家を追い出されたヤンキー女子、資産家の次男と結婚する。

長尾水香

第1話 運命の出会い

 私は、成川水火(なりかわすいか)。家族に家を追い出されて高校に通えなくなった元ヤンキー女子高生のホームレス。


 私は勉学に励む家庭で生まれた。小学生の時は100点満点と成績が良かったんだけど、中学になった時に、100点を取れなくなって、やがて母親にも罵倒された。


「どういうことなのいつもいつも! こんな点数ばっかりで」


「……うるさいな!」


「何なのその口は、教育し直しね! もう外にも出ない事ね。まだ月(つき)がかあいいわね」


 私は中学で成績を残せないと母親に反抗するようになった。反抗期ってやつらしくてその時の私は自覚してなかったみたい。でも両親からしてみればそれは親に対する反発としか認識されなかったようで私はダメな人、いや、人間以下らしかった。


 それに対して私の妹の月は溺愛されていた。


 見た目も可愛さも勉強も私以上に出来るし、既に中学の問題だって出来る。


 そんなもんだから私よりも月が溺愛されるのは当然の事だった。


 そんな家庭にいれば、いつかは両親から見下され、月も私を見下し暴力を振るわれる。


 だから私は、自分の身を守るという意味でヤンキーとなった。


 家にはあんまり帰らないし、いつだって悪仲間とつるむ。悪仲間である子達はみんな私が見たことない派手なファッションをしているものだから、私も真似をする。


 ヤンキー女の悪仲間Aさんは派手な制服でヤンキーファッションを披露する。


「どーよこれ? 似合っているでしょ?」


「うん……そういうのかわいいかな?」


「かわいいって、水火にも似合うんじゃない?」


「やってみる……」


 私は口数が少ないが内気ではない。意外と喧嘩をするタイプ。むしろそんな感じじゃなきゃ両親に反抗などしない。


 それに、両親は勉学だけでではなく、様々な習い事を私に強制していた。


 その中に空手があった。


 空手は好きだったし、ヤンキーになるまでは好んでやっていた。しかし、ヤンキーになってこの空手で学んだことを私は悪用してしまう。


 絡んでくる男を容赦なく殴り、喧嘩を売られれば当然買う。


 負けることもあったが、そこは悪仲間Aさんに支えられてより良い生活を送っている。


 しかし、そんな悪仲間Aさんと別れの時が来た。その別れは、私だけ最悪な形だった。


 私が高校に進学した時。その高校は偏差値が低いためだったのか、両親が絡んできた。


 しかも、暴力では私に敵わないと思ったのか、厄介なことに用心棒を頼んでいた。


 奴らは、私を徹底的にいたぶろうと考えていた。


「お前ら! どういうつもりだよ! これは⁉」


 すると母親が言い返す。


「あんたはもう娘じゃない。社会のゴミよ」


 そして父親が……。


「何のために育てたのやら」


 そして妹。


「こんなのを姉だと思うなんていやねえ。さっさと消えて」


 嫌な笑みで私に聞きたくもない汚物のような言葉を吐き散らす。


 私は用心棒に殴られたり蹴られたりされた。用心棒は私の意識がなくなるまで殴り続けた。


 目が覚めた時、私はどこか知らない森にいた。スマホもなく裸足。森を出ることさえ辛い。


 何とか森を抜け出した私は、悪仲間Aさんの家に向かう。


 彼女は私の姿を見るや、家に入れてくれると思ったが、そこにいるのは悪仲間Aさんとその他の悪仲間Bさん、Cさん、Dさん。


 みんな私をごみのような目で見る。


 かすかに聞こえたAさんの声。


「ねえ、こいつボロボロでおもろくね。中学はあんなに調子に乗って。空手が出来るくらいでね」


 そして殴られ捨てられる。


 まさか悪仲間Aさん達が裏切るなんて。予想外のことよりも裏切られたことの方が大きく、私は泣き続けた。


 結局私ってなんで生まれたんだろう。強気な感じで生まれてきたのに悪い家族に裏切られ、仲間だと思っていた悪仲間にも最後は裏切られた。


 私にはもう何も残ってない。誰もいない公園で1人……倒れこむ。


 服装は自腹で購入した学生服。入学するはずの学校が制服自由だったから良かったのと、ヤンキーな感じでシャツ出し。スカート丈短くしてつやつやな黒髪の長髪に赤い耳ピアス。


 かっこよく決まっている感じにしてみたけど、死んでしまえば意味はない。


 今日殴られっぱなしでフラフラだし、出血多量。もう死ぬと思っていた。


 おまけに雨が降る。これは出血多量と体の冷えで死ぬ。そう思って私は目をつぶる。


 そんな時に声がした。


「君、大丈夫? 返事がない……でも息はある」


 小学生の声? 私が微かに目を開けると、紳士な服装の小学生の男子が見えた。さらに人の声がする。その声はおじいさんの声。


「青葉(あおば)様。急ぎ救急車を」


「その必要はないよ。僕らの専門の医者に診てもらおう」


「ですが……そのお方は青葉様専門の医者ですぞ」


「僕が頼めばあいつもやってくれる。さあ、じい。車を出して」


「その者は青葉様が運ばずともこのじいが」


「いいんだ。じいは車を出して」


 私は小学生の子におんぶされている。女子高生が小学生の男子におんぶされるってどうなのって自分で思いたくなった。でも車に乗せられたときはほっとするような感じがして私は眠りについた。

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