共有型経済の導入過程について

 共有型経済の導入過程は、複雑極まる。それは、新たな商品やサービスを社会に提供していくからではない。今あるものをお金により、自分のものにしていこうとするからでもない。資本主義に代わる新しい経済システムを、この国で確立しようという類を見ない試みだからだ。だから、会社を興して儲けるという起業は選択肢から外れ、最大数億円のお金しか集まらないクラウドファンディングも行わない。政治家全員に呼び掛け、社会全体で取り組み、実現する他は無いのである。まさに、無謀な挑戦だと言ってもいい。しかし、試みである以上、導入過程くらいは明確にしておきたいところだ。


 まず、同志を増やす。これが最初の過程だ。実現のためには、共有型経済を良い考えだと受け止めてくれる人々を作ることが重要になってくる。知り合いでもいい。友達でもいい。誰でいいから、共有型経済の利点や課題を過不足なく話したうえで、理解し、協力してくれる人脈を形成することがカギになる。


 そうしたら、SNSやブログ、オンラインサロン、動画などを通じて、共有型経済の概要を発信していく。この時点では、政治家などではなく、一般国民を対象として考えの浸透を図るため、大まかなところだけを掻い摘んで説明できれば十分だ。


 次に、共有型経済という考えが広がり、メディアでも取り上げられるようになったら、もう頃合いだと言ってもいい。今度は、政治家に浸透させる番だ。この時は、掻い摘んではなく、より詳しく説明することを意識する。これは、いわゆる普通の政策ではない。日本の経済的概念をひっくり返しかねない大きな構想であるため、丁寧に、詳細な部分を説明することが不可欠ではないかと私は考える。


 そうして、その次は、共有型経済を支持する候補者を、有権者の力で次々に当選させていくことだ。もちろん、自分で立候補するのも全然アリである。だが、日本で政治家になるため立候補するには、供託金が必要で、一定票に達さない場合は、その金額が没収されてしまうので、その点は留意してもらいたい。言うなれば、貧困層排除の悪しき制度。生活が苦しいはずの国民こそ、政治に参加するべきなのに、供託金制度があるせいで、選挙に立候補するという選択肢が自動的に外れる。この制度はぜひとも見直してもらわなければならないが、今は共有型経済の説明途中。さて、話を戻そう。


 共有型経済を支持する候補者を政治家として当選させたら、国会や議会に送り込み、新たな経済システムである共有型経済を始める準備をしてもらう必要がある。具体的には、法案整備や、株式会社の強制的終了だ。なぜなら、私有財産の原則禁止を掲げつつ、共有という手段により貧困の解消を目指す共有型経済に、より良い商品やサービスを提供し、お金という名の利潤を追求する株式会社の価値観は、どうしても合わないからである。つまり、共有型経済の始まりと同時に、拠点を海外に移すか、共有財産としての会社に生まれ変わるかの二択を迫られることになるが、これは、仕組み上、仕方ないことだ。そう思って理解してもらうしかない。


 そうして、資本主義をやめて共有型経済になると決まれば、本格的に動かなければならない。この際、株や投資信託、仮想通貨というものは、私有財産でなければならないものを除く、全てのモノは共有するという理念を掲げる共有型経済下では、何の意味も見出せなくなる。したがって、無価値同然だ。


 紙幣の流通量、効果の流通量を段階的に減らしていき、代わりに共有ポイント、返済ポイントという仕組みを徐々に普及させていく。使用割合を増減させるというより、決まった場所で紙幣や硬貨が使えなくなり、決まった場所で共有ポイントを使えるようにするというイメージに近い。


 そこで、シェアリングすることがすでに普通となっている傘や、携帯バッテリー、自転車等の分野から、共有型経済を始めて、その規模を年々、拡大させる。あまりに移行期間が短すぎると、様々な側面でトラブルを生みかねない。それを考慮したとしても、導入開始から、完全移行まで10年もあれば、充分だと言えるだろう。

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