少女の口元がつり上がっていた。


 この瞬間より僕の新しい日常が始まった。



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