新学期と新おむつと、新目標

 前のオムツほどではないが、このスカートはオムツを隠せていない。


 ただし、少しでも段差に登れば……

 一度でも漏らせば、そのオモラシサインが顔を出す絶妙な状態になった。




 二学期初日。

 もう、私はオムツを溢れさせるような無様なことはしない。



 

「リサ……ごめんね。

 また、お世話をお願いすると思うから」


「大丈夫……お母さんは私が守るから」



 

 娘の進学の目処が立った。

 借金完済の計画も立った。


 いや、完済どころか、数年で働く必要すらなくなる。



 あとは、おねしょだけ。

 これだけ、どうしても起きてしまう。


 

 未来は明るい。明るいはずなのだ。




 朝なのにまだ暑い中、以前の何倍も涼しいお尻で、幼稚園のバス乗り場へ、二人で向かった。


「あ、お母さんもうやっちゃったの?」



「どうしたのリサ」


「どうしたのじゃないよ漏らしちゃってるよ……」



 ……いけない。

 オモラシの自覚すら出来なくなるわけには行かないのだ。


 一線だけは超えない。

 それが、大学との約束。


 ……大学の人ら曰く、本当にまずい精神状態になっていたらしい。

 本当に夏休みの最後当たりは、カウンセリングの日々になっていた。



「先生たちと一緒に、おトイレ行けるように頑張ろうね」


「うん、頑張るわ」



 そう、頑張って良いのだ。

 トイレに行きたい、と認識できるようになる辺りまでは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る