娘の手と、カエルさん

「はい、今はずしますからね。

 裕子ちゃん、もしあばれたらオムツ替えは中止ですからね。

 一日中、オシッコまみれのオムツあてるはめになりますよ。わかった?」


 年長の子の指がテープに掛かる。

 裕子のおむつは、国営放送の「ハッピーくん」と呼ばれるキャラクターが大きく描かれた物だ。



 ビリッ……ビリッ……

 テープのはずれる乾いた音が響く。

 言っていた通り、おむつ替えは本当に慣れているらしい。


 

「あぁぁ、いやぁぁ…………」


裕子はうなされたように首を左右に振った。


「お母さん、我慢して」


 手を振りほどくわけにも行かず思いとどまった。


(そうだ……この子の為にやっているんだ……)


 前当てがゆっくりと持ち上げられると同時に、空調の効いた冷たい空気が裕子の下腹部を包みこむ。

 思わずゾクッと全身に鳥肌をたてる。


 無毛だった。

 どういうわけか、私は生えてこないのだが、それはどうでもいい。


 ずっと漏らした紙おむつにくるまれていたせいで、下腹部は濡れ蒸せかえっていた。

 そこへひんやりした空気を感じた。

 本当に、オムツ以外は美しい成人女性のそれである。


 同性であっても見惚れる、一児の母とは思えないヒップライン。

 それをオムツと園児服が台無しにしていた。



 大勢の注目の中おむつを替えられている。

 撮影されている。

 幼稚園児におむつ替えされている。

 娘に、それを見られている。


「わぁ……お母さんのおむつ、ほんとにビショビショだぁ」


 悪意のない言葉が、なおも裕子をおそう。


(お願いっ、見ないで……!)


 裕子は心の中で叫び続けた。

 さらに裕子を絶望の淵に追いつめるような声が響いた。


「こんなにグッショリ…………よくがまんできたね」


 そう口にしながらも、年長の子は表情ひとつ変えずに、そっと前当てを持ち上げた。

 その仕草はまるで、赤ちゃんのおむつを交換し慣れた母親のようでもあった。

 ただよう異臭も、裕子の体内から排出された液体にまみれたオムツを手にすることにも、なんの抵抗も感じていないようであった。


 だが、裕子はそれどころではない。

 視線が、カメラが、自分の股間に集まっているのだ。

 少しでもオムツを隠そうと、思わず両脚をすり寄せようとする。


「だめだめ、裕子ちゃん」


 年長の子が、裕子の両足の間に入る。


「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、足はひろげててね」


 そういうと、裕子の左ひざ裏に手をかけた。

 この言葉に合わせるかのように、もう一人の子も右ひざ裏に手をかける。


「そうそう、しばらくカエルさんのようにしててね」


「あっ、ダメ!」


 思わず裕子は叫んだが、その時はもう遅かった。

 二人はいやがる裕子の両膝を床につけたまま、すばやく左右に押し開く。

 裕子は思わず抵抗を試みたが、膝関節の裏から押されては逆らいようがない。

 たちまち、ぶざまなガニ股スタイルにされてしまった。


「いい子ね、裕子ちゃん。

 おむつ替えてもらう時は、いつもお脚はこのスタイルよ。

 おぼえててね」


「いやぁ、いやぁ…………」

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