学童保育の先生のオモシロ楽しく、そして苦しい日々の奮闘記

タイトルからは分かりにくいのですが、この作品は決してエッチな物語ではありません。
少年愛者であることにコンプレックスを抱いている、学童保育の「ルカ先生」の日々の奮闘記です。
軽快な文章で綴られており、オモシロ楽しく、そして、時々、考えさせられる名作です。


低学年の男の子が通う学童保育に、少年愛者の先生がいるなんて、問題があるのではないか!?
そう思う方もいらっしゃると思います。
何しろ、ルカ先生本人からして「こんな自分が指導していいのだろうか……」という思考の持ち主です。当然のことながら、少年愛者であることは周りには隠しています。

彼は、自分が迷惑をかけないようにすることは勿論、子どもたちができるだけ、のびのびと過ごせるようにと、日々、真面目に考えています。
お気に入りの子がいるのですが、その思いは自分の内側だけに秘め、決して表には出しません。


例えとして適切ではないかもしれませんが、「猫好きは決して、猫に悪いようにはしません」。
無理矢理にかまったり、猫のしたいことを邪魔したりしません。しかし、欲しがるだけオヤツを上げたりはせず、心を鬼にして決まった量を守ります。――それが、真の猫好きです。

ルカ先生も同じなのです。
真の少年好きの彼は、常に子どもたちのためだけを思って行動します。しかも、甘やかすだけではなく、叱るときには嫌われるのも覚悟で、きちんと叱ります。
少年愛者だからこそ、ここまでできる、と思わざるを得ません。
こんないい先生に、問題があるわけがありません。


過度なスキンシップは問題があるからと、この学童では「先生のお膝に、子どもを乗せるのは禁止」と決まっています。
ルカ先生は、このルールを頑なに守ります。
しかし、平気な顔で違反する先生もいるのです。特に女の先生は「どこが悪いの?」という態度です。
ルカ先生は理不尽に思いつつ、ぐっと我慢します。
そのときの彼の気持ちは、職場や学校で理不尽な思いをしている人、特に、きちんと規則を守っているからこそ、馬鹿を見る羽目になってしまうタイプの人には、きっと共感できると思います。

また、低年齢の子どもたちは、下ネタが大好きです。
だからといって、頭ごなしに「ダメ」ではいけない。なぜ「ダメ」なのか、を教えることが大事だと、ルカ先生は思っています。
子どもたちが悪ふざけで「エッチ」な言動をしたときは、もっと自分の体を大事にしてほしい、と彼は願います。
そもそも、「エッチ」とはなんだ? と考えたりもします。

少年愛者だという引け目があるからこそ、ルカ先生は大真面目に、「人間」について考えることができるのだ――読み進めていくうちに、そんな気がしてきました。

読み始める前と、あとで、ルカ先生に対する印象がガラッと変わります。
とても深く、考えさせられる作品です。