075

茂みに飛び込んだアオネの手に冷たい金属が触れた。それを夢中で掴んで、頭上に向かって引き金を引く。

鼓膜をつんざくような音がした。手が反動でじんじんと痛んでいる。直後、鳥居越しの夜空に光の花が咲いた。花火の音が鳴る。

「あれっ、クソっ、偽物かよ!」

アオネの玩具のピストルを掴んだ男はわめいた。アオネは本物のピストルを構えたまま男から距離をとり、走っても追いつけない距離まで離れたところでくるりと踵を返し、屋台の並ぶ明るい祭の方へ駆け出した。

「ちくしょう!」

男は見えなくなったアオネに向かって悪態をつき、玩具のピストルを地面に投げつけた。

アオネはカバンにピストルを入れた。走ったせいで乱れた呼吸を整える。祭の人々の目は花火に釘付けで、アオネの弾んだ息は気にも留めなかった。

アオネは神社を出て、家に戻った。


『本物のピストル』を取得しました。Cの欄に『本物のピストル』と記入してください。


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