2、なぜchatGPTは「小説」が書けないか その3

 ここからは物語の内容を精査していきましょう。


 気になる点1つ目はプラトンの言葉です。冒頭でプラトンは古代ギリシャ語しか話せないと描写されているのに、中盤ではマックス・キャンベルと普通に現地語(?)で会話をしています。


 言葉遣いも一人称が「我々」となっていておかしいです。いや、複数形を一人称として使うキャラも考えられますが、今回の話では妙手とは言えません。


 物語の展開の仕方も不自然です。現代に転生(というよりはテレポート?)してしまう場面から物語がスタートするのは構いませんが、四段落目で「ある日」と急に時が進んでいます。読者は、プラトンがその間どうやって過ごしていたか気になるのに、それらを無視して物語は進んでいきます。


 と、粗を探せばキリがないので、ここら辺で終わりにします。

 ここからはいよいよ本題。どうしてchatGPTには小説が書けないか解説していきます。


 そもそも、小説を書く=物語を作るという行為はとても高度な知的行為です。地球上、どこを探しても物語を作っている動物なんて人間くらいしかいません。


 物語を作るときに大切な要素は3つあります(ここは持論も交えるので、異論は認めます)。

 1、登場人物

 2、ストーリー

 3、演出

 小説では言葉遣いや文章の書き方が3に当てはまります。chatGPTは3に関しては莫大な量の文章を学習してきているので申し分ありません。しかし、1と2を文章で学習させることはかなり難しいです。


 まず1の登場人物です。登場人物を生成することはchatGPTでもできます。適当に単語を羅列すればいいだけですから。そこに人格を持たせて、自由に動かすとなると、もはや言葉を出力するだけでは済まされない劇的な難しさがあります。

 試しに以下の実験を行ってみましょう。


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Input:

マリー・ブラントは気高い女性です。彼女はBCCのアナウンサーで、鋭い指摘をします。彼女には2人の愛人がいて、彼女は2人とも愛していました。しかし、愛人同士はお互いのことを快く思っていなかったようです。あるとき、愛人の1人がもう1人殺してしまいました。マリー・ブラントはその殺害現場に居合わせてしまいました。さて、マリー・ブラントはどのような行動を取りますか?


Output:

マリー・ブラントの行動は彼女の人格や価値観に依存しますが、一般的な考え方に基づいていくつかの可能性を挙げてみましょう。

1. 警察へ通報する: マリー・ブラントは現場に居合わせ、事件の目撃者として、直ちに警察に通報する可能性があります。彼女は事件の証人として協力し、真相究明に貢献することが考えられます。

2. 逃げるかもしれない: 事件に巻き込まれたことで恐怖や混乱が生じ、逃げることを選ぶかもしれません。ただし、これは違法であり、事件に関与していない場合でも逃走することは大きな問題を引き起こす可能性があります。

3. 弁護士に相談する: 自分が事件の現場に居合わせたことで法的な問題が生じる可能性があるため、マリー・ブラントは弁護士に相談することを検討するかもしれません。弁護士の助言を受けて、適切な対応を取ることができます。

4. 報道に関与するかもしれない: マリー・ブラントが報道のプロフェッショナルであるため、事件の真相を報道することに興味を持つかもしれません。ただし、彼女自身が事件に巻き込まれている場合、自身の中立性と倫理観を保つことが求められます。

5. 心理的な影響を受ける可能性がある: 事件の目撃者として、マリー・ブラントは心理的な影響を受ける可能性があります。ストレスやトラウマに対処するために、心理的なサポートを求めるかもしれません。

状況によって適切な行動は異なりますが、法律を遵守し、正直さと倫理的な責任を持って行動することが大切です。事件の捜査当局と協力し、真相を明らかにすることが最も重要なことです。


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「2人の愛人のうち1人がもう一方を殺した殺害現場に居合わせてしまった。彼女がとる次の行動は?」


 この命題をみなさんはどう考えますか。かなり難しい問題ですが、僕なら「警察に通報する」もしくは「愛人と事件を隠蔽する」を考えます(どちらかというと後者が強め)。しかし、chatGPTは後者を提示すらしませんでした。

 chatGPTはこれまで学習してきた莫大な情報量の中から「マリー・ブラントはどのような行動をとるか」という部分に注目し、一般的な回答を提示したのです。「2人の愛人がいる」、「2人とも愛している」というところに注目していないのです。

 このように、chatGPTはキャラクターの動きを予測する場合、一般的な回答を提示しがちです。もちろん、一般論の中で動くキャラクターもいると思いますが、そんなキャラクターばかりの物語は面白くありません。

 

 2つ目は「ストーリー」についてです。(続く)

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