激安霊感商法!(8)

 一体幽霊の目的は何なのか。何を目的に悪さをしているのか。一歩一歩真相に迫ろうと歩いていく。

 しかし、だ。

 影や姿は何処にもない。やはり幽霊かとメアが不気味がっていた。


「ひぃ……お化け? お化けが今もどっかで見ているってこと?」


 風により窓ガラスがパシパシと鳴り出した。

 怖がるメアの様子を観察しつつ、色々な部屋を見回らせてもらった。リビングにキッチン、そして書斎。そして玄関。玄関扉には鍵が掛けてあるものの、風のせいか、下の板がバタンバタンと動いている。


「猫でも飼ってるの?」


 猫用の出入り口があるからして一瞬猫のせいかと思った。ユーカリさんの方は猫に目がないらしく「えっ、何処何処何処にいるの!?」と鼻息を荒くして探していく。

 ただメアは少し寂し気に告げる。


「昔、ね……」

「そ、そっか……」


 こちらもしょんぼりしてしまうが。今は幽霊に関して探す方が先決だ。そんな僕にメアが不安そうに口にしたことがあった。


「もしかして、怒ってるのかな……幽霊さん」

「えっ?」

「もし幽霊がそのうちの飼い猫だったとしたら、わたしが色々寂しい思いをさせちゃったこととか、いい飼い主でなかったことを怒って、ドシドシやってるのかなぁ?」


 一回、言葉に詰まった。何て言えばいいのか。何も知らない自分が言っていいものか。なかなか気の利いた言葉が返せない中、ユーカリさんが第一声を放つ。


「んなことないでしょ」

「えっ?」

「私の場合は別に怒ってるから化けて出た訳じゃないよ。必ずしも未練があるから出てくるってことじゃないし。自分だって死んだ時の記憶とかないもん。現世で何かあったって、そうそう強く恨むことなんてないよ」

「ユーカリさん……」

「きっとお礼を言うために出てきてくれたんじゃないかしら?」

「そうだと……いいなぁ」


 僕も遅くなったけれども、気持ちを伝えさせてもらう。ユーカリさんが言ってくれたおかげで自分も何か話しても良い気がした。


「メアは優しいから、大丈夫だと思うよ」

「二人共、ありがとう……下らないことで悩んで、怖がって……バカみたい。何でもないよ!」


 メアが元気を取り戻したのを確認。再び、捜査を開始する。

 どのようにドタドタやっていたのだろうと足元を注視しながら考えている。すると、足跡が目に付いた。

 誰かがドタドタ足を動かした後があるのだ。

 ユーカリさんの足である部分を見比べて、推測を進めていく。


「……幽霊には足がない……そっか……」

「ん? サインくん、何か分かったの?」

「真相が分かったかもしれない。ただ問題としては、その相手を捕まえる方法なんだよなぁ。たぶん僕達がいるって分かると、逃げられちゃう」


 となると、どうするべきか。隠れていれば良いのだが。なかなか気配も消せず、バレてしまいそうな気がする。

 ならば、壁や道具の中に隠れればと。僕はじっとユーカリさんを見つめていた。


「ど、どうしたの?」

「すり抜けられるってことは壁の中にいられるってことだよね。やろうとすれば、壁の外を見つつ、気配を完全に消すってこともできるんじゃないかな?」

「まぁ、できないことはないな……ほら」


 彼女は壁の中に入ってくれた。今度は僕達が動く番だ。


「じゃあ、今度はメア、バリアで壺か何かを作ってくれないか?」

「バリアに色を付けておけば、隠れられるってこと?」

「そっ……できる?」

「うん!」


 メアの魔法によって生成されたバリアの壺。高級な骨董品と思わしき大きな壺。壁の裏に置いておく。侵入者が来た時にすぐ解除できるようだから、逃げられることもないだろう。

 幽霊を捕まえる作戦が始まった。

 メアとの距離が近いことが問題だ。目を離しても肌の感触がどうにもこうにも気になってしまう。これがいつまで続くことやら。

 もしかしたらもう幽霊も来ないかもしれない。自分達に存在が気付かれ、もう一度ここに来るのは危険だと判断されたかも、だ。

 それでもやってみなければ。音がしなければしないで幽霊問題は解消されたことになるし。

 退屈な時間が過ぎるものだから、一回ユーカリさんと会話を試みる。


「そういや、ユーカリさんって……生前の記憶とか、全く覚えてないんです? メア、何かその話した?」


 メアの方は可愛らしく首を横に振った。その後に「ユーカリさん、どうなんですか」と好奇心を発揮していた。

 ユーカリさんの表情は見えないが、きっと難しい顔をしていたのだと思う。数分位してから答えが飛んでくる。


「ううん、不思議な話なんだよね……生前の記憶がハッキリしないんだけど……生前では違う世界にいた気がする……何か、その記憶が本当かどうか分からないんだけどね……」


 僕が「違う世界」について疑問を覚えた。


「違う世界って異世界ってこと?」

「まぁ、そういうことになるかな。元の世界からしたら、こっちが異世界になるんだと思うけど……ファンタジーの世界だとか……」

「えっ? もしかして、僕がいた世界と同じなのかな……?」

「そうなの? じゃあ……」


 本当に同じなのか。彼女から今の時事問題についての話を出された。当然、心当たりがありまくり。答えていく。


「……やっぱ、同じか」


 ニュースからして、同じ時代に生きていたこともハッキリした。どうやら亡くなったのもここ最近のようだと思われる。


「みたいね。何で私は異世界転移じゃなくて、異世界転生したんだろ? ってか、異世界転生したんなら、幽霊じゃなくて人間の身を貰っても良かったのに……神様ぁ!」


 本当に不思議な話ではある。

 何故に彼女は彼女で幽霊の形として、異世界転移したのか。何か未練があるのか、トラウマがあるのか。それとも、幽霊として、やるべきことがあるからなのだろうか。

 僕は僕で探偵としての未練があるから、こちらに転移してしまっている。今もこうして探偵として、幽霊事件の犯人はだいたい予測できてしまっている。そして今、現実の世界で気になっていたことも解けかかっているような気がしてならないのだ。間違いなく僕は探偵として生きるために異世界へ来ている。彼女もそうなのだろうか。

 考えている間に時が来た。

 ガサゴソと入ってきた相手。

 年も十はいかないであろう少女が家に入ってきたのを僕達三人が発見していた。


「やっぱり子供だったんだね……」

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