第10話「お洒落とは程遠い大学生活」

 昨日、せっかくのチャンスを逃して悶々としながらもなんとか寝ることに成功して、きちんと8時に起きた。それからは一限の必修に出て、今日は麗奈との梅田散策である。


 大学前の駅は混むから駅から近い麗奈の家の前に集合して行く予定になっている。俺は一度家に戻ってからテキストを置いたり、お茶を入れなおしたりして麗奈の家に向かった。


 到着すると既に麗奈は準備完了していて、臨戦態勢に入っている。


「マジで今日は戦うのな」


「そりゃそうよ。この日のために可愛い雑貨屋さんでアルバイトをしてきたんだよ」


「やっぱりか」


「お宝探しにレッツゴー! 今日は何を買えるかが本当に楽しみだよ。あー想像しただけで……やばいよ」


「そういや麗奈はずっと梅田、梅田って言ってるけど、今日行くのは日本橋だろ?」


「そうだけど。でも梅田も日本橋もあんまり変わらないじゃん?だから梅田って言ったほうがなんか大学生って感じがしない?実際、帰りは梅田でご飯食べて帰る予定なんだし」


「まぁそうなんだけどさ……」


「ならいいじゃん」


「そういうものなのかね」


 少し納得いかないものの、こんなところで言い合うつもりは毛頭ない。確かに田舎出身の者として、難波と梅田の違いがよくわからないから、その気持ちも分からないでもないのだ。ただ麗奈の素性を知らないものからすれば、デートに聞こえるのだ。しかもそれなりに麗奈は容姿は整っている。おそらく昨日、由美佳に言われたのもこれが原因だろう。


 確かに高校時代からの友達で心強い存在ではあるけど、それと恋愛事情はまた別である。


「そういえば昨日、新しくインスタのフォロー来たんだけど、彼女は知り合い?」


 そう言ってスマホの画面を見せてきた。まだフォロー許可は下ろしていなかった。


「あー、俺の幼馴染だわ」


「もしかして入学式に会ったっていう?」


「そうそう。それにしてもなんで麗奈のことをフォローしたんだろうな」


「和彦の仲の良い女の子ってどんな子なんだろうーって気になったんじゃない?」


「それでフォローするものか?」


「女の子なら好きな男子がどういう交友関係を持っているか気になるんだよ。和彦~、この子泣かすんじゃないよ」


「おいおい、そこまでバレてるんかよ」


「だって、そりゃ和彦すぐに表情に出るんだもん。分かりやすいってこの上ない。最近、和彦ちょくちょくその子のこと話題にしてるし」


「おー、マジかーーーーー」


「いやー、ホント、和彦ってすぐに顔に出るから一緒にいて面白いよ」


 麗奈はけらけらと笑い、俺は顔を抱えて悶絶していた。


「んで、今日はどれくらい買うつもりなんだ?」


「カバンいっぱいは行かないと思うよ」

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