『これ』は仕方がないことだ。

「……うーん…どうしよう……」

とパステルブルーのミディアムの男性が真剣にファミレスのメニュー表を見る。濃厚の卵を使ったオムライスに少しピリ辛なカレーライスにサクサクのポテトフライ。どれも美味しそうに見つめている。

「オムライスもいいけど、カレーライスもいいな……あ、ポテトフライも外せない……。うーん、どうしよう……」

とさらに真剣に見つめる男性。そんな男性を怪しく感じ、凝視する女性店員がいた。

名は朱鳥あすか。去年の夏からここで働いている大学生である。

「なんか……怪しい」

__まるで、がいるかのよう…

男性を怪訝の目でジィーっと見つめる朱鳥。すると

「おい、朱鳥」

「ひぃ!」

と威圧的な声に振り向くと嫌そうな顔をしたツリ目の女性店員がいた。その人は朱鳥の先輩。最近自身がやったDVが原因で彼氏に別れられ、やたら朱鳥を八つ当たりをするのだ。さらに

「うっわ、朱鳥じゃん」

「お前、また男に色目かけてるの?」

と女性店員の取り巻きがツリ目の女性店員が朱鳥に威張っているところを現れた。

「あれ、今度はあの青髪の男を口説く予定なの?」

「うわ、結構イケメンじゃん(笑)」

「お前、男を切り替えるなんてすごいなぁ(笑)」

「……っ、んなわけないじゃないですか!」

と中々威圧的な煽りにさすがの朱鳥でも反論をした。さらに追い打ちをかけるように朱鳥は正論で言った。

「そうやって煽っているから、あんたらは彼氏とか別れたり、出来ないんですよ!大体、あんたが弱そうな彼氏を殴んなきゃ、こんなことに…」

「ああぁ!!?」

「ひぃ!」

と口が滑ったことで、煽りだと思った女性店員がダンッ!それからは朱鳥は何も反論はしなかった。また、グチグチ言うのかと思っていた。その時

「こら、そこ!」

「「!!」」

女性店員共が揃って横を見ると店長が呆れた感じとイラッとしたかのようにこっちを見てきたのだった。そして店長はイライラしながらも

「いつまでそこでグチグチ言ってんだ!さっさと仕事をしろ!」

と言った。朱鳥と女性店員がさっと仕事にしようと職場に戻ろうとしたものの店長は朱鳥を見てたら

「って、あんたはもう終わり時間だろが!」

「……っあ、忘れてた」

「忘れるな忘れるな」

と朱鳥はもう終わる時間だと気づき、すぐに

帰りの準備をした。そして、

「そ、それでは」

「おう」

と朱鳥は帰ろうとした足を一旦止めてもう一度、店長に顔を向けた。

「あ、あの店長……」

「ん?なんだい?」

「………いえ何でも」

「そう。帰り道には気をつけろよ」

と「警告して」とはそんなことは言わずに朱鳥は店長に別れを告げ、咄嗟に逃げるように店を出た。申し訳なくに。







「………はっ!逃げられた…?いや、勤務じゃないから帰っていった?……ぶー」

と先程までボヤけてたミディアムの男性はまるでかのような言い方をして、辺りを見回した。そして、拗ねるように頬を膨らませて、その頬を持っているメニュー表で隠す。

「あとちょいなのに……」

「ゴーシュ」

「ん?……あ、かがり!」

「やぁ」

勝と呼ばれたブラウンの髪で群青色のトレンチコートを着た男性はゴーシュと呼んだ男に向かいの席に座った。すると店員に向かって手を挙げて

「はい」

「コーヒーを一つ」

「かしこまりました」

といつものように頼むと

「ほんとにコーヒーを頼むね〜」

「好きなんだよ。それが何が悪いんだ」

「いや〜、たまにはカフェオレとかエプソ…チッソ?みたいなのを頼めば?」

「だが、僕はコーヒーは外せないよ」

「お待たせいたしました。こちら、コーヒーです」

「どうも」

ゴーシュが素っ気ない顔で「ふーん……」としているうちに勝はコーヒーを啜る。

「うん、おいしい。よく出来てるね」

「えーと…『当店オリジナルのブランド豆でできたオリジナルコーヒー』だって」

「へぇ…豆まで作ってるのか……。それは興味深いな………」

「………んなことよりもぉっと!」

と勝は視線をコーヒーを取ったゴーシュに向ける。ゴーシュはニヤけた顔でコーヒーを自分の傍に置いといた。

って奴は終わったの?」

「……。もうその話かい?」

「あったり前でしょ!」

勝は「はぁ……」とため息をついた。すると肩の力を抜いてゴーシュの言ってたを話した。

「うーん、順調って言った方が少し微妙だが中々の進み具合だよ」

「ふーん……」

「だが、それは第二段階に過ぎないのさ」

「………それってどういう事さ」

とゴーシュにとっくに頼んどいたメロンソーダのストローに息を吹きかけていた。

「つまりで例えれば、まだまだって所だよ」

「だったらそれを最初に言えよ……」

すると

「お客様〜」

「「ん?」」

勝とゴーシュの間に派手なメイクをした女性店員が注文書を持ちながら、ここにいた。

「もし良かったらー、」

「うっわ、派手…」

「こら、人の前だぞ。すいません、私達は呼んでもいないんですが…」

「いや〜、そんな感じにはしていて…」

「こら、君!」

するとそこに店長らしき者も現れた。

「また、強引に誘おうとして……!ほら、さっさと仕事場に戻るんだ!!」

「え〜、いいじゃないですか〜。どうせ、あいつもこうやって誘っているから〜」

「やる訳ねーだろ!バカ!とにかく仕事に戻れ!」

「あいつ?」

「!そうなんですよ〜」

勝が話に乗っかった途端に女性店員は調子に乗ってその話をしようとした。困っている周りの人達の目を気配らずに

「……」

「その女は朱鳥という言う地味女でね、媚びって私の彼氏を奪ったんですよ。地味で可愛い女を演じて、店長や他の男子店員を誘惑していたのですよ。そして今ね、そこの水色髪の人を媚びろうとしてたんですよ」

とゴーシュを指さして見下すかのように言った。

「イケメンや不細工なこいつにも魅了しようと企んできたのですよ。どうです?ま、こいつが不細工すぎて朱鳥が帰ってちまったけどね」

まるで客として見ていないかのような言い方だ。だが、ゴーシュはが、顔を下げて考えてた。

「そっか………さっき帰った子って朱鳥って言うんだ…。……これは都合が良すぎたって言うべきなのかな」

そんな考えているゴーシュを見つめる勝。両者とも無言なままだが、周りも迷惑な顔で見ているのだから無言になるのは当然だ。

「……」

「ねぇ、どうですか?連絡先交換しません?」

「はぁ……そうですね」

と勝は立ち上がり、ポケットからスマホを取り出した。

「あとで、裏口に来てください」

と言い出した。

「え」

「ええ!?」

これには一同も驚き、ゴーシュも

「ヒュー…」と何故か少し微笑んでいた。会計表をとり

「行こうか、ゴーシュ」

「うん」

とレジの方へと行った。そんなとこも考えずに女性店員はただ単に棒立ちをしていた。けど、ゴーシュを面白くは無いのか拗ねて

「別にその場でやってもいいのに……」

「それじゃ、他の迷惑にもなってしまうだろ。こういうのが効率的だからな」

「ふぅん……」

と会計を済まし、店を出ていった。店から出た様子を店長は「はぁ……」とため息をついた。やけに興奮している女性店員を見るなり

「おい、あんた」

「は?あんたって酷くない」

「それは悪いがあんた、図に乗んない方がいいぞ」

「?」

「あれは、完全に怒っている奴だ。俺には分かる」

「え…んなわけ」

「そうか、それが分かんないならとっとと仕事に戻れ」

と店長は呆れた態度でキッチンに戻った。

「なによ……ありがたいと思うじゃない」

分かっていない女性店員は何事も無かったかのように仕事場に戻った。そして、店長はため息をつきながら小言を吐いた。

「これは……とんでもない奴に目をつけられてるのにな……」

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