学年集会 防衛戦のルール説明



「さて、まず――諸君はここに入ることは初めてだろうから、ここが何なのかを説明したいと思う」



 一学年全校生徒、154名。

 その全員が集められた広い講堂の前で、教官はそう告げる。



「この学校の広大な構内には、諸君ら学生が立ち入れない施設がいくつか存在する。北方にある立ち入り禁止区域は入学時に説明されたと思うが、それ以外にもMERFI (Metanatural and Extraterrestrial Research Federal Institute)の研究所や統合軍の監視所、異常物品管理局の保管施設などの立ち入りは制限されている。それらはおおむね、機密保持や重要物品の保護のため、そのような措置が取られている」



 教官はぐるりと全員を見渡し、



「――ここも、そうだ」



 そう言った。



「安保庁は様々な異常物品を管理している。それは無意識の改変能力で生み出された危険物であったり、外来脅威、あるいは外来脅威生物のもたらしたものであったり様々だ。ここに保管されているのもそれら異常物品の一つ、その名も――『アルタレルム』」



 教官の背後にあったモニターに、アルタレルムの姿が映し出される。側面に『03』と刻印された、黒いキューブのようなコンピュータ。外部の機械につなぐためのいくつかの端子がついている以外には継ぎ目がなく、人工的に作られた機械とは一線を画すような異質感がそこにはあった。



「さて、モニターを見てもらうと、アルタレルムにポッドがつながれているのが見えると思う。察しの言い諸君ならもう気づいたと思うが――、そう、これはVR機だ。と言っても諸君らが訓練に使用する汎用型とは原理も性能も大きく異なる。これは、完全に現実世界を模倣した仮想世界を作り出す」



 教官の説明を受けて、一部の生徒が驚いたようにざわつき始める。

 それもそのはず。最新の技術が惜しみなく投入された汎用機――生徒が使用したことのある中でも最も完成度の高いVR機ですら、それが再現する空間には感じて分かるほどの誤差が生じてしまうのである。

 完全に現実を再現する。それは現代の技術をもってしても、明らかに実現不可能なことだった。


 ざわついた生徒たちを、教官は一度咳ばらいをして彼らを黙らせる。そして補足説明をするように口を開いた。



「先に述べたと思うが――これは異常物品である。安保庁長官、『世界最強』の超能力によって生み出され、今の技術では再現はおろか原理の解明すらできていないものである。故に現在、ここを含む五つの教育機関にのみこれが存在している。何のためか――?」



 教官は息をおいて



「むろん。諸君らのためだ」



 完全なる仮想世界を用いて何をするか?その問いに教官は答える。



「諸君らには今回、これを用いて評定戦を行ってもらう。君たちはもうすでに一度、評定戦を経験してもらっているが、あれは言うなれば『お試し』だ。痛みもなくゲームチックな仮想世界の中でいくら戦おうとも、それは現実味を欠いている。今回――と言うよりこれから全て――の評定戦はよりリアルな『実戦』の訓練となる」



 半年前の評定戦。汎用型のVR機を用いて行われたそれは、入学したての一年生たちにとって衝撃の出来事だった。


いくら痛みがないとはいえ――同級生同士に本気で攻撃しろと?


 しかしそれすら生ぬるく、次からの評定戦は「現実」が舞台であると教官は言う。現実と何ら変わらぬ――痛みすら存在する世界での戦闘を経験しろと。



「後期の評定戦――「防衛戦」は団体戦となる。舞台は半径2キロほどの市街地、1チーム8人を上限とするチームで拠点の防衛と攻撃を行ってもらう。防御、攻撃の成功と撃破についてチームごとにポイントが与えられ、その合計ポイントで順位がつけられる」



 教官がそう言うと、モニターに攻撃、防衛の成功の条件とポイントが示された。



防衛:マップ内の指定された拠点の一室を防衛する。評定戦の終了までに他チームの攻撃が一度も成功しなければ、防衛が成功しポイントが付与される。ただし、防衛する建物、部屋の位置は全チームに公開される。


攻撃:他チームが防衛する拠点を攻撃する。防衛される一室の中に自チームの少なくとも一人が15秒連続で入ることができれば、攻撃が成功しポイントが付与される。ただし、攻撃の成功から30秒以内に攻撃を成功させたメンバーが撃破された場合、攻撃は失敗とみなされポイントは得られない。また、すでに他チームがそこに対する攻撃を成功させていた場合、攻撃が成功してもポイントは付与されない。


撃破:他チームのメンバーを戦闘不能にした場合、最後の攻撃を成功させたチームにポイントが付与される。



①防御の成功:10ポイントが付与される。

②攻撃の成功:攻撃の成功毎に16ポイントを攻撃人数で割ったポイントが付与される。

③撃破の成功:撃破の成功毎に1ポイントが付与される。



「見てもらえればわかる通り、攻撃と防御をどちらも成功させることが最も効率の良いポイントの稼ぎ方となる。また、攻撃の人数が多くなるとポイントが減ることを考えると、基本的に攻撃4人、防御4人の構成が好ましいだろう。ただし人数の振り分けも戦略の内であるから、良く考えるように」



 例えば4人で防御する拠点を4人で攻撃する場合、攻撃が成功した場合には撃破3~4も入るだろうから、得られるポイントは8ポイントないぐらいである。防御の成功では10ポイント入るために、防御成功の際に入る撃破ポイントもわずかにあることを考えると、攻撃のみに専念するのは良い選択肢とは言えないだろう。

 対して攻撃を捨てて全員で防御を試みる場合、防御成功の10ポイントとわずかな撃破ポイントが手に入るのみである。戦略としては無くはないが、上位を目指すことはできない。



「使用可能な装備であるが、まず全員に特殊軍の陸戦用標準装備が配布される。武器に関してはサバイバルナイフと拳銃が全員に配布されるが、希望者のみ汎用ライフル、またはスナイパーライフルが配布される。また、能力を補助する目的などで、一定以上の破壊力を持たない武器も持ち込みが可能である」



 モニターに表示されたのは、配布される装備の一覧。

 超人の動きにも耐えうる戦闘服に、基本的なシステムが搭載されたMRスカウタターなどの基本装備。能力に殺傷能力がない者などは銃器や持ち込みの武器などを使用できるが、基本的には能力を主に使った戦闘になるだろう。



「試合中はそれぞれ一定間隔でスキャンが行われる。想定としては航空機、あるいは衛星による可視帯域のスキャンである。屋外にいる者の位置が表示されるが、個人の特定はされない」



 これは戦闘の活発化を狙うためのもの。これにより攻撃チームと防御チームの戦闘だけではなく、攻撃チーム同士の戦闘も活発となり撃破ポイントを狙う戦い方も可能となる。



「では次に、防衛戦の意義を説明する」



 モニターが切り替わり、説明が始まった。



――――


ルールとかは適当に作ったので、別に覚えないと分からないとかはないです。

べ、別によう実みたいなことやりたかったわけじゃないんだからねっ!

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