オタクな俺が、別次元の君に恋をする。

梓衣ユウ

0コマ目

『私、君の事好きなんだよ!』


 今まで何十回、何百回、いやそれ以上聞いてきたであろうセリフ。

 こんなベタな展開のセリフでは心を動かされる事なんてない、そう思っていた。

 だけど、そのセリフを言う、俺の目の前にいる君は輝いていた。二次元のキャラじゃない、君だから輝いて見えた。

「あのー、夜輝ほたるくん……? 次、夜輝くんの台詞セリフだよ?」

 目の前の君に立ち尽くす俺に声は届いていなかった。

「もー、夜輝ほたるっ!」

 決して演じることのない、いつものフワフワした声で初めて呼ばれた呼び捨て。

 その耳馴染みのない呼び方で俺はようやく現実に戻った。

「あぁ……悪い。考え事をしていた……。もう一度大丈夫か?」

 オタクな俺が別次元リアルの君に恋をしてしまった、なんて言えるわけもなかった。

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