第6話 とんでも初依頼?

 セバスに船の換装を任せて、俺はメイと一緒に総合ギルドへ戻ることにした。


 その道中、メイが俺のマルチギアを通してギルドの依頼を確認してくれた。


 ギルドに出されている依頼で、荷物の容量が少ない物と言えば、支援物資と呼ばれるものが多く、依頼する組織がボランティアに近い集団であるため、依頼するお金があまりないところが多いようだ。


 普通なら誰も受けないだろう依頼だが、こういう依頼は信頼度のようなモノがあがり、一定数以上依頼を受けると、優先的に依頼を紹介してもらえるようになるらしい。


 定期的に受けないと依頼を紹介してもらえなくなるようで、カーゴの容量に余裕が出てくるクラス6以上の船を持っている、輸送系の依頼を受けるプレイヤーが、同じ目的地の依頼を受けて、少し空いたカーゴの中に乗せていくのが主流らしい。


 後発の俺は、どうやって稼ぐのか……


 単価の高い依頼やその地域で余剰に生産された物を安く買い、高く売れる場所へ持って行くという形が多いようだ。船の足に自信があるなら、レアメタルなんかも運ぶそうだが、小型船だとリスクが高すぎるため、あまり推奨されていないそうだ。


 メイン航路では、野良の宙賊はほとんど出てこないが、たまに強敵(プレイヤー)の宙賊が狩りをしていたりするので、しっかりと情報を集める方がいいみたいだな。


 話をしている内に、総合ギルドに戻ってきた。早いお帰りだな。


 余談だが、総合ギルドまでは距離が短いので使わない移動方法だが、少し距離のある場所へは、モノレールのレールを小さくしたような物を使ったレールと、小型のモノレールのような箱を使って移動できるようになっている。


 内装は観覧車のように2~4人乗りのサイズで、行先を指定するとそこへ自動的に移動してくれるようだ。宇宙港やコロニーには、自走車は無く移動は公共の物しかないんだとさ。


 数十分ぶりに戻ってきた総合ギルドでは、相変わらず庁舎のような堅苦しい雰囲気が漂っていた。


 先ほど対応してくれた受付の人は忙しいようで、空いていた受付に話を聞きに行くことにした。


 依頼を受けたい旨と船の情報を提示して、初心者でも可能な依頼がないか探してもらうことにした。メイの情報とマッチするようなものが出てくれば、受けてみようと思う。


 ……あれ? 俺って船の操縦できるのだろうか?


 そこらへんは何とかなるやろ!


 情報を確認している受付の人の動きが止まっているので、見てみると驚いている様子だ。何にそんなに驚いているのだろうか?


「えっと、すいません。船について確認したいのですが、この情報は本当に正しい物なのでしょうか? クラス2の船にクラス4の武装がつくことはありますが、カーゴが特殊船倉というのは本当でしょうか?」


 俺は良く分からないので、メイをチラッと見ると頷いてくれた。本当に凄いアンドロイドだな。


「マルチギアにある情報を書き換えることは、非常に困難だと思います。それと、ご主人様の船は実験船ということで、特殊な強化装備を追加で受け取っています。それを今換装しているので、実際に船を確認してみてください。ポートは……番です」


 そういうと、受付の人がタブレットのような物を取り出し、俺の許可を得て俺の船のあるポートの映像を確認し始めた。


 それにしても、人間味のある対応だな。俺がやってたゲームは、定型文で話すことはあっても、こんなに自由度の高い対応はしてなかったはずなんだけどな。使われているシステムが優秀なのかな?


 このシステムを使えば、高度な受け答えができるAIが作れたりするのだろうか? 現実では、受付業務をAIがしている会社もあるようで、進んできてはいるがこんなに自由な受け答えは出来なかったはず。


 受付にAI使っている取引相手の会社の人に聞いてみたことがあるのだが、クレーム対応が楽になったと言っていた。クレーマーのような人に対しては、かなり効果を発揮しているらしい。


 AIということで、やり取りを映像で記録する必要があるので、その映像をリアルタイムでクレーマーの見ている画面に出すことで、大体は大人しくなるそうだ。


 現代では個人のやり取りでなければ、リアルタイムの本人の映像がないと繋がらないようになっているので、クレーマー自体は減ってきているのだが、それでもゼロではない。


 逆ギレして脅してくる場合もあるので、そのまま警察へ通報され場合によっては捕まるそうだ。AIにも脅迫罪が適用されるようになり、かなり快適に仕事ができるようになったと言っていたっけな。


 リアルの事を考えていると確認が終わったようで、依頼の話をしてくれた。


「急遽、特殊船倉で運ぶ必要のある荷物の依頼があるのですが、運べる船がなく困っています。運べる船があれば、ギルドから護衛を出してでも運びたいものです。それを運んでもらえないでしょうか?


 ナインヘッド様の船のサイズであれば、護衛艦の中に入れて移動できるので、いるだけでも構わないのですがいかがですか?」


 そうするとメイが、


「依頼の件は分かりましたが、報酬や護衛の料金はいくらほどになるのでしょうか?」


「こちらの依頼は国からの依頼ですので、護衛は軍が行ってくれますので、依頼者が無料で護衛を出してくださるかたちです。報酬はこのくらいになりますが、いかがでしょうか?」


 うん、俺には依頼の値段の良し悪しなど分からんから、メイに任せておこう。だけど、1つだけ気になることがある。


「すいません、1つ聞いてもよろしいですか? 国が依頼を出しているようですが、国であれば特殊船倉のような装備のある船もあるのではないでしょうか?」


「ナインヘッド様は、御存知が無いようですね。国などで特殊船倉が必要になるような荷物の輸送はほとんどなく、コストパフォーマンスが悪いのです。民間に委託して、それに護衛艦をつける方が安上がりなのです」


 ……そんな高価な装備なのか? えっと、初期の強化パーツだと思って装備させちゃったけど、維持費とかバカ高いなんてことはないよな?


 交渉はメイに任せて、マルチギアを使いセバスに、どのくらいランニングコストがかかるのか、連絡を飛ばしてみた。


そうすると、『今換装している特殊船倉は、ナノマシンが組み込まれており、船が大破してもある程度原型が残っていれば、素材を準備すれば自動で修復されます。壊れない限りは、エネルギーを供給するだけで問題ありません』だってさ。


 スターターパックとはいえ、ちょっとチート過ぎないか? この依頼も、俺に合わせて発生した特殊な依頼だったりしないよな?


 バグとかだったら怖いので、一応運営に報告しておこう。



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