3

 マックドアには愛している人間がいた。

 その相手は〈ペニス持ち〉だったので、性交は出来なかったが、代わりに口淫と手淫はやった。激しくやった。肛門は使わなかった。

 その日もふたりはお互いにペニスを触り合っていた。それが二人にとっての、愛の営為であった。

 彼女は射精してしまうと、甘たるい表情でマックドアの顔を眺めた。

「あなたの指って細いわねェ」と、彼女はいった。「わたしの尿道に入るんじゃない」

 彼女は自分のペニスの包皮を剥き、尿道を開いて見せた。

 マックドアは自分の指が彼女の尿道を突き刺す光景を想像した。そして、身を震わせた。ぶるっ、という音さえ聞こえた。

「入らないな、流石に」と、マックドアはいった。

「入ったら素敵だと思わない?」

 彼女はマックドアの目を見つめて言った。

「素敵かもしれないな。でも、入らない」

 そう言うと、彼女は大きく肩を落とした。マックドアは少しばかり申し訳なく思った。

 その様子を見て、彼女が叫んだ。

「あら、あなたのせいではないわ! わたしが変なことを望むからいけないのよ、ええ、そうよ、そうに違いないわ!」

 彼女の喋り方は、何千年も前に書かれたロシア文学に出てくる貧しくも美しい娼婦のようであった。マックドアは少し驚いた。

「きみってえらく文学に造詣が深いんだなあ」

 感心してマックドアは言った。彼も本は読んだが、彼女ほどではなかった。

「うん、わたし本ってだぁーいすきよ」

 彼女は大きく手を広げて、空気を抱きしめた。

 マックドアはそれを優しい目で見守っていた。

「ねえ」と、彼女はいった。「あなた、わたしから言葉を取ったりしないでね。そんなことしたら、本が読めなくなるもの。いい?」

「ああ」と、マックドアはいった。

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