第5章―少女と着物―

「これは日本の伝統服で着物と呼ばれる服なんだ。お嬢ちゃんは着物を見るのが初めてかい?」


 「ええ、初めて見るわ。こんな綺麗な服があるなんて知らなかったわ。とても素敵なお洋服ね!」


 私はおじさんに見せられた服に興味を抱いた。


「ねえ、この服はどうやって着るの? この素敵な服はおじ様が作ったの?」


 「ああ、そうだよ。私が作ったんだ。私は着物職人で、日本から来たんだ。外国に住む日本人の為に着物を作りに来たんだが、なかなか雇い主がみつからなくてね。おじさんは今、困っている所なんだよ。このままでは生活も出来なくなるからいずれは日本に帰らなくてはならないんだ……」


「まあ、そうなの。おじ様も大変なのね……」


 おじさんと親しげに話していると、お義父様が話しかけてきた。


「さっきから何を話しているんだ瞳子?」


「ええ、実は……」


お義父様は日本語がわからない。私はそこで彼の代わりに事情を話した。

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