実験終了の翌日

「いや、だめなの! 待ってお願い!」


「だめよ裕子ちゃん。ほらもうオムツ脱いでるんだから」


「本当にだめなの、おトイレでおしっこするのだけは!」


「何を言っているの。さ、しーしーしましょ」


 そうして、先生に無理やりトイレに座らされた私が……










「……夢……なの?」


 次の瞬間。

 私は見慣れた自宅の天井を見た。


(もう……おトイレ行っていいのに……)



 5年。

 トイレでオシッコをすることは、収入が消えることに繋がる日々。


 幼稚園を上げて、私にトイレに行けるよう教育にしにくる環境で、本当に怖かった。

 利尿剤を使っていた頃はそんな移動する余裕など与えないペースで尿意が高まった。

 だが無しになってからというものの、そのゆっくりの尿意は、漏らすまで本当に長時間辛い思いをしたものだ。


 

(そういえば、妙にスッキリ……!?)



 利尿剤を飲んだ日から、はじめて熟睡した。

 一度も目覚めなかった。


 今日まで、尿意で目覚め、オモラシしてからまた寝るという日々だった。

 それが、一度も起きることがなかった。




 つまり。


(なんで今頃……)






 私は、ついにおねしょし、睡眠不足の悩みから解き放たれた。

 

 その代償は、利尿剤使用時以来初めての、オムツの飽和だった。

 布団の中での飽和であった。

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