マギウス・アーティファクト -英国魔法道具物語-
如月にがつ
Episode.01 蒼き妖精眼 -Lapis Lazuli- (アルト♂配役ver)
<台本概要>
【台本名】
マギウス・アーティファクト -英国魔法道具物語-
Episode01.蒼き妖精眼 -Lapis Lazuli- (アルト ♂配役ver.)
【作品情報】
ジャンル:魔法ファンタジー
男女比 男:女:不問=3:2:1(総勢:6名)
上演時間 50~55分
<登場人物>
アルト・クナギリ Aruto=Kunagiri ※この台本では♂配役となります。
性別:男性、年齢:19歳、台本表記:アルト
本作品の主人公で、日本人の父親とイギリス人の母親を持つハーフ。
母親の姓で名乗る場合は「アルトリウム・エムリス(Artorium Emrys)」。
性格は温厚で優しく人情深く、他人が傷つけられるのを何よりも嫌う。
中性的な容姿で、時折女性と間違えられる。
シオン・ティールグリーン Sion=Tealgreen
性別:女性、年齢:17歳、台本表記:シオン
本作品のもうひとりの主人公であり、ヒロインでもある魔法使い。
女王陛下から政府や警察が対処出来ない魔法使い関連の事件を
任させた組織『
困る様が好き。
ニニアン・クナギリ=エムリス Ninian Kunagiri=Emrys
性別:女性、享年:30歳、台本表記:ニニアン
アルトの母親で、彼が幼い頃に事故で亡くなっている。
彼女から届いた突然の手紙がアルトの元に届いたことで、
アルトはイギリスへ向かう。
フィアンマ Fiamma
性別:女性、年齢;見た目は10代後半、台本表記:フィアンマ
ニニアンにかつて仕えていた妖精で、リトアニアの
ガヴィージャの子。
炎を扱う魔法を得意とするが、怒ると制御出来ない時がある。
ニニアンの命でロンドンにある彼女の家で、アルトが来るのを待っていた。
カルタフィルス Cartaphilus
性別:男性、年齢:見た目は20代後半~30代前半
台本表記:カルタフィルス
マジスターと呼ばれる謎の男性の命令でアルトを
使い魔としてブラッグドッグのグリムがいるが、
正体は、3世紀にヨーロッパで伝説が広まり始めた神話上の不死の男である
「さまよえるユダヤ人(Wandering Jew)」。
グリム Grim ※性別不問キャラです。少年ボイスを出せる方推奨。
性別:男性、年齢:見た目は10代後半
カルタフィルスの使い魔である妖精で、イギリス全土に伝わる黒い犬
の姿をした
カルタフィルスに
反抗せずに忠実に従っている。
オベロン Oberon
性別:男性、年齢:見た目は20代後半、台本表記:オベロン
アルトの夢の中に現れた青年で、自身の事を【
マジスター Magister/■■■■■■ ■■■■■
性別:男性、年齢:見た目は20代後半、台本表記:マジスター
カルタフィルスにアルトの殺害を命じた謎の男性。
ふざけた言動や行動をとるが、その裏で何か企む素振りを見せる。
<用語説明>
マギウス・アーティファクト Magius Artifact
制作者不明の魔法道具であり、人類史より前の
創られたと云われている。
持ち主にその道具が持つ魔法の力を授ける事ができ、
例え非魔法使いの人間であっても使用することが出来る。
モノによっては例外的なモノも存在する。
時計塔の騎士団(とけいとう-の-きしだん)
シオン・ティールグリーンが団長を務める、魔法使いたちの
政府や警察が対処できない魔法使い関連の事件を取り扱い、女王陛下に
よって創設されたことで「女王陛下の懐刀(ふところがたな)」とも
呼ばれている。
騎士団の本部は、ウェストミンスター宮殿内の秘密部屋。
妖精眼(ようせいがん)
『魔法道具』の一種ではない。
魔術の気配・魔力・実体を持つ前の幻想種などを把握でき、ヒトであれば
嘘をついているかどうか見抜くことが出来る。
しかし『魔法使い』たちは自身の腹の内が暴かれることを何よりも
嫌うため、有効ではない事が多い。
基本は「人間が持つことは出来ず、妖精でないと持つことが出来ない」。
また『妖精眼』の中でもランク付けされており、特に『
最上位に位置されている。
<配役表テンプレート>
台本名:マギウス・アーティファクト
Episode01.蒼き妖精眼 -Lapislazuli- (アルト ♂配役ver.)
URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330661662232096/episodes/16817330661663061385
アルト・クナギリ:
シオン・ティールグリーン:
フィアンマ/ニニアン・クナギリ=エムリス:
グリム:
カルタフィルス:
オベロン/マジスター:
----------------キリトリ線----------------
※台詞検索にお役立てください。
☆:アルト、青年(♂)
〇:シオン、アナウンス(♀)
△:フィアンマ、ニニアン(♀)
▽:グリム(不問)
□:カルタフィルス、運転手(♂)
◇:オベロン、マジスター(♂)
<台本本編>
【アバンタイトル】
☆アルト:ここは……
▽グリムN:アルトは気付くと、自分が
ことに気付いた。
見たことがない
◇オベロン:驚いたかい?
▽グリムN:声がした方向に振り向くと
――
◇オベロン:うんうん! その顔を見たかった!!
初めまして、アルト・クナギリ
――いや、アルトリウム・エムリスのほうがいいかな?
☆アルト:どうして知って――
◇オベロン:しっー!
☆アルト:……!
◇オベロン:キミは
〝彼ら〟が集まって来てしまうから、いいね?
☆アルト:(※忠告に素直に従い、声を出さずに頷く)
◇オベロン:
シェイクスピアも言っていたからね。
――「
――「速く走る者たちは、
さて、ここからは
▽グリムN:そう言って、
不思議な
王者の
◇オベロン:
しかし、
世界の真実を知り、そして
に出会うまでは。
――とまあ、簡単に言うと「キミは世界を知らなさすぎる」と
いうことさ。
▽グリムN:そして、再び優しい
あまりの
を浮かべた。
◇オベロン:あはは! 本当に、彼にそっくりだ!!
親子と言うのはここまで似てしまうモノなのか!!
若き日の
でも、その
☆アルト:えっ……?
◇オベロン:おっと! いけない、いけない!
うっかりと色々と
物語のネタバレなんて
さて、そろそろ夢が終わる時間だ。
目を覚めす前に、僕の名前を
――僕の名前はオベロン、【
ようこそ、現代もなお残る
(間)
☆アルト:んっ……あれ? 今のって――
〇アナウンス:当機は、ただいまからおよそ15分でロンドン・ヒースロー空港
に着陸する予定でございます。
ただいまの時刻は午前9時30分、天気は晴れ、気温は20度
でございます。
着陸に備えまして、お手荷物は離陸時と同じように――
☆アルト:夢、だったんだ……それにしても不思議な夢だった……
これが来てから不思議な事が起きているような気がする……
▽グリムN: アルト・クナギリは〝ある目的〟を以てこの国を、イギリス
を訪れた。
それは一通の
本来ならば届くはずのない、
それに導かれて、彼の運命は大きく流転する。
☆アルト:マギウス・アーティファクト
〇シオン:エピソード1、
【シーン01】
▽グリムN:ロンドン中心部にあるウェストミンスター。
テムズ
ウエストミンスター宮殿。
誰かと通話していた。
〇シオン:そうか……ついに彼がやって来たんだね。
うん、もちろんだよ。
予定通り、私ひとりで会いに行くさ。
おやおや~?
兄上殿は優しくて
▽グリムN:そう言って、少女は自身の
〇シオン:安心したまえ! 兄よりも優秀な妹だからね、私は!
フフッ……そこで
まあ、でも、その
なにせ
産まれた子なんて聞いたことがない。
んっ? なんか楽しそうだなって?
当たり前じゃないか!
正直、私はとてもワクワクしているよ!
これから起こることは、きっと――楽しいに決まっている!
▽グリムN:楽しそうにそう言い放った少女とは
電話口の男性は深いため息をついた。
彼女が持つ調査書のタイトルは
――『アルト・クナギリこと、アルトリウム・エムリスについて』
【シーン02】
▽グリムN:ロンドン・ヒースロー空港から
場所はロンドン西部にあるウェスト・プロントン駅。
多くの人で
☆アルト:ここが母さんが生まれ育ったところなんだ……
のどかって聞いたけど
確か住所は手紙に……うーん、とは言ってもどこなんだろう?
とりあえず、あそこのタクシーの運転手に聞いてみるか。
すいませーん。
えっ!? 車で30分!?
(間)
□運転手:それにしても、お兄さん、旅行者?
顔つきを見る限りだとアジア系だろ?
どこから来たの?
☆アルト:日本からです。
□運転手:日本人か! めっずらしいね~
この街にはあんまり来ないからさ!
もしかして……
☆アルト:
□運転手:なーに、とぼけちゃっているのさ!
その住所、
☆アルト:えっ……ゴースト、ハウス?
□運転手:そうだよ、
いなくなった主人を待ち続けるメイドの
出るらしいんだ。
おまけに
も出るらしいんだ!
☆アルト:そ、そうなんですね。
□運転手:なんだい、お兄さん。
本当に何も知らないのかい?
☆アルト:はい……それにその
□運転手:あっー……なんか、ゴメンね。
【シーン03】
▽グリムN:アルトがロンドンに向かう3週間前、それは突然届いた。
☆アルト:国際郵便? ロンドン?
▽グリムN:突然届いた一通の便箋、それに入っていた2枚の手紙。
☆アルト:『
『この手紙が
『私はこの世にいないということになります』
――これって……どうして……!
▽グリムN:彼が驚くのは無理もない。
本来ならば届くはずが無い、死んだ人間からの手紙。
彼は読み進める。
△ニニアン:『悲しい思いをさせてしまってごめんなさい』
『出来ることなら、最後まで
『
『あなたに伝えなければいけない』
『本来ならば避けたかった選択』
『けれど、
『――だから、私は選択します』
『アルト、イギリスに向かいなさい』
『そして、手紙に書かれている場所に向かいなさい』
☆アルト:『――そこに、
『きっと、彼女は
『あなたに神の
――もう一枚は……なにこれ?
これは、詩? 歌?
初めて見た……
△ニニアンN:『
『
『
『僕らは 彼を 〝運命の
『やってくる やってくる』
『
『天使と
『でも 大丈夫 僕たちには 勇者がいる』
『いざ 勇ましき ロンディニウムの
『
『西の
『希望の
『世界に 祝福を』
『白き
『さあ
【シーン04】
☆アルト:お
それにしても、あの話……本当なのかな?
□運転手(回想):いなくなった主人を待ち続けるメイドの
が出るらしいんだ!
☆アルト:ううっ! 寒気が!!
ホラーとか苦手なんだよなぁ……てか、本当にいるのかな?
なに!? 今、
▽グリムN:なんとなく窓のほうに目を向けると、
メイド服を着た女性がひとり、ゆっくりとした
の建物へと入っていった。
☆アルト:……マジか、本当にいたよ。
本当に
母さんからの手紙には、友達がいるって書いてあったし……
うん! 行ってみよう!!
(間)
☆アルト:うわぁ……すごい……
▽グリムN:思わず
ガラス
植物園と
が植えられていた。
△フィアンマ:ふんふんふ~ん♪(※簡単な鼻歌を上機嫌に)
☆アルト:あれ……声がする……
△フィアンマ:ふんふんふ~ん♪(※鼻歌を続けてください)
☆アルト:あ、あの!
△フィアンマ:ふんふんふ~ん♪(※気付かずに鼻歌を続けてください)
☆アルト:あの、すいません!
△フィアンマ:えっ?
☆アルト:あっ……
☆アルトM:しまった! 普通に話しかけちゃった!!
ど、どうしよう……すごくジッと見ている……!
あっ、待って、これ、不審者だと思われてる?
これ、そうだよね! どうしよう!
こういう時ってどう言い
やばい、思いつかない!!
△フィアンマ:あっ……あっ……
☆アルト:ちょっと待ってください!
決して怪しい者じゃ――
△フィアンマ:アルト様……?
☆アルト:えっ? どうして名前を――うわっ!!
△フィアンマ:間違いありません! アルトリウム・エムリス様ですよね?!
ニニアン様にそっくりなお顔に、
お待ちしておりました!
☆アルトM:抱きついてきたー! そしていい香りが……じゃなくて!
☆アルト:あの……その……
△フィアンマ:お待ちしておりました!
あなたが再びこの地に訪れるのを!!
【シーン05】
▽グリムN:ロンドン・ウェストミンスター地区、ハイド・パーク。
時刻は夜の7時。
多くのヒトで賑わう公園は夜の闇と
□カルタフィルス:おい、来たぞ。
◇マジスター:んっ? おおっ、時間ピッタリだ!
時間にルーズなキミにしては珍しいことがあるものだね。
あと一分遅れていたら、八つ裂きにしていたよ。
まあ、冗談だけどね。
□カルタフィルス:ちっ。
▽グリムN:ベンチに座る銀髪の男性が
遅れて来た
◇マジスター:相変わらず、ノリが悪い男だ。
まあ、いいさ。
それがキミという存在だ。
□カルタフィルス:それよりも!
◇マジスター:おやおや、どうしたんだい?
そんな必死な顔を浮かべちゃってさ~
□カルタフィルス:なあ、マジスター!
いつになったら、俺は
前に言ったよなァ?!
「自分の言う事を聞けば、
◇マジスター:(※ため息を一回吐いた後に)やれやれ。
□カルタフィルス:俺はこれ以上、
いつまでたっても、
限界が近付いてきている……
頼む、なんとかしてくれよォ!!
◇マジスター:カルタフィルス、落ち着きなよ。
ロミオとジュリエット、第二幕。
――「賢明に、そしてゆっくりと。速く走る者たちは
要は〝
今の君に贈るべき言葉だ。
□カルタフィルス:くっ!
◇マジスター:安心しなよ、僕はキミとの約束を守るつもさ。
だからこそ、キミに最後の頼みをしたいと思う。
□カルタフィルス:最後の頼み、だと?
◇マジスター:そうとも、それで今回のキミの仕事は終わりだ。
労働には対価は必要だ、長きにわたる
□カルタフィルス:それって……!
◇マジスター:そうとも、キミが考えている通りさ。
□カルタフィルス:本当か!? なら是非ともやらせてくれ!!
何でもする!!
俺は一体、何をすればいいんだ?
◇マジスター:水を得た魚のように元気になったね。
やる気がある者は大歓迎だ。
ウェルト・プロンプトンに
そこに向かい――その
□カルタフィルス:なっ!?
◇マジスター:そんなに驚く事かい? 簡単な話だろ?
それに人殺し自体は初めての事じゃないだろう。
□カルタフィルス:しかし、それは今までのは
◇マジスター:カルタフィルス。
□カルタフィルス:っつ!
◇マジスター:僕を失望させないでくれ。
それにどんな言い訳で取り
ヒトを
……まさか、キミ、出来ないのかい?
▽グリムN:青年の声が
カルタフィルスは底知れぬ恐怖を抱き、全身を
□カルタフィルス:や、やる! やり
◇マジスター:……うん! そう言ってくれると信じていたよ。
それじゃあ、良い報告を楽しみにしている。
□カルタフィルス:…………ちっ、クソが!
おい、そんなところに突っ立ているんじゃねえよ!
この
▽グリムN:カルタフィルスは、彼の使い魔である少年を蹴りつけた。
であることがわかる。
ふらつきながらも、少年は黙ってカルタフィルスの後を
着いて行った。
◇マジスター:使い魔とは言え、幼い少年に暴力を振るうとは……
〝さまよえるユダヤ人〟よ、
お前の神はきっと悲しむぞ?
元は賢者であった
……果たして彼は理解しているのかな?
▽グリムN:そして、彼はある詩を朗読し始める。
◇マジスター:『
『
『
『僕らは 彼を 〝運命の
『怖い 怖い
『天使と
▽グリムN:そして、悪魔を
◇マジスター:『
『運命の
――こっちのほうが
【シーン06】
☆アルト:――うん、眠れない。
ベッドはすごくフワフワして気持ちいいけど、
部屋が広すぎて眠れない……
それにしても――
(間)
△フィアンマ:どうぞ。
☆アルト:ありがとうございます。
(※紅茶を飲んだ後に)この紅茶、おいしい。
それにグレープフルーツの香りがする。
△フィアンマ:H.R.ヒギンスのブルーレディです。
マロウとマリーゴールドの花がブレンドされた
フレーバーティで、店一番人気の紅茶です。
ちなみに、H.R.ヒギンスは英国王室
☆アルト:王室
フィアンマさんのお気に入りの紅茶なんですか?
△フィアンマ:はい……でも、私のお気に入りと言うよりは、ニニアン様が
大好きだったんです。
ご健在だった時、私が淹れた紅茶をよく褒めて頂きました。
あの御方の笑顔を見ると、とても幸せな気持ちになるんです。
「喜んでもらえるように頑張ろう」って。
☆アルト:母さんが、好きな紅茶だったんだ……初めて知った……
△フィアンマ:アルト様……す、すいません、私としたことが……
☆アルト:大丈夫ですよ、気にしないでください。
それに母さんの事を知らないのは当然なんです。
あんまり一緒にいる時間が少なかったので。
だから嬉しいんです、自分が知らない母さんの事を知ることが出来て。
フィアンマさんが知っている事、僕に教えてください。
△フィアンマ:アルト様……
☆アルト:あと、「様」とつけなくて大丈夫ですよ。
△フィアンマ:い、いえ! そういう訳もいきません!!
アルト様は、ニニアン様のご
私にとっては仕えるべきご主人様なのです!
☆アルト:……ということは、御主人の命令は聞いてもらえるんですか?
△フィアンマ:もちろんです! 何でも聞きます!!
☆アルト:言いましたね、何でもって言いましたね?
それじゃあ、主人として命じます。
今後、僕の事を「様」付けで呼ばないでください。
△フィアンマ:うっ……それは……
☆アルト:お願いしますね。
△フィアンマ:か、かしこまりました……圧を感じさせる
笑顔は
☆アルト:父さんの事も知っているんですか?
△フィアンマ:もちろんです。
ニニアン様と日本に戻るまでの短い期間でしたが、
とても楽しかった日々であったことを覚えています。
人間の社会や考古学について……色々と教えて頂きました。
ニニアン様の
私のような
☆アルト:えっ……
△フィアンマ:どうかしましたか?
なにか、すごく驚かれていますが……
☆アルト:い、いま……
△フィアンマ:はい、そうですよ。
そういえば、正式な自己紹介をしておりませんでした。
私の名前は、フィアンマ。
炎の女神・カヴィージャの
ニニアン・クナギリ=エムリス様の
以後、お見知りおきを〝
(間)
☆アルト:うーん……
ファンタジーの漫画やゲームに出てくる、あの
当たり前の事のように言うから、何も言えなかった……
あっー! もう!! 訳が分からない……
〇シオン:悩み事かい? ミスター?
☆アルト:うーん……悩み事と言うか、なんて言うか――あれ?
〇シオン:こんばんわ、素敵な夜だね。
☆アルトN:窓の
綺麗な赤い髪のロングヘアーがなびき、小悪魔の様な
彼女が持つ
部分があった。
〇シオン:おや? これはつまらないな~
キミの事だから、驚いたリアクションひとつでもしてくれる
かと思ったが……
まさか、ハトが
出来るとはね。
私としては。それはそれで面白いんだけれども。
サプライズの予定だったから、この結末には興ざめだよ。
よっと!
☆アルトN:
珍しいモノを見定めるかのような目付きで見つめてきた。
〇シオン:おお! これが『
『
やはり本物は違うな!!
☆アルト:えーっと、その……
〇シオン:あぁ、申し訳ないな。
つい本物を見てしまった事で興奮してしまった。
初めまして、アルト・クナギリ……いや、アルトリウム・エムリス
の方がいいかな?
僕の名前は、ストラスフォード
シオン・ケイト・ティールグリーン――魔法使いだ。
【シーン07】
☆アルト:魔法、使い……
〇シオン:そうだよ。
君が見ているのは、物語に出てくる空想の存在ではない。
現実の存在だよ。
◇オベロンN:そう言って、目の前の少女は不敵な笑みを浮かべる。
彼女の声には
ただ、当たり前の真実を
どんな夢物語でも、説得力がある声。
〇シオン:キミは本当におもしろい反応をしてくれるね。
からかい
☆アルト:それよりも、僕に一体何の用が……それに『
〇シオン:それは――
△フィアンマ:アルト様!!
☆アルト:フィアンマさん?!
そんなに慌ててどうしたんですか?
△フィアンマ:実は……きゃ! 誰ですか!?
〇シオン:こんにちは、
自己紹介をしたいところだが……今はどんな
緊急事態なのだろう?
☆アルト:緊急事態……どういうことですか?
△フィアンマ:逃げてください、アルト様! 今すぐに――
◇オベロンN:フィアンマの背後にある廊下の窓ガラスに黒い物体が見えた。
開けていた。
△フィアンマ:えっ……
☆アルト:危ない!!
〇シオン:停まれ、『プロヒベーレ』!
☆アルト:と、停まった……!
〇シオン:燃えろ、『ケナ-ズ』!
◇オベロンN:
それはガラスを突き破り、
〇シオン:ボッーっとしている暇はない! 逃げるぞ!!
☆アルト:わかった! 行こう、フィアンマさん!!
△フィアンマ:は、はい!
〇シオンM:紅い目に、黒い狗……おかしい、奴らはヒトを
本来
嫌な予感がする――
【シーン08】
▽グリム:『
◇オベロンN:使い魔の少年が地面に手を付けて
そうすることで、自分の影から〝ブラック・ドッグ〟
を産み出す。
産み出された
□カルタフィルス:これで12匹目か。
流石にここまで
どうだ、グリム。
▽グリム:……いや、まだ。
□カルタフィルス:あっ?
▽グリム:〝モディ〟と〝ジャック〟の消滅を確認した。
□カルタフィルス:ちっ、相変わらず役に立たねぇなァ! この
▽グリム:ぐっ……!
□カルタフィルス:わかってるのかよォ! この! この!!
▽グリムN:こうやって
強制的に
ただ、主従関係を結ばれている以上に
いや、許されない事だ。
この男は用心深く、裏切ったら死ぬように
□カルタフィルス:消えるしかなかったクズ妖精を救ってやったの誰だ?!
▽グリムN:お決まりの
でも、それは事実だ。
この男がいなければ、自分は消える運命だった。
受け入れなければいけない。それが
そのはずだった――
□カルタフィルス:なあ?! 何か言ったらどうなんだよォ!!
▽グリムN:
この男は、何も言わずに強制的に俺を使い魔
とする
きっと
けれども――
▽グリム:必ず……役立て、る……
▽グリムN:――あの時に「生きたい」と思ってしまったから。
これはその
だからこそ――
□カルタフィルス:ちっ……
▽グリムN:だからこそ、果たさなければいけない……!
【シーン09】
〇シオン:『ケナーズ』!
◇オベロンN:次々と
1匹、また1匹と。
展開された
〇シオン:ふぅ……これで5匹目か。
さて、何匹といるとやら……
☆アルト:後ろ! 危ない!!
△フィアンマ:させません!
◇オベロンN:
フィアンマが展開した炎のバリアでシオンは守った。
バリアに触れた
〇シオン:やるじゃないか、助かったよ。
△フィアンマ:……私の使命はアルト様をお守りする事です。
〇シオン:わかっているよ。
そこまで頭が回らない人間ではないさ。
僕を助けたのは、おまけだろ?
それよりも、
△フィアンマ:私には、「フィアンマ」という名があります。
以後お見知りおきを、
〇シオン:それはすまなかったね。
それで、フィアンマ。
今回の
△フィアンマ:……違和感を感じます。
ブラックドックがヒトを襲うなんて信じられません。
私を襲うのなら理解は出来ますが……
〇シオン:やっぱり、キミもそう思うか。
☆アルト:あ、あのさ……〝ブラックドック〟ってなに?
〇シオン:〝ブラックドック〟は、イギリス全土に伝わる
黒い
古代ギリシャの神、ヘカテーの
「死の先触れ」の側面がある事から
△フィアンマ:
……ですが、私たちの知るブラックドックは墓荒らし
から墓地を守る
彼らは迷子の子供を助けたり、葬儀の時に鳴る教会の鐘
に合わせて遠吠えをあげることで死者の行き先を神父に
知らせます。
の持ち主なんです。
☆アルト:……確かに、二人が奇妙に感じるのがわかる。
けど、僕たちを襲ったのは、そのブラックドックで間違いない。
△フィアンマ:はい、つまり――
〇シオン:待った、二人とも。話は後だ。
□カルタフィルス:おいおい、聞いていねぇぞ……
〇シオン:
□カルタフィルス:ガキがひとりの話の
ガキばっかりかよ。
▽グリム:…………。
〇シオン:それはすまないことをしてしまったようだね。
□カルタフィルス:おまえは……ちっ、
お前ら、全員を殺せばいい。
〇シオン:そうか……なら!
□カルタフィルス:なっ! 足元に
〇シオン:無駄だ、その
□カルタフィルス:このガキィ……!!
☆アルト:シオンさん!!
〇シオン:フィアンマ!
お前は、そこのブラックドックの相手をしろ!!
この男は、僕に任せてくれ。
『運命の
△フィアンマ:――ええっ、承知しました!
アルト様は、私が必ず守ります!!
▽グリム:……そこを
同じ
△フィアンマ:お断りします。
主人を守るのが、私の使命です。
傷つける者が人間であろうと、
私は自分の命を
▽グリム:残念だ……なら、しょうがない。
そうであれば
△フィアンマ:来る……!
▽グリム:悪いが、最初から手加減なしだ
――集え、
ここに全てを喰らう
『デクルティエン・バーゲスト』!!
△フィアンマ:影が巨大な
▽グリム:無駄だ。
△フィアンマ:そんな!? 炎を……
っつ! まだまだ!!
▽グリム:だから、無駄と言っただろ。
これはお前らを襲った
ブラックドッグの集合体――これがバーゲストの血が流れる俺の最大出力だ。
△フィアンマ:『ギール・フランマ』!!
▽グリム:お前もわかっているだろ。
バーゲストはブラックドッグの中で最上位の存在。
それは全てを喰らう
だから――
△フィアンマ:っつ!
☆アルト:フィアンマさん!
△フィアンマ:アルト様、ごめんなさい……私、お役に……
▽グリム:まずは、ひとり。
【シーン10】
〇シオン:さて、ここなら派手に暴れることが出来るだろう。
森の中だ、しかも人除けの結界も張っている。
一般人に私たちの存在や魔法を見られることはない。
だから……来なよ、全力で。
□カルタフィルス:いいのか?
〇シオン:んっ?
□カルタフィルス:
〇シオン:ぷっ! あははは!!
□カルタフィルス:何がおかしい?
〇シオン:あははは!
だってさ……僕がキミに負けると思っているの?
□カルタフィルス:生意気な小娘が……
〇シオン:
キミが持つ魔力量に気付かない訳ではない。
きっと、実力については上位と言っても良い程だろう。
でも――
□カルタフィルス:あっ?
〇シオン:僕の敵じゃない。
□カルタフィルス:……いいだろう!
そこまでの
後悔することだなァ!!
来たれ、
〇シオン:へぇ……天候を
□カルタフィルス:
――お望み通り全力で、高出力の雷魔法を
喰らわしてやるよ!!
『アストラ・クリーシス』!!
◇オベロンN:巨大な雷がシオンに向かって落とされた。
高出力の魔力で創られた雷に、ヒトの身であれば
灰ひとつも残さない。
彼は確信した、勝利を。
けれど――
〇シオン:……見事だ、正直
□カルタフィルス:そ、そんなバカなァ!?
〇シオン:流石の僕も今回については肝を冷やしたよ。
□カルタフィルス:どうして生きている!?
信じられねぇ! 高出力の魔力が
〇シオン:それは〝ただの人間〟であれば、の話だ。
僕は魔法使いだぞ?
目には目を、歯には歯を、魔法には魔法を。
君が放った雷より強い防御魔法を展開すればいい。
そして、その通りになった。
事実は単純明快だ。
□カルタフィルス:ふざけてやがる……!
〇シオン:じゃあ、次はこっちの番だ。
□カルタフィルス:させるかァ!!
〇シオン:プロヒベーレ
□カルタフィルス:なっ、動けな……い……?!
〇シオン:言っただろ? 僕の敵ではない、と。
味わせてあげるよ、本当の雷魔法というものを。
――天空を支配せし太陽神よ、我が呼び声に応えよ
闇夜を切り裂く、一条の光の如し。
我が手に宿れ、白き
□カルタフィルスM:な、なんだ……これは……
さっきと違うじゃねえか……!!
爆発的に魔力量が跳ね上がってやがる!
俺の何倍以上だ?
まずい! こんな考え事をしている場合じゃ――
〇シオン:もう遅いよ。
我、投擲す――『
□カルタフィルス:ぐああああああああああああああああ!!
◇オベロンN:
貫いたのと同時に森全体が光と衝撃に包まれた。
勝敗は一瞬にして決した。
〇シオン:……しまった、調子に乗りすぎた。
まあ、森の半分を吹き飛ばしたとは言え?
特に被害は出ていないし、魔法も見られていないし?
うん、この被害状況と必要な事後処理を考えると……
兄上の1時間説教コースが
やれやれ……んっ?
□カルタフィルス:ああっ……アアアアアアアアアア!!
〇シオン:なっ!
□カルタフィルス:俺は……私は……儂は……ここでマケ、負ケル……
ワケ、には行かなインダァ……!
〇シオン:想像以上のしつこい男なんだなぁ!!
□カルタフィルス:ワレの名前ハ……カルタフィルス……!
〇シオン:カルタフィルス……「さまよえるユダヤ人」伝説の不死人!
全く、面白い事は好きだが
ならば、倒する事が出来なくても捕まえれば――
□カルタフィルス:対象
〇シオン:しまった! この魔法陣は……!
□カルタフィルス:
〇シオン:くっ、どこかに飛ばされ――
□カルタフィルス:イヒヒヒ……ケハハハハ!!
トバシタ、遠くにトバシタ!!
つぎハ
【シーン11】
△フィアンマN:炎の
女神・ガヴィージャ――それが私の母親。
その娘であれば母親と同様に
はずなのに……私は唯一の〝失敗例〟だった。
「恥さらし」という
――私は誰にも必要とされない存在であり、欠陥品。
――だから、この世から消えようと思った。
☆青年:大丈夫かい?
△フィアンマ:えっ……?
△フィアンマN:命の
本来であれば私の
理由はどうあれ、その時の私には考える
☆青年:こんなところで寝込んでしまうぐらい
それに
君は……あぁ、そうか、
ならば、ニニアンに相談しないと。
――必ず君を助ける。
△フィアンマN:そう言って、彼は私を抱きかかえて
――そして私はニニアン様に出会い、治療を受けて、
私は生き
そして、ニニアン様の
どんな
それを受け入れなければいけない。
だからこそ
あるこそ許されない。
「
運命だった。
☆青年:自分の生き方を選べない運命でいいのかい?
△フィアンマN:良い訳がない……まだ、私は何も果たしていない。
生きたい、どんな些細なことでも良い……
生きて何かを果たしたい……!!
☆青年:なら、その「生きたい」という気持ちが本物ならば……
そんな運命、クソくらえだ!
【シーン12】
☆アルト:うわあああああああああああ!!
△フィアンマ:きゃ!
▽グリム:
☆アルト:いてて……ぐっ!
△フィアンマ:アルト様!!
☆アルト:良かった……
△フィアンマ:何をしているんですか!
腕から血が……
☆アルト:大丈夫、こんなのかすり傷、だよ……
△フィアンマ:何を言っているんですか!
今すぐ手当てを――
☆アルト:いや、そんな時間はない……
△フィアンマ:でも!
☆アルト:大丈夫……ここは、僕に任せてください……
△フィアンマ:お待ちくださ――いっつ!
足が折れて……こんなときに……
☆アルト:ブラックドッグ! お前の狙いは、僕だろ?
だから……これ以上、彼女には手を出すな。
▽グリム:……驚いたな。
☆アルト:えっ?
▽グリム:使い魔を
使い魔は道具だ、道具を守るなんて意味ない事だ。
☆アルト:道具……?
▽グリム:そうだ。
俺たちは、
野垂れ死ぬか、
生き残る道しかない。
使えない道具は死ぬしかない。
どんな理不尽であっても、それを
受け入れなければいけない。
――それが
全ての事象は必然だ、弱いからこそ死ぬんだ。
☆アルト:ふざけるな!
▽グリム:っつ!
☆アルト:何が掟だ! 何が必然の事だ!!
そんな生き方、認める訳にはいかない!
それが運命なら、そんなの――クソくらえだ!!
△フィアンマN:あの時の光景が
あぁ、やっぱり……
☆アルト:それに
罪悪感を感じ、苦しんでいるのを!
▽グリム:お、お前に……人間であるお前なんかに何がわかる!!
その口を閉じろ!
『デクルティエン・バーゲスト』!!
△フィアンマ:アルト様! 逃げて!!
☆アルトN:自分の行動に驚いた。
立ち向かう自分がいる。
でも……不思議と
これ以上、自分のせいで誰かが傷つくのが嫌だった。
影が迫る、自分を食い殺す
◇オベロン:全く、キミには本当、驚かされるよ。
☆アルトN:突然の声に時が停まるような感じがした。
この声に、僕は聞き覚えがあった……
◇オベロン:
でも、このままだと、死ぬよ?
どうするんだい? 策はあるのかい?
☆アルト:策は……ない。
◇オベロン:おいおい……
☆アルト:さっきまでは、ね。
説教するために来たんじゃないんでしょ?
【
◇オベロン:ぷっ! あははは、全く!
言ってくれるじゃないか!
やっぱりキミは本当におもしろい!
物語を此処で終わらせるのは惜しい。
――アルト、君に〝ある言葉〟を教えよう。
ただ、それを口にしたら最後……君はもう後戻りは出来ない。
かつての平凡なる人生は尊いものだ。
それに終わりを告げ、過酷な運命が待ち受けるだろう。
死ぬ事よりも辛いことかもしれない。
それでもいいのかい?
☆アルト:……不安がないのは嘘だ。
だけど、ここに来た以上……僕は覚悟を決める!
この選択は、自分の心に誓ったものだ!!
◇オベロン:わかった……その心、受け取った!
告げる言の葉は〝キミの決意の証〟であり、
そして〝運命を切り拓く力〟だ!
さあ、唱えろ! 精一杯大きな声で!!
☆アルト:――『開け、【
『その
△フィアンマ:その言葉――!
☆アルト:
――『
▽グリム:なっ……!
△フィアンマ:あの炎は……お母様の……!?
▽グリム:バーゲストの影を……燃やし尽くしただと……!?
くっ! 炎がこっちにも!!
……ここまでか。
☆アルト:炎よ、
▽グリム:炎が消えた……どうして……?
☆アルト:僕はキミを殺さない。
▽グリム:バカなのか!?
俺を殺さないと、お前は――
☆アルト:それでも殺さない。
▽グリムM:な、なんなんだ……アイツのまっすぐな
□カルタフィルス:ギャハハハハハハ!
お笑いグサだなァ!!
▽グリム:この声は……カルタフィ――ぐう!!
☆アルト:ブラックドッグ! 何をするんだ!!
□カルタフィルス:あたり前だァろ?
役立たずのツカイ魔なんて生きる価値モない。
安心シロヨ? 次ハお前ヲ殺してやるカラァ!!
☆アルトM:来る! さっきの力を使えば――えっ?
身体が、うごか……
△フィアンマ:まずい、慣れない
反動が……手出しをさせません!
□カルタフィルス:風ヨ、吹き飛べェ! 『ラファール』!!
△フィアンマ:かはっ!
壁に打ち付けられて……動くのが……ダメ、アルト様……
☆アルトM:ま、ずい……でも、このままじゃ……
□カルタフィルス:おいオイ、さっきの
うごカナいなら、コろしてヤルヨォ!!
△フィアンマ:いやあああああああ!
☆アルトM:ダメだ……間に合わな――
▽グリム:『デクルティエン・バーゲスト』!!
□カルタフィルス:ああああアアアアアアアア!!
おレの腕がああああああ!!
グリム、おまエエエエエエエエ!!
▽グリム:アンタには……命を救ってもらった、恩がある……
だけど……ソイツにも命を、救ってもらった……!
☆アルト:グリム……
▽グリム:ぐっ……ぐああああああああ!!
☆アルト:グリム!! なんだ、あの黒い影は……
□カルタフィルス:バカな奴ダ!!
強制ケイヤクの
ハンコウすれば、お前ハ
▽グリム:ああああああああああ!!
☆アルト:やめろ……
□カルタフィルス:アハハハハハハはははははは!!
弱イくせに逆らウかラダ!!
☆アルト:やめろおおおおおお!!
□カルタフィルス:オッ、立つコトが出来タか!
ダガ……フラフラと無様だな!!
☆アルト:開け……『
□カルタフィルス:殺してヤルヨぉおおおお!!
△フィアンマ:させない! 炎よ、守り給え!!
『ギール・フランマ』!
□カルタフィルス:こんな炎! キカナイ!!
☆アルト:その瞳は……
☆アルトM:負担は想像以上だ……
少しでも気を抜けば意識が飛ぶ……
けど――
☆アルト:けど……ここで、諦めたら……
一生、後悔することになる……!!
□カルタフィルス:シツコイ奴めええええええ!!
☆アルト:『その
来い! シオン・ケイト・ティールグリーン!!
◇オベロンN:そうアルトが叫んだ瞬間、魔法陣が出現する。
目をつぶる程の
〇シオン:――やれやれ。
呼び戻すのなら、もう少しゆっくりとした方法を
考えておきたまえよ。
少しは強引すぎないかい?
◇オベロンN:そこにはシオン・ティールグリーンの姿があった。
☆アルト:あはは……ごめん……
〇シオン:まっ、ヘマをしたのは私だからね。
責任はとるさ――【
□カルタフィルス:どうして、お前が此処にィ?!
〇シオン:おや? 驚きのあまりに正気に戻ったのかい?
私だって驚いている。
それはさておき……戻ったところで申し訳ないが、
□カルタフィルスM:一瞬で目の前に……!?
□カルタフィルス:や、やめ――
〇シオン:私は最高に、今! 機嫌が悪いからね!!
我が
□カルタフィルス:ぎゃああああああああああ!!
〇シオン:――そこで寝ていろ。
目が覚めた時は
さて……
☆アルト:遅い、ですよ……シオンさん……
〇シオン:すまないな、もう大丈夫だ。
フィアンマもよくやった。
これですべて――
☆アルト:い、いや……まだ、終わっていない……
〇シオン:ちょっと! 無理に立つんじゃない!!
☆アルト:最後にやらなきゃいけないことが――
△フィアンマ:アルト様! あぶない!!
☆アルト:フィアンマさん……ありがとう……大丈夫?
△フィアンマ:ご自身の事を心配してください!
今にも倒れそうじゃないですか!!
☆アルト:うん……ごめん……でも、彼を助けなきゃ……
〇シオン:アルト、あのブラックドッグを助けるのか?
少なくともキミを殺そうとした奴だぞ?
☆アルト:…………。
〇シオン:それに、奴にかけられた
いくら君が
それを取り除けるかどうかわからない。
もしかしたら、君にまで呪いが
☆アルト:それでも、彼のお陰で……こうやって僕は生きている……
だから、彼を助ける……それだけだよ。
〇シオン:ハァ……大馬鹿者め、
ミスター・お人好し、ちょっと待ってろ。
女神の加護よ、『ティール』
せめて
☆アルト:ありがとう……優しいんだね。
〇シオン:いいから、早く助けてあげなよ。
☆アルト:うん……フィアンマさん、申し訳ないんだけど肩を貸してもらってもいいですか?
△フィアンマ:もちろんです、アルト様。
〇シオン:――まったく、私もヒトの事が言えないな。
【シーン13】
▽グリムN:
まだ、自分がただの黒い犬でいた時の記憶。
飼い主はとてもお人好しで、困っている誰か
を見つけては必ず助けていた。
いつかは悪い人間に騙されるんじゃないかと、
ヒヤヒヤしたのを覚えている。
でも――そんな彼が大好きだった。
毎日が楽しくて幸せな日々だった。
だから、死んでしまった時はとても悲しかった。
「どうして自分を置いて逝った!」
――何度も何度も悲しみの遠吠えをあげた。
そして、雨の日も、雷の日も、雪の日も墓の傍に居続けた。
ある日の事だった――
◇オベロン:君が話題の
▽グリムN:【
◇オベロン:君も気付いているんじゃないのかい?
自分がただの犬じゃないということに。
▽グリムN:【
俺が妖精・バーゲストの
〝妖精の國〟に来ないかと誘ってきたが、俺は断った。
◇オベロン:残念だよ……まあ、やっぱりそうなるよね。
それじゃあ! お元気で!!
――おっと、忘れてた!
君にひとつ、伝えたい事があったんだ。
▽グリムN:そう言って、奴は愉快そうな笑みを浮かべてこう言った。
◇オベロン:〝彼女〟の言った通りならば、教えてあげないとね。
――君は、近い未来にひとりの人間に出会うだろう。
人間と、妖精と、そして世界を救う【
人間と妖精の間に産まれ、【
そして、キミの一生涯の友となるだろう。
そこに眠る、飼い主にソックリなお人好しさ!
(間)
▽グリム:んっ……ここは……?
△フィアンマ:気が付きましたか?
▽グリム:お前は、あの人間の――ぐっ!
△フィアンマ:無理に動かないでください!
さっきまで呪いで苦しんでいたんですから。
▽グリム:えっ……そうだ、俺は!
カルタフィルスに逆らって、呪いが発動して……
どうして生きているんだ?
△フィアンマ:アルト様……マスターのお陰です。
▽グリム:マスターって……アイツが助けてくれたのか……?
△フィアンマ:本当にびっくりしました。
呪いを浄化させるだけではなく、あなたと
契約するなんて……
▽グリム:えっ?!
△フィアンマ:呪いを解除しても、あなたは消滅する運命でした。
ですが、マスターはあなたを死なせまいとするため
に契約を結んだのです。
全く、本当にお人好しなんですから……
(※小声で)ニニアン様そっくりです。
▽グリム:契約……
△フィアンマ:お着替えはそこに置いてありますから。
動けるようになったら、居間に来てくださいね。
▽グリム:――行っちまった。
俺、また助けられたんだな……
【
アイツが――
【シーン14】
〇シオン:まったくキミという人間は!
☆アルト:それは何度もゴメンって言ってるじゃん!!
〇シオン:いざ、
たまたま
……それがなかったらどうするつもりだったんだ。キミは?
☆アルト:えーっと、それは……
〇シオン:まったく、
それじゃあ、いくら命があっても足りない。
自殺志願者なのかい?
☆アルト:ごめん……次は気を付けるよ、シオンさん……
〇シオン:……いまいち信用出来ないがな。
どうせ、またやるんだから。
まあ、いい……それよりも、だ。
アルトリウム・エムリス。
私が君を尋ねた理由を伝えなければいけない。
結論から言う――君の力を貸して欲しい。
☆アルト:僕の力を……
〇シオン:正確に言うと、キミの〝
私は……いや、我々は〝ある物〟を探している。
――その名は、『マギウス・アーティファクト』。
謂わば、〝魔法道具〟というやつだ。
☆アルト:『マギウス・アーティファクト』……魔法道具……
〇シオン:魔法は
魔法が使えない者にも同等の力を授ける。
それが何処かに存在するのだが……
厄介な事に中々見つけられなくて困っている。
そこにキミが現れた!
の妖精などの
これは私たちにとっては助け船だ。
だからこそ、君に協力を要請する。
☆アルト:…………。
〇シオン:もちろん、タダとは言わない。
対価として、ニニアン・エムリスについて。
キミの母君についての情報を集めることに協力しよう。
☆アルト:それは……!
〇シオン:この取引は私にとっても、キミにとっても悪い話じゃない筈だ。
もちろん、私は約束を守る人間だ。
どうする?
見知らぬ地で、独りで情報を集めるのは困難なことだと思うけど?
☆アルト:……わかりました。
此処に来たのも、母さんについて調べるためです。
自分の力が役に立てるのなら。
〇シオン:随分と早い返答だな。
もう少し悩むモノだと思ったのだが……
安請け合いしすぎる人間なのか?
☆アルト:なんで困っているんですか……
まあ、正直悩みましたけど……
でも、シオンさんの言う通り、悪い話じゃないですし。
それに――
〇シオン:それに? なんだい?
☆アルト:拒否権なんてないんですよね?
〇シオン:どうして?
☆アルト:……すいません、【
その、心の中が……視えちゃったので……
〇シオン:キミ! セクハラだぞ!!
デリカシーがないんだな?!
このバカ!!
☆アルト:ごめんって!
〇シオン:……次、また心の中を視たら
一応聞いておくが……他に何が視えたのか?
☆アルト:い、いや、特に――
〇シオン:ほ・ん・と・う・だ・な?
☆アルト:(※勢いよく頷く)
〇シオン:そ、そうか……なら、いい!
△フィアンマ:よ・ろ・し・い・で・す・か?
☆アルト:うわぁ!? フィアンマさん、いつから……
△フィアンマ:どうやら、お楽しみでしたので!
邪魔したら悪いなって思ったんですけどね!!
☆アルト:えーっと……フィアンマさん?
△フィアンマ:なんでしょうか?
☆アルト:どうして、怒っているんですか?
△フィアンマ:怒っていません!
☆アルト:怒っているじゃないですか!
▽グリム:……あ、あのさ。
☆アルト:グリム! 良かったんだ、目が覚めたんだ……!!
▽グリム:あっ……ああ、まあ何とか。
☆アルト:本当に良かった、無事で……良かった……
▽グリム:
それよりも聞きたいことがあるんだけどさ。
☆アルト:なんだい?
▽グリム:どうして、俺を助けたんだ?
☆アルト:えっ?
▽グリム:俺はアンタを殺そうとした。
それにアンタを助けたのだって、借りを返しただけだ。
……別に、そこまで、しなくても。
☆アルト:違うよ、グリム。
僕がキミのことを助けたかっただけだ。
▽グリム:えっ?
☆アルト:自分勝手なことをしたって理解はしている。
けど……なぜだろう、「このまま死なせちゃいけない」って思ってさ。
〇シオン:ブラックドッグ、そこにいる青年は底抜のお人好しなんだよ。
自分も呪いがかかるかもしれないのに、だ。
それを一切考えず、君を助けた。
▽グリム:お人好し……アンタ、名前は?
☆アルト:アルトリウム、まあ周りからアルトと呼ばれているけどね。
▽グリム:……そうか。
なあ、アルト……俺を、アンタの使い魔にしてくれないか?
強制契約ではなく、正式な契約として。
☆アルト:もちろん、嬉しいけど……キミはそれでいいのかい?
▽グリム:……アンタには二度も助けられた。
それに、あのヒトにそっくりだからな。
☆アルト:あのヒト?
▽グリム:何でもない……んっ?
なんだ、その手は……
☆アルト:握手だよ、友人としての。
▽グリム:だから、俺は使い魔だって――
☆アルト:それでも、だよ。
▽グリム:……意外と強情なんだな。
☆アルト:よく言われるよ。
改めてよろしく、グリム。
▽グリム:あぁ、こちらこそ。
〇シオン:ガヴィージャの
おや~? どうしたんだい?
さっきよりも不機嫌そうな顔をしちゃって~
△フィアンマ:ナンデモアリマセン。
〇シオン:――独占、出来なくて残念だったな~
△フィアンマ:なっ! ななななにを言っているんですかー!!
〇シオン:嫉妬の感情が駄々漏れだ。
△フィアンマ:くうううう!
〇シオン:君も主人に似て愉快なヒト……いや、
△フィアンマ:うるさい! です!!
〇シオン:あはははは!
〇シオンM:……そういえば、すっかりと忘れていたが。
カルタフィルスを逃してしまったのはどうするか……
まあ、
ただ……どうして、アルトを狙った?
あの口振りだと【
でも、アルト自体を狙っていたことは確かだ……
となると――本当の黒幕がいる。
だけど、それは誰だ?
(間)
□カルタフィルス:ハァ……ハァ……
くっそ……どうして傷が治らない……!
いってぇ、いってぇよぉ……
俺は不死身であるはずだ……そのはずだ……
どうして、意識が朦朧としている?
どうして、息が苦しい?
◇マジスター:それは君の
カルタフィルス。
□カルタフィルス:マジスター……いや、アレ――ぐふっ!
◇マジスター:良くないな、実に良くない。
役に立たないキミに僕の名前を言う権利はないよ。
……それにバカだね~
今のキミでは
物語を
□カルタフィルス:あっ、あっ……剣が胸にィ……
◇マジスター:さようなら、さまよえるユダヤ人。
此処がキミの
□カルタフィルス:あぁ、消える……身体が消える……
いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ……
◇マジスター:……消滅した、か。
まあ、今回は失敗に終わったけれども、大きな収穫だ。
やっぱり弱い相手を
ほうがボクには性に合う。
ただ、
種は蒔いた。
――【
最後に全て台無しにしてあげよう。
(END)
Episode.02 → (製作中)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます