当たり前こそが『彼女』の日常である。_放課後(2)

「うぅ……まだ腹が痛い」

「大丈夫?ホンマに…」

「やはり、あのカレー激マズはやばかった」

「ガチでご愁傷さまです」

と受李のカバンを持ってくれている初音が言う。これは巨人に襲われる寸前の数分前の事である。病院に連れていかれた受李はなんとか意識を取り戻して立ち上がることが出来た受李は医者から

「これからは腐ったものあの飯マズを食べてはいけないよ〜」

と長年あの飯マズを食べてしまった生徒達が、ここに送られまくったせいか同情されてしまって、万が一のための予防薬を貰った。

「けどさ〜受李。ここまで通常通りの感じに戻るのって受李が1番早いって…」

「へー、そうなん」

と受李は興味無さげにスカートのポケットからスマホを取り出してパズルゲームをしようとした。その時

「………!」

「うわっ。受李、どしたん?」

「……なんか、聞こえねーか?」

「え?」

なんといきなり受李は周りをすぐに見渡したのだった。初音は驚き、目を閉じてよく聞こえると

……シン…ドシン……!

「聞こえる!巨人の足音だ!」

「どこだ」

「こっちや!」

と受李と初音は急いでその足音が聞こえた方に走って向かった。足音が聞こえる暗い細道を見つけては走った。すると

「あ、受李!あれ!」

「!!」

その細道の少し外れに大型の人のような姿が見受けられた。そして、受李は冷静になり

「多分あれ、獲物を取ろうとしている奴だ。初音はその獲物を救出してこい」

「うん、分かった!じゃあ受李は…」

「察せ」

「りょ」

と初音は敬礼のポーズを取り、先に向かった。それを見た受李は少し肩の力を抜くかのように、猫背になった。すると

「……ふぅぅ……」

受李の口から白い吐息が出てきた。

ブォン……ヒュウぅぅぅぅ……

受李の両手から薄い黒色の膜が出てきた。何も感じない無気力の目は、背筋が凍るような目に変わり、その視線をあの巨人に向ける。

一、二、三歩ぐらい歩き、そして巨人からほんの少しだけ遠い距離で高く飛んだ。すると

「ぐぉぉ!!」

巨人の背中に向けて蹴って、それが見事に命中し巨人はドシン!大きな音を立てて倒れた。

「そりゃっと!」

「きゃあ」

と巨人が倒れる前に初音はすぐに獲物を助け、別のところに移した。

「痛い!痛い!」

巨人が痛めた背中を優しく抑えている様子を受李は見ていると

「……っと、大丈夫…ってええ!?」

「?どうかしたか?たっく、何事かと思えば食われる寸前なんてねぇ……」

なんて愚痴を言う受李は驚いている初音の方に向かうとその獲物はなんと猫乃だった。今まで猫乃が受李に酷いことをしている(だが、その酷いことはどれも失敗に終わっている)ことは初音は知っているが、その対象者である受李は知らーんのような顔していた。猫乃は受李を見るなり

「……え?」

とポカンとしていた。

「あんた、大丈夫?」

受李はそう猫乃に答えた。それに対して猫乃は

「なんで……あんたが…」

とまるで隣にいる初音に気づかないかのように受李を唖然として見ていた。

「なんでって……人を助けて何が悪いんだよ…」

「え…でも」

「あれ?二人とも女の子じゃん〜」

受李と初音、そして猫乃は巨人の方を振り向くと巨人は何故か嬉しそうに頬を染めていた。

「しかも、まぁまぁだけど、可愛い方だなぁ、それにみんなこの子と同じ制服を着ている〜。いいな〜。可愛いな〜」

「ふぅん……」

受李が猫乃の方を見てみると猫乃は腰が抜けたのかズルリ…ズルリ…と後退りをした。そしてもう一度巨人を見た。巨人は目はなく鼻もなかった。多分感覚で色んなことを認識をしたのだろう。巨人が一歩を歩いたところで「おい」

「え…」

「ん?」

受李が巨人の前に立ちはだかった。すると猫乃が飛び出してきた。

「ちょっとなんで助けるのよ!?」

「え?なんでって……ぐぁ!」

何かを言うおうとした受李を猫乃が受李の胸ぐらを掴んだ。するとまるで憎むような顔でこう言った。

「私なんか……私なんか、助けなくてもいいのに!!」

「………は?」

「ちょちょちょい…!」

と初音が猫乃と受李の間に割って入る。

「何やってんの?あんた。今から受李が倒そうとしているのに…」

「……っ!邪魔しないでよ!」

「だぁ!」

猫乃が止めようとした初音の手を思いっきり放したら、初音が尻もちをした。それを見た受李は

「初音、ここは任せとけ。あんたは巨人こいつの世話を頼む」

「は!?んな相手、放っても……」

「任せろ、任せろ。早めにな」

「ええ!?」

受李の予想外な言葉に初音は目を見開いて驚いた。すると

「えぇ〜、お姉ちゃんが遊んでくれるの?」

「はっ!」

いつの間にか巨人が初音の方に向けていた。こちらは遊ぶ気満々だ。……あー、もう!としばらく黙っていた初音は綺麗にポニテにしといた頭をくしゃくしゃにした。そして吹っ切れた顔で

「おい、巨人野郎!こっちにかかってこいや!」

とブレザーの胸ポケットから火薬玉を四、五個程度の投げた。火薬玉はコロコロ…とビー玉のように早く転がって巨人の方に来た途端にパン!パン!パパン!と爆発した。

「きゃぁぁぁ!!!」

巨人は火薬玉が散った火花に驚き、目を覆い火花を防ごうとしていた。そして初音は受李と猫乃からその光景を受李はずっと見ていたが対する猫乃はまるで周りを見ていないかのように

「ちょっと!聞いてるの!?」

怒り狂ったかのように叫びまくった。するとはぁ…とため息がついたところで猫乃はこう言った。

「あんた、なんで私を助けた訳!?それとも」

「んなもん、決まって…」

「そんなに自分のを上げに来たの?」

「……は?」

「あれ?私当たった?」

受李は今一瞬何ってた?の顔をしたところで猫乃はまるで嘲笑っているかのようにこう続けた。

「学校で先生たちに媚び売ってくれたら、庇ってくれるもんね。どんなに私達の悪口を聞かない理由はそうなんでしょ?先生たちにたくさん媚びまくったんでしょ…。だから、私はこんな目になってんのか……!ああ、最低な女だよねあんた!」

と猫乃は受李は突き放した。思ったより力が強く、転んで頬にかすり傷をおってしまった受李は少しやりすぎなのでは?の目を訴えた。

「……」

「はぁ?何、その目。キモくてウザイんだけど」

その同時に

ああ…なるほどね。

受李は猫乃の言っていることがなんなのかが分かった。猫乃の言っていることはつまり立場が上の人に蔑まれたのような事を言いまくっているような存在だ。要は「お前さえいなくなれ」「お前がいなければ私はこんな事にはならなかった」と言うような遠回りしているようなセリフである。受李は元からこういうのには慣れている。その理由は幼少期から散々そういう発言や暴力には慣れているからである。

「……はぁ」

まぁ……そんな風にあいつはそう思ったんだろうな……

そう思いながらも受李は頬についている血を手で拭き取り、「はぁ…」とまたため息をついた。

「何?あんたのおかげで無様になった私を見下す訳…」

「ねーわボケ」

「!!」

少し嘲笑った猫乃の顔が少し引きつった。すると受李はこう続けた。

「俺がいつ先生に媚っているって言ったんだよ。やらねぇわ、そんなもん」

「う、嘘よ……そんなのだって…」

「そんなのあったら証拠の写真があるのか?ねぇわ。それに」

と受李は一層に増して冷たい目をしながら猫乃に近づいた。猫乃はまたまた顔を引きつって遠ざかろうとしたが、近くの壁に背を付けられあっという間に受李が無言のまま顔まで近づいてきた。そして

ドンッ!

「っ!」

猫乃の顔近くで受李の手が壁につけて受李は少し怒りを混ぜた目で猫乃を見つめてた。あまりの恐怖が襲いかかったせいか猫乃がびくびくと震えていた。

「いいか、よーく聞け」

「……え」

「確かにおめぇの言う通り俺はそんな風に見えてるかもしれねぇけど、俺はそんなんじゃねぇわ」

「何を言って…」

「これは俺の癖だからやってんだよ」

「はぁ?ふざけるのもいい加減に……」

ドン!

「ひっ!」

受李が猫乃の股に当たるか当たらないかの辺りで足を蹴った。そして彼女らしくない怒鳴り声で

「俺のがそんな奴だからだよ!だから、俺はこうなってんだよ!分かったか!」

と受李は猫乃から一旦離れて、再び消えかけた黒色の膜を出す。受李から離れた途端に猫乃はペタンと体に力が入らないかのように座っていた。

「それと」

「…なによ」

「………なんでもないわ、やっぱめんどい」

「え、なんて…」

なんて言った?と猫乃がその事を言うまもなく受李はすぐにダッシュした。

「ゲホッ…ゲホ…」

その砂埃を吸ってしまった猫乃は咳払いをしたその時に猫乃は目を見開いた。

嘘…嘘でしょ?

あの受李があんなスピードを出すわけが無いことは猫乃や他のみんなは知っていた。いつもなら五十メートルを十一秒越すか越さないような走っていたのだった。

けど、あれじゃあ…完全に世界記録超えれるのでは?

と思わるような走り方である。

すると

「うわぁぁぁぁぁ!めっちゃやばかった〜!」

と片腕を折られたため、それを支えている初音がやってきた。

「あ……、じゃなくて、どうしたの!?その傷」

といつの間にかいるの!?のようなことは忘れて猫乃はボロボロになっている初音に近づいた。

「あー……大丈夫。うちにとっては当たり前だから」

「でも、ひどいじゃない!」

「そうだよなぁ〜……。すまん、寝そべる」

「ええ!?」

とバタンと仰向けに倒れる初音。猫乃は仰向けになった初音に寄るも初音は疲れたかのようにため息をついてくる。

「それにしても、やっばいわぁ。あれ、絶対に成人済みだよ」

「成人済み?どういうこと?」

「あー…なんて言えばいいんだろう。世はね、幼いような格好しているような成人でつまりに言えば、幼女詐欺だ」

「ええ……」

それを聞いた猫乃はまじかよ……のような顔で引いていた。すると猫乃はに気づいた。

「ねぇ……聞いてもいい?」

「どした?」

「初音さんってさ……まさか?」

「ああ………そうだよ。ついでに受李もな」

「やっぱり…」

そう、猫乃は薄々気づいたのだった。彼女らは魔族ということを。

魔族とは魔法を持った公家族のこと。歴代に伝わる能力を引き継いでおり、どれも一般の異世界人に匹敵するほどの力を持っている。

「だったら何で隠してるのよ?それだった私よりも目立ってたじゃん」

「悪いがそういう目立ちは興味無いんだよ。うちも、受李も。特に受李は目立ちはかもな」

「……え?」

「あいつ、小学の元からあんな正確なんだよ。暇の時はこっそりゲームで、テストの時は余裕で寝まくる。結構、暇人なんだよ。テストの点、めちゃくちゃいいし。だけど、お遊戯会なのはあんまり目立ちたくなて裏方の仕事しかやらないから」

「…まさか……」

「そう、理由はゲームの時間がめっちゃ取れるからだと」

「うわぁ……」

猫乃もなんとなく受李の目立ちたくない理由が分かっていた。すると初音は咄嗟もないことをこう言った。

「けど、助ける時は目立つんだよ」

「……え?」

あまりに自然な流れであったため、猫乃はキョトンとした。助ける時は目立つ……?どういうことだ?

「どういうことって思っているだろ?うちは話を聞いたら納得はしたんだけど……」

「……あ」

猫乃はさっきの受李のやり取りである言葉を思いだした。

__俺の相方がそんな奴だからだよ!

「相方……」

「そう!その人ね、女の人でね。受李の相棒でめっちゃ偉い人だけど、すごく強いよ。それに受李も強くて二人とも揃って助けたがる精神持ってんだよね」

「え、でもさ……あの巨人は……」

猫乃はあの巨人のことを思いだす。あんな初音でも倒せない巨人だ。あの受李でも倒せるはずがない。すると初音は

「分かるよ。けど、どう見えるのかな?きっと倒せるって」

「……え?」

と言っている初音の顔はまるで友人を信じるような顔であった。それがどうしたの?かな猫乃はわかる訳でもないのだ。

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