『外出許可が降りない理由3』

 後日、第二女子寮、私の部屋にて。

 私は市子に向かって胸を張って見せた。


「見て、市子! 谷間があるわ!」


「よかったですね!」


「こんないいブラがあるなら、最初から教えなさいよ!」


「気に入って貰えたようでよかったです!」


「これは間違いなく、Cカップくらいに見えると思わない?」


「そうですね、見えると思います!」


 いやぁ、まさかブラ一つでこんなに変わるなんて思わなかった。

 サイズアップブラなんて、どーせパットを詰め込んだだけのものだと思っていたら、大間違いだった。

 シリコンブラを使って、脇の肉を寄せれば谷間が出来るし、それをパット入りのブラで補強してバランスを整えれば、私でも綺麗な曲線美を描ける。


 さらに、私は育乳ブラというのも購入した。

 これはナイトブラなのだけれど、なんとコレを着けて寝るだけで胸の形が整い、さらに大きくなるという、信じられないような素晴らしいブラなのだ。

 ふっ、昨日までの私とはもう違う。

 胸が大きくなれば、心に余裕が出来るということを知った。文字通り、器が大きくなった。平皿から、お椀へと。

 バストだけ第二次成長が来ていない音羽ちゃんとは、今日でもうお別れね。


「そういえば、今まで聞かなかったのだけれど、市子は何カップなの? アンダーが65なのは知ってるけど」


「どうしてカップ数は知らないのに、アンダーは知ってるんですか?」


「私の部屋に泊まるのはいいけど、ちゃんと私物は持って帰りなさい。ブラを置きっ放しにするからよ。ちらっとアンダーだけ見えたの。カップ数まで見ちゃうと、後悔することになりそうだったから、見なかったけど、今ならイケる気がするわ」


「本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫よ」


「後悔しても知りませんよ?」


「しない、しない」


「じゃあ、教えますわね」


「いつでも来なさい」


 私は「大丈夫」と自分に言い聞かせた。今の私には谷間がある。しかもCカップ相当だ(擬似だけど)。もちろんそれでも、市子との差は歴然だけれど––––そんなに離されてはいないと思う。

 だから、大丈夫なはず……。


「Iです」


「……萎めばいいのに」


 それからしばらくの間、私は市子の胸を見るたびに『後悔』という二文字を思い浮かべる羽目になった。

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